21.《ネタバレ》 普通ならクライマックスに発生するだろう「プロポーズの成功」が冒頭にて起こる為(これは、どんな話になるんだ?)と興味を引かれる構成になっているのが上手いですね。
パターンとしては「その後なんやかんやあって破局しそうになるが、何とか無事に結婚する」「幸せの絶頂にあった主人公だが、プロポーズした相手と別れる事になってしまう」という二通りの展開がある訳ですが、本作は後者の方。
ただ、肝心の「プロポーズを受諾したはずの女性が、断ってみせる理由」が弱いように思え、残念でしたね。
よりにもよって「仕事人間だから、自分のキャリアを捨てられない」って……身も蓋も無い言い草ですが(じゃあ最初からプロポーズ受けたりするなよ)とツッコみたくなります。
他の登場人物については「実は○○だった」という形で素敵なオチが付いていたものだから、この「プロポーズを断った女性」にも「種明かし的なオチ」が付くんじゃないかと思っていたのに、中盤以降は全く絡んで来ないというのも拍子抜けです。
ここに関しては、もうちょっと何とかして欲しかったところ。
と、そんな不満点もありますが、全体的には面白かったし、何よりも「バレンタインデーらしい、幸せな気分に浸れる」という、素敵な映画でしたね。
何気ないシーンの合間にも、恋人同士でキスする姿が描かれていたりして、なんとも微笑ましい。
上述の「実は○○だった」オチについても「幼い少年が恋心を抱いていた相手は、仲の良い同世代の女の子ではなく、ずっと年上の先生だった」「軍人の女性が会いに行く相手とは、離れ離れで暮らしている息子の事だった」という形になっており、凄く良かったと思います。
アメフトの選手が引退会見をするのかと思ったら「僕はゲイです」と記者達の前で告白し、それによって別れていた恋人と復縁する流れなんかも、綺麗に繋がっていたかと。
この辺りの「登場人物の運命が、少しずつ交差して繋がっていく快感」については、同監督作の「ニューイヤーズ・イブ」よりも優れていた気がしますね。
印象的な台詞も幾つかあって、それがロマンティックな代物だけじゃなく、コメディタッチな面白い台詞もあったりするんだから、嬉しい限り。
子犬を抱いたオバサンの「一分で着替えてくるから、私も交ぜて」って一言なんて、本気なのか冗談なのか、もう気になって仕方ないです。
「バレンタイン大嫌いディナー」に集まった女性陣が「結婚してやがった」「同じ男だった」などと恋人に対する怒りを呟きながら、憂さを晴らすべく騒いでみせる姿なんかも、凄く好き。
ロマンティックな台詞としては……色々あって迷うけど「その美女って、お婆ちゃんだったんだ?」「お婆ちゃんは今でも美女だ」という孫と祖父とのやり取りが、一番良かったと思いますね。
この孫というのが「年上の女教師に恋した少年」「久し振りに母親と再会出来た息子」と同一人物だったりする訳だから、数多くいる登場人物の中でも、特に印象深い。
可愛らしいルックスだし、言動も健気だし、花屋の男性との不思議な関係性も良かったしで、本作のMVPには、彼を推したいくらいです。
ラストの恋人同士のキスシーンにて「イマイチだった」という一言を漏らす女性には(おいおい、最後の最後でそれかよ)と落胆しかけたのですが、その後しっかり「だったら練習しなきゃ」とフォローが入る形になっており、再びキスしてハッピーエンドで終わってくれるのも、嬉しかったですね。
NG集における「プリティ・ウーマン」を連想させる発言は微妙に思えちゃいましたが、まぁ御愛嬌。
念願叶って、バレンタイン当日に観賞する事が出来たし、満足です。