4.全編通して、台詞の大幅な排除によって達成された寡黙の美質。
異邦人の孤立を際立たせる山岳地帯の望遠ショットの見事さ。
少々単調気味のクロースアップも、呆気ないまでに短い撃ち合いも、「娼婦と流れ者」のモチーフも、中盤に登場するセルジオ・レオーネ『ウエスタン』の引用が納得させる。
中世の趣を残す村の急峻なロケーションが絶景であり、山の斜面が作り出す地形的特色は狙撃のドラマにも巧く活かされている。
そして雨に濡れた夜の石畳が街灯の光を鈍く反射させる画は、紛れも無くハリウッド・ノワールの証だ。
暗い屋内で、サイレンサーを「職人の手」捌きで作り上げていくストイックな身振り。
銃器受け渡しスポットとなる食堂の疎らな客。抑制された静のムードが緊張感を呼び込んでいる。
草むらの中でジョージ・クルーニーとテクラ・ルーテンが距離を置いて交互にライフルの試射を行うシーンに『ジャッカルの日』の誤差修正シーンの緊張感が甦る。
娼婦を演じるヴィオランテ・ブラシドが醸す純朴と妖艶の入り混じったムードも出色だ。