1.《ネタバレ》 神様、今日僕は人を殺しました。人として最も許されざる罪です。でも、僕はこうも思うのです。きっとこれは正しい行いだと――。舞台は西アフリカの何処とも知れぬとある小国。そこに暮らす年端もいかない少年アグーは、貧しいながらも心優しい両親や兄弟たちと充実した日々を過ごしていた。だが、そんな彼にも徐々に戦火の波が近づいてくる。数年前から始まった内戦により、国は真っ二つに分断されていたのだ。突然やって来た政府軍によって、スパイの疑いを掛けられた家族はアグーの目の前で銃殺されてしまうのだった。身寄りのない孤児となったアグーは、行く当てもなくただ森の中を彷徨い歩くことに。近いうちに彼も天国へと召されることになるだろう。そんな時、たまたま通りかかった反政府軍により、彼は〝幸運にも〟拾われることに。「お前の家族を殺した政府の人間に復讐する手伝いをしてやる」――。その日から、アグーは反政府ゲリラの少年兵として銃を手に戦場へと駆り出されるようになる。来る日も来る日も殺し合いの手伝いをさせられた彼は、やがて立派な兵士へと成長してゆく……。内戦に揺れるアフリカの貧しい国を舞台に、そこで過酷な運命に翻弄されるある少年兵の悲劇を描いた戦争ドラマ。一時期、静かなブームを呼んだ、いわゆるアフリカ内戦ものの一つですが、本作はその中でもトップクラスを誇る生々しいリアルさに満ちたものだと思います。まさに〝国家なき野獣ども〟のモラルや倫理など欠片もない残虐行為の数々。冒頭から、主人公の家族が彼の目の前でゴミのように殺されるシーンに始まり、その後少年兵となった彼が最初の殺人を強要されるまで、まさに目をそむけたくなるほど血腥い空気に満ちています。極めつけは、レイプされる村人の若い女の悲鳴が気にくわないからと急に主人公が射殺するシーン。レイプしている当事者や順番を待っている兵士が、彼に「まだ終わってないのに、何するんだ!」と悪態をつくところなんて本当に反吐が出そうになります。でも、それが戦場の現実。ゲリラの司令官に見いだされ、訓練を受けて成長し、やがて仲間と友情を育んでゆく主人公の姿は、日本に居る普通の子供と何ら変わらない。環境や周りの大人たちによってこれほどまでに人は変わってしまうものなのかと、改めて戦慄させられてしまいました。主人公を兵士として導く、ゲリラのカリスマ的司令官を演じたイドリス・エルバの鬼気迫る役作りにも圧倒されます。最後、主人公はこの司令官の洗脳を乗り越え、国連軍に保護されるのですが、それでもこの悲惨な過去を変えることなど出来ない。人間の愚かさと戦争の恐ろしさを改めて考えさせられる、非常に優れた戦争ドラマでありました。