1.《ネタバレ》 なんでも、これがハリウッドで初めて製作されたハイジャック映画なんだそうです。『大空港』は?という声もあがるでしょうけど、まああれはパニック映画のジャンルでしょう。監督はジョン・ギラーミンで主演がチャールトン・ヘストンとくれば如何にも当時はやっていた超大作路線かと期待されるでしょうが、これが作品規模といい映画自体の出来といい、実にショボい底抜け超大作でした。 冒頭の画面に映らない誰かが口紅を空港売店で買うところやその口紅で旅客機のトイレの鏡に「爆弾を持っている、行き先をアンカレッジに変更しろ」と書かれているのが発見される、これが前半のサスペンスの肝のはずですが下手くそな演出のせいで全然盛り上がらない。乗務員たちは「口紅を使っているぐらいだから、犯人は女性かな?」と至極まっとうな推測をするのですが、稚拙な脚本のせいでジェームズ・ブローリンが演じる軍人が犯人だということがバレバレなんです。この犯人がはっきり言って狂人で、後半ではアンソニー・パーキンスが演じているようなキチ〇イぶりで、若き日のジェームズ・ブローリン、なかなか良い仕事をしてます。ごたごたがあって結局アンカレッジからブローリンの亡命のためにモスクワに飛ぶことになってしまいますが、ここら辺からおかしな展開になってしまいます。まあキチ〇イのすることだから、という言い訳はできるでしょうけど、この軍人は警察に追われているわけでもないので亡命したけりゃソ連大使館に駆け込むかそれこそ航空チケット買ってモスクワに行けば事が済むわけです。冷戦中とはいえソ連と米国は普通に国交があるわけですから、日本のよど号乗っ取り事件と全然違いますね。あと登場キャラの描きこみがほとんどないので、それぞれのエピソードが恐ろしく薄っぺらで印象に残りません。とても劇場映画とは思えない、平凡なTVムーヴィーという出来でした。 でもとり得がないわけではなく、本物のB707旅客機を架空のエアライン塗装で飛行させて撮影しているところです。そしてソ連領空でソ連戦闘機が迎撃してくるシーンも、4機の戦闘機がB707の至近距離を威嚇してブンブン飛び回るところを実写で見せてくれます。この戦闘機はおそらく米軍のF-100戦闘機だと思いますが、塗装やマーキングもうまくソ連機に似せていました。さすが『ブルー・マックス』を撮ったギラーミンだけあります。