120.《ネタバレ》 正直言って、初見では本作の良さがよく分からなかった。
この映画が言わんとしていることを上手く感じ取ることができずに混乱したが、そのような“難しさ”が本作の良さかもしれない。
戦争というものは、単純に割り切ることができず、不条理なものということか。
捕虜であっても、軍人としての“誇り”を失わずに規律に則って自己の職務を全うするということは感動的でもある。
捕虜であっても奴隷ではない、我々は規則を守る文明人である、人間として何かを成し遂げたい、という主張が大佐からなされており、その主張は立派であり、心を打った。
『敗北しても勝つことは出来る』というイギリス人の“誇り”が、日本軍の斎藤をも変えたと捉えることができる展開だ。
欧米風の騎士道と東洋風の武士道の“融和”のような感触も得られる。
綿密な計画を立てて能率的なイギリス人と、「お茶!」の伝言を繰り返す非効率の日本人、失敗したら切腹しようとする精神論的な日本人の対比も見事である。
しかし、最後の展開によって何もかもが崩壊してしまったような気がする。
誰と戦っているのか、何のために戦っているのか、そもそも戦いとは何か、戦争とは何か、その様なことが何もかも分からなくなるようなラストだった。
もし、大佐がイギリス軍の作戦の意図を感じ取り、自らが精魂込めて築いた橋を自らの意志で大義のために破壊したのならば、最高の軍人として理想化されるような映画的な展開になるのだが、そのような展開にしなかったことが本作の良さかもしれない。
本作は映画らしくなく、観客に“混乱”を巻き起こすラストではないか。
自らが築いた橋を壊そうとするイギリス人に反抗するイギリス人大佐の姿、誰もが死に何もかもが破壊された姿をみて、医師同様に「狂っている」とつぶやきたくなるようなラストだった。
確かに、戦争というものは、美しい友情が築かれるものでもなく、感動的な秘話や美談が語られるものでもなく、そういう狂ったものなのかもしれない。
自分にはそこまで深いものを感じ取ることができなかったが、この不条理感は心に残り続けるだろう。