7.《ネタバレ》 それほど悪くはないが、それほど良いとも思えない作品。
悪くはない点としては、鋭いユーモアとエッジの効いたガイ・リッチー独特のセンスは光っている。
ハリウッドコメディ作品を観ているときよりも笑っている時間が多かったような気がする。
ベタな部分でもあるが、「オマエ、俺とやりたいのか」という意表を付いたゲイネタの使い方などが悪くなかった。
このネタを途中でつまらないネタ晴らしをせずに、ラストまで引っ張ってもよかったのではないか。
それほど評価できない点としては、やはりゴチャゴチャし過ぎている。
ストーリーはほぼ100%理解でき、登場人物もほぼ100%把握できるにも関わらず、整理されておらず雑然としている。
そういう雑然さがいい効果を生み、評価される場合もあるが、本作はそういう効果を生まなかった。
ゴチャゴチャしているために、肝心の主題ともいえるものが見えてこず、観ていて途中で飽きてしまうところもあった。
「あぁ、なるほど“ロックンローラ”とはこういうことだな!」というぶっ飛んだ生き様が感じられない。
ボスの忠実な腹心、女に動かされて強盗をする奴、ただのジャンキーが“ロックンローラ”というわけではあるまい。
こいつら全員ヤバイな、イッチャッているなというものがなく、ある種ぬるま湯のような生き様しか描かれていないのは残念だ。
全員が主役というような位置付けのようであり、ユニークなキャラクター像はそれぞれ描かれているものの、個々のキャラクターが逆に弱まったような印象も受ける。
存在感を発揮しなければならないボスの腹心やボスの義理の息子があまりにも存在感が弱すぎるのではないか。
彼らが活躍してくれなければ、本作が躍動しない。
また、“絵画の行方”“裏切り者は誰か”という根幹に関わるネタも上手くストーリーに溶け込んで活かされているとは思えず、ストーリー展開の上手さが感じられない。
“裏切り者は誰か”というネタを活かしたいのならば、もっと伏線を張っておいた方がよかっただろう。
“絵画の行方”もいい意味での裏切りやドタバタが少なく、サプライズ感が生まれなかった。
会計士への求婚もラストのオチを付けるために、取ってつけたような仕上がりとなっている。
全体的にスムーズで精錬された流れを構築できずに、行き当たりばったりに進んでいったような印象を拭えない点がマイナス評価となってしまった。