5.《ネタバレ》 左幸子が回る、環境の同調圧力を振り払う独楽のようにブンブン回りながら、恋のターゲットに向かって一直線。野添ひとみも素晴らしい。きわめて動的で立体的な演出で、イマジナリーラインを絶えず踏み越えるゆえ、見交わしの都度人物の位置が左右反転する。人物が頻繁に横に動いてイマジナリーラインを跨いだり、カメラが人物の背後に回って逆サイドからも撮ったりで。もちろん人物位置の反転自体が良いのではなくて、輪郭のある人物どうしの格闘が、反転の度により深められ、映画語りの速度を上げることこそが。この『暖流』の秀逸な撮影者ということで村井博を知る、すると、彼にはあの宮川一夫を鋭く相対化する視点がある、ということに出会う(「インタビュー 村井博」『映画監督 増村保造の世界』所収)、興味津々! 【ひと3】さん [DVD(邦画)] 9点(2020-12-17 02:17:25) |
★4.《ネタバレ》 なんというか、ヘンな映画。みんな早口でしゃべって、ハイテンションなのに台詞が棒読み。左幸子はあっちこっちに動くというか、ほとんど踊っているし。どう見たらいいのかよくわからなかったのですが、途中から「これはコメディだ」と思うことにしました。船越英二の長男なんかは、最初からその線を狙っていますが。しかしそれ以外の人物も、病院の実権を握ろうとしたり、とにかく金と権力にとりつかれている。そのあたりをブラック・ユーモアで風刺した……つもりなのかもしれませんが、いかんせん面白くない。笑えないし、風刺になっているのかどうかも不明です。 後半は主要人物3人(笹島も加えれば4人)による恋のさや当てですが、恋愛といえば感情ほとばしるはずなのに、なにしろ台詞が棒読みですから、全然感情がこもらない。勝手に離れたりくっついたりしているという案配で、見ているこちらはどうでもよくなります。置いてけぼりですね。正直、監督はやる気があったのかなぁとさえ思えてきます。 ところで、題名が『暖流』というのが謎ですが、調べてみると暖流は「周囲の空気を暖め、自身は冷えていく」という性質があるようです。言われてみれば、病院の改革に乗り出した日匹には、そういうところがありますね。そう考えれば納得です。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2012-03-01 20:03:31) |
3.2012.01/24 鑑賞。セリフ回しの早いこと、登場人物が全員変わっており、普通の人がいない。極端な性格の登場人物ばかりで現実味に欠けるきらいもあり、言葉遣いに違和感、でもテンポ良く50年前とは思えない。若い丸山明宏が見れる。 【ご自由さん】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2012-01-24 23:39:09) |
2.《ネタバレ》 やたらとみんなが文字数多く喋りまくっているのが、この時期の邦画では珍しいと思ったのですが、元は舞台劇か何かでしょうか?病院内調査は比較的あっさりとすませ、むしろ人間関係のどろどろを中心に置いたのはよいと思いますが、個々の人格造型の突っ込みは今ひとつで、残念でした。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2012-01-15 02:40:52) |
1.ジメジメしてなくて、でもドライっていうパサパサしてる感じでもなく、どちらかというと個々の人物は脂ぎっている。しかしベトつかないのだ。とにかくクルクルと走り回る左幸子が圧巻で、駅へ根上淳を送りにサーッとまわり込んで駆け込んでくるところなど。愛はスレッカラシになることよ、なんてセリフ、戦前版にあったかな。石渡ぎんが水戸光子のひたすら純情なのとは違って、仲間内から見れば嫌な女に見えるのが納得できるように描かれているのが、1950年代のポイント。戦前と戦後の女性の変化が、こう見事に表われた例も珍しい。このたくましさを左幸子は60年代の『にっぽん昆虫記』や『飢餓海峡』で、さらに極めていくことになるわけだ。この監督は野添ひとみのちょっと気味悪いところをつかんでいて、手の手術を受けながら、パッチリ天井を見ているところなど。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2009-08-23 11:49:05) |