23.還暦の誕生日に亡くなった小津は、人生の見取り図を眺めやすい。『出来ごころ』までが前半生の30年、『母を恋はずや』からが後半生で4作目からトーキーになる。赤ん坊時代も含めた前半生だけで傑作を次々と発表しており、それだけでも映画史にゴシックで名を残したことだろう。とりわけ本作。前半のギャグの連発には、ただただ恐れ入るしかない。それも客観的に外部にある笑いではなく、自分たちの子ども時代を思い出させつつ生まれてくる笑いだ。だから後半の苦みが「取ってつけたよう」にはなってない。前半の笑いの当然の帰結として、苦くなってくる。そこに子どもであることの苦さ、子どもを持つことの苦さが浮き上がっている。笑わせたあとでペーソスも加える、ではなく、笑いがそのままペーソスに移行している。これが20代の男によって作られたことに驚かされるが、その若さだから・そしてついに家庭を持たなかった監督だから、と考えたほうがいいかもしれない。こんな映画を撮ってしまう男が、家庭を持てるわけがない。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 10点(2013-01-12 09:50:07) |
★22.《ネタバレ》 次男の突貫小僧(なんちゅう芸名や)がまるでコメディアン。 「おなかをこわしてます。食べ物を与えないでください」って山田洋次がパクってたぞ。 小ネタ満載で小津作品で一番好きな作品。 【きーとん】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2010-07-20 21:25:51) |
21.小津のサイレント作品は大体観てきたが、本作は特別秀でているとは感じなかった。 本作が他の小津サイレント作品に比べ、高く評価されている意味が分からない。 というか、他の小津サイレント作品って、そもそも観ている人が少ないだけの気がする。 本作にこれだけの評価が集まるのであれば、もっと他の小津サイレント作品を観て欲しい。 そんな気持ちになってしまった。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 5点(2007-11-26 21:58:03) |
20.《ネタバレ》 タイトルから予想するちょっと悲惨な展開とは大違い。チャプリンを彷彿させるコメディの傑作でした。正義感強く賢そうなお兄ちゃんと、ちょっとトボけて可愛らしい弟のコンビが織りなす日常でのちょっとした出来事(彼らにとってみればちょっとではないのかもしれませんが)を温かく丁寧に描く前半だけでもかなり面白いのですが、尊敬する父親が実はあまり偉くなく友達の父親である上司にゴマ擦りするのにショックを受けるくだりは見事なストーリーの転回、そして最終的に子供は父親の気持ちを理解したうえでもやっぱりわが道をいくオチが好きでたまりません。日本にもこんな素晴らしい才能をもった映画人が居たということに驚き、誇りに思います。 【ponsuke】さん [地上波(邦画)] 9点(2007-02-24 09:51:33) |
19.《ネタバレ》 小津のトーキー作品はリズム感のある台詞が一つの魅力だが、台詞がないどころか音楽もない本作であってもカットやカメラワークや笑いがリズムを感じさせてくれる。子どもにとって父親は誰よりも偉いはずの存在。そんな父親が友達の父親に頭を下げている姿を見て偶像破壊によるショックを受ける子ども。自分の拙い人生を子どもに指摘され、さらには非難される父親。――父「お父さんだってこんな風になりたかったわけじゃないんだ・・・なりたかった訳じゃない。・・・しかしだな、しかししょうがないんだよ。人に頭下げながらでも働かなくちゃならんのだよ」―兄「やだぁい、やだぁい。そんなの分かんないやぁい。そんなのやめてしまえやぁい」―弟「やめちゃえやめちゃえ」―父「お前達の為でもあるん・・・」―弟「やめちゃえやめちゃえ」――そんな会話が脳内で繰り広げられる。最後には大人の世界を少しだけ理解する兄弟。些細な幸せを守り続ける父親。人生における最大の問いに向き合う親子をミニマムに映し出した、紛れもない傑作。 【stroheim】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2006-04-18 06:00:52) |
18.既に皆さん、書かれてますが本当に面白い。日本の映画でサイレント映画があったんだ!しかも音楽も一切無いのに面白い。サイレント映画の特色を見事に生かした小津監督の手腕はお見事としか言いようがありません。子供の眼から見た大人達に対する皮肉をたっぷりに描き、しかも徹底したリズミカルな動きと少ない字幕だけでこんなにも可笑しく見せてしまうその凄さ、さすがは小津監督です。参りました。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2005-08-15 20:14:06) |
17.日本映画のサイレントを生まれて初めて拝見しました。今まで僕が観て来たサイレント映画はチャップリンだけだったので、観る前は正直期待よりも不安の方が上回っていました。そして映画が始まった途端に僕は戸惑いました。その理由(わけ)は馬鹿らしいのですが、完全な無音無声だったからです。今まで観て来たチャップリンのサイレントにはとりあえず音楽がありました。音楽があるのとないのではこんなにも違うものなのか…と軽くショックをうけました。音楽の全くない部屋の中で、音の流れないテレビと一対一で無言で向き合うのは、何故か気まずさと恥ずかしさがありました。笑)こんな事は初めての経験だったので凄く戸惑いました。しかし、ストーリーが進むに連れて無音無声である事をすっかり忘れていました。そして気付けば画面に釘付けになり、のめり込んで観ている自分がいました。さらに、始めは字幕の出ないボディーランゲージのような演出にあんなに苦戦を強いていたのに、終盤ではしっかり理解できている自分自身にとても驚きました。そして鑑賞後はいつもの小津作品と何ら変わらない気持ちの良さに浸っております。振り返ってみると本当に凄い映画であり、素晴らしい事が身に染みてわかりました。やはり、この小津作品もサイレントだらかと言って、音のある小津作品に一歩も引けをとらない程完成度の高い、素晴らしい作品でした。 【ボビー】さん 9点(2005-02-16 21:16:37) (良:2票) |
16.《ネタバレ》 僕がまだまだ未熟だからなのかも知れませんが、やっぱり僕は戦後の小津作品より、このあたりの作品群の方が断然好きです。フィルム全体にみなぎるエネルギー。溢れんばかりの活力。これぞ活動屋の仕事というやつでしょうか。一体どうしたらこんなに無邪気で可愛く、そして活力のある描写ができるのでしょうか。素晴らしいです。子供同士が作り出す社会はそれはそれでちゃんと存在します。可愛らしくて、単純で、そして滑稽ではある。でも、そんな子供の目から見た大人の社会も、実に奇妙で、馬鹿馬鹿しく、そして子供以上に滑稽なもの。この見事な風刺。しかし、この風刺は恐ろしいまでに真理だと言えるのではないでしょうか。そして、そこには新しいとか、古いとかいう概念は存在しないのかも知れません。いつの時代でも変わらぬ、変えようのない真理。そうゆう意味では、本作が描いているのはあらゆる時代の「今」でしょう。そして、この映画にはそれを受け入れる包容力までもがしっかりと刻み込まれています。それが僕の一番のお気に入りのカット。つまり、二人の息子が情けない父親の姿を見て、「御飯なんかたべてやるもんか!」とささやかな抵抗を見せた後、庭でおにぎりをパクリとやるカット。親子三人同時にパクリとおにぎりを口に運ぶ。このたった一つのカットで、親は子を受け入れ、子は親を受け入れるのです。そして、人間社会の営みというものを受け入れるのです。「心」とは目に見えないもの。だからキャメラに写るわけはありません。でも、このカットにはしっかりと「心」が刻み込まれています。目には見えない「心」がキャメラに写る。映画とはそういうもの。何気ない日常という現実の中で、見逃してしまいそうな「心」をキャメラが写し取る。このカットこそが、いわゆる「小津調」というものではないでしょうか。間違いなく普遍的価値を有した傑作だと思います。 【スロウボート】さん 9点(2004-12-25 00:19:52) (良:2票) |
15.「お早よう」のように子供の物語ではあるが、子供の目線から大人社会を上手く風刺しており、コミカルなテンポもよく楽しめる。子供達にとって一番身近なヒーローは父であって欲しいもんです。子供達が電柱の並んだ道を向こうへ歩いていく絵がチャップリンしてました。 【亜流派 十五郎】さん 7点(2004-08-25 22:38:03) |
14.子供達の社会が大人の社会とそう変わらないように表現されているけれども、最後のシーンはそんな社会からでも非常に温かみを感た。 【マイアミバイス】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2004-05-09 12:33:22) |
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13.小津安二郎の映画は面白い、面白くないで判断するものではないとおもいます。そのなかにある深いメッセージについていかにキャッチできるか否かにかかってると思う。そういうわけだけどあえて面白い、面白くないかで判断すると、はっきり言って僕は退屈しました |
12.《ネタバレ》 兄弟の行動が結構エグい。彼等が学校に行かなかったり、習字で、先生から甲をもらったが如く偽造したのは、自己保身からだ。酒屋の小僧さんを買収して、いじめっ子に仕返しをしたり、活動写真見たさに、金持ちの子供に雀の卵を差し出したり(子供の間でやり取りされるあの卵は、お金の役割を果たしていた)、彼等なりの社会での地位の獲得に、実に敏感に、幼いながらもバランスを取ろうともがいている。そういった前フリから考えると、ラストの父親との和解は、あきらめや空腹から来るものではなく、気づきから来た(正確に言うと、始めから知っていた)んだと思う。自分たちの行動と、父親のそれとは、根本が同じであったことに。そしてどうやらそれは、生まれてきた以上、逃れられそうにないことに。 |
11.小津って本当にセンスいい。この作品ではバスター・キートンと並ぶくらいの小津の笑いのセンスが垣間見える。「おやつを与へないでください」なんて背中に貼らせてしまうあたり、脱帽。前半から中盤まではコメディタッチのほのぼのとしたテンポで進んでいく。それまでならこの作品は小津の笑いのセンスの良さを証明するくらいにしかならないが、後半話の焦点が中期小津お得意の「父-息子」に移るとさすが日本サイレント映画史上最高傑作と言われるだけのことはあって、僕の父親観を大きく変えまでした。斉藤達雄演じる父親が自分の父親とばっちり重なり、またこの子供達が父親に対して抱く蔑みにも似た感情を同じように少年期に抱いていた僕は、自分の家庭をそこに投影するしかなかった。父親の子供に対する愛と、社会に対する葛藤が切ないほどリアルに胸に響く。たまらなくてたまらなくて、ボロボロ泣いた。僕はそのときまで父親を嫌悪していたが、この作品を見たのを機に少し父親側の立場を理解して許せるようになった。自分の家庭を投影できるかできないかでこの作品に対する評価は大きく違ってくるだろう。いい時期に見たなと、我ながら思う。 【藤村】さん 10点(2004-02-12 21:07:36) (良:1票) |
10.移動ショットを縦横無尽に駆使するリズムの良さ、子供たちを構図の中にスタイリッシュにおさめ、ミュージカルのように、振り付けたごとく、彼らの動きを演出する。小津は大家の域に入ったようだ。一方、子供たちの動きは自由奔放で、いかにも即興風、まさに自然な姿を見せてくれる。それは、まるで新人監督が撮ったかのように瑞々しい。巨匠と新人が共存する魅力と不思議。この映画は、松竹子役オールスターズによる、もはやアクション映画だ。 【まぶぜたろう】さん 10点(2003-12-14 23:41:25) (良:2票) |
9.最初「おいおい古すぎだろ・・・・(汗)無声だし、とって”ゐ”た、とか書いてあるし」とひいていた。が、いつの間にやらぐいぐい引き込まれ「アハハハハ・・・・」と、楽しみました!いい物はいいって、使い古された慣用句だけど本当だねえ!お父ちゃん挨拶してきた方がいいよ、で父親を許した子どもたちにじ~ん(*^^*)しかしこんなの見てると、またしても「若いのに渋いねえ~」っていわれちゃうなあ。まあいいか。 【かなかなしぐれ】さん 9点(2003-12-06 08:22:13) |
8.家ではえらいと思っていたお父さんが、実は会社では上役にへいこらしているというのを知ってしまった子供たち。「なんだ、お父さんも偉くなればいいじゃないか」と子供は面白くない。子供の目が垣間見た大人の世界と、子供の世界をユーモアで描いて楽しい。この時代の子供がなかなかいいし興味深い。お父さんの斉藤達雄がフィルムの中でおかしなマイムや表情を見せるのがユーモラスでおもしろい。 【キリコ】さん 7点(2003-12-05 23:14:50) |
7.素晴らしい!1932年?ウソだろ?という感じ。子供達の活き々とした表情や仕草がほほえましくて愛おしくて、サイレントだという事を忘れそう。私の親さえまだ生まれてない時代の映画なのにこんなにも懐かしく、ノスタルジーを感じるのは何故だろう。傑作です。 【黒猫クロマティ】さん 10点(2003-12-04 13:06:08) |
【STYX21】さん 5点(2003-11-19 01:26:26) |
5.子供から見る大人社会が繊細な子供の視点でうまく表されている。こういった子供映画はマジ好きだな。すっげー古いのに観てて全然飽きない。 【たましろ】さん 9点(2003-10-13 20:26:59) |
4.「生きるべきか死ぬべきか」、「ニノチカ」等々、ソフィスティケイテッド・コメディーの映画作家エルンスト・ルヴィッチ監督を敬愛していた小津安二郎監督の本領は、初期のサイレント映画群にストレートに体現されていると思います。子ども(人間の本質)の眼から純粋にながめた大人(社会化された人間)の社会と小さな子どもの社会とを「大人の見る絵本」として、叙情的に描いています。情景描写も見事でノスタルジーに浸れる作品でもあります。小津作品、いや、日本映画が世界に誇れる大傑作でしょう。 【チャターBOX】さん [映画館(字幕)] 10点(2003-09-26 14:44:38) |