★11.《ネタバレ》 悲報が周りの人間たちにまず伝えられ、本人への伝達シーンは割愛される、こういうのがまず巧い!主人公を思いやる共同体というものを形成してそれに観客を参入させるのである。次のショットは自宅二階の窓、そこから庭の孫を見守るPOV、このPOVはのちにもう一回、本当に美しい。急遽代役の、映画出演ということになって、堂々たる演劇俳優が、映画的に切り刻まれる。演劇とは徹底的に区別される映画の残酷という、ベンヤミンばりのアウラの崩壊の図だが、これは、行き着けの喫茶店での内側からの撮影とは全く性格の違う外側からの撮影(喫茶店のフレームの中に主人公)ということでもある。 【ひと3】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2016-01-25 16:38:23) |
10.《ネタバレ》 歪だ。芝居の本番中にバックステージでうろうろする男たちを映したり、会話の声が聞こえてこなかったり、リハーサル中の演技は一切見せずに監督の顔だけを映したり。本来ならうろたえる主人公の姿を映したっていい。アンゲロプロス流のスペースオフを使ったスリリングな演出は好きだ。何が起きているのか観客に想像させる監督も好き。俳優人生の終わりを物語るミスの連続、「もう帰る」と言い家路につく主人公が名優だということに気がつかない歩行者たち。そしてラストの孫の怯えた表情が監督の死・老いへの価値観を見事に表現していると思った。観ている時はあんまりピンとこなかったけど、後でシーンを思い出しながら考えてみるとすごくおもしろい映画だったなぁ、と。 【カニばさみ】さん [DVD(字幕)] 7点(2015-06-29 08:44:02) |
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8.《ネタバレ》 “老い”を描くというこの手のストーリーは、いろんな映画作家によって作られていて、哀愁漂うものもあれば、コメディタッチに描かれたものもあったりと、とにかく色々あるのですが、まぁ、この映画が楽しめたかといえば、自分の年齢的なこともあってか、少なくとも共感の念は湧いてこなかったと思います。 ただ、この映画が他と違うのが、老いをテーマにしている他に、日常の繰り返しを多様な人物のケースで描いているところでしょうか。 例えば、馴染みのカフェの決まった席で飲むコーヒーだったり、一日の始まりのいつもの挨拶や抱擁だったりといったささやかな幸せがこの映画の中に出てきています。 また、その些細な幸せを奪い取る事も同時に描かれていて、主人公の老人に突然仕事が舞い込んできて平穏な日常を奪い取ってしまい、さらに、その孫である少年からも毎朝の挨拶を奪い取り、終いには、普段からラジコンで一緒に遊んでくれたりして友達みたいな感覚でいた祖父を抜け殻のようにしてしまうという、ちょっと残酷なラストで幕を閉じます。 ・・・と、ここまで書いてみて、老いを描いた映画とばかり思っていましたが、意外と日常の繰り返しからくる幸せの有難みやそれを失った時の失望感を描いた作品だったりするのかも。 全くもって油断なりませんな~、このオリヴェイラという人は。 【もっつぁれら】さん [映画館(字幕)] 7点(2010-04-14 00:43:17) |
7.何度も何度も映される薄暗い家の中に眩いばかりの光が凝縮された窓。その美しさにいちいち感動していたら、あっというまに映画は終わる。印象的なエンディングをもって。子供の視線がおじいちゃんを見上げる視線からゆっくりとス-ッと下りてゆく。妻と娘を同時に亡くした老俳優の孤独が描かれる全編の中から、両親を同時に亡くした少年の孤独がブワッと浮き上がる瞬間。何度観てもこのエンディングにやられる。途中、退屈だったかもしれない。でもたまに観たくなるし、いつも観て良かったと思う。音楽の入るタイミングがまた絶妙。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-01-05 16:19:05) (良:1票) |
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6.若い頃見てもよく解らなかった映画だと思います。実年齢が主人公に近づきつつある今は、自分もこうなるのかなあと予想できる気持ちがあります。自分のリズムを崩したくないという頑固さと、いつまでも社会に認められたいと思う気持ちは、年を重ねるに従って強くなります。そんな気持ちを、優しく、ちょっと寂しく映像にした作品です。観終わった後、「はぁ・・・」と、ため息をしてしまいました。 【ソフィーの洗濯物】さん 8点(2004-03-16 17:53:14) (良:1票) |
5.この作品の中で一番好きな場面は、カフェの中でお気に入りの席をめぐる光景。店の外からの視線ってのが面白い。 それにしても、レンタルビデオ店のカトリーヌ・ドヌーブの棚にこの作品が置いてあるのはどうかと。ほんとに「出てる」だけなのに。 【こち】さん 5点(2004-03-15 22:13:09) |
4.会話している人を直接映さなかったりする、独特のカメラワークが印象的です。ストーリは難解な部分があり、祖父と孫のふれあいを描いた感動的なものを期待すると、がっかりすると思います。『老い』をひたすらリアルに描いた作品です。自分には難解で少しついていけませんでした。 【プミポン】さん 2点(2003-12-20 03:38:30) |
3.「映画は、解釈するものでも理解するものでもなく、感じ取るものだ」と私は信じている。現実を、ある距離を置きつつ、只じっと見据える。だが、決して非情なわけではない。むしろ、慈しみと少しばかりのユーモアも交えながら対象を見つめること。「主人公の孤独や悲しみとは、これこれこう言うものですよ」なんて、いちいち説明しなければいけないというのなら、映画なんてものは、何の存在価値もありゃしない。「映し画かれたものから観客に何を感じ取ってもらえるか?(あるいは、観客の側から言えば、何を感じ取れるのか?)」、この問い掛けを、90歳を超えても尚精力的に投げかけてくれるマノエル・ド・オリベイラ監督の存在に、私は大いなる憧憬を抱いている。ブラボー! 【なるせたろう】さん 10点(2003-11-21 12:20:37) (良:3票) |
2.《ネタバレ》 歳をとることの辛さを描いたものなんでしょう。バリバリに働いていた俳優が、自分の思っていた演技ができなくなったときの絶望感というのでしょうか、きっと深い味わいがある作品だとは思いますよ。もっと年輪を重ねて観ると、心に染みるのかもしれませんね。劇中劇が多く、カメラもほとんど動かないのが退屈でした。じっと辛抱しながら観ていたというか……。ラストも「えっ!? これで終わり??」って感じだったし。よくわからないまま、突然終わっていました。主人公が毎日通っている、とあるカフェ。主人公が帰った時間にやってきて、同じ座席に座るおじさん(LE FIGAROという新聞を読んでいる)がいるのですが、主人公がちょっとカフェに来る時間が遅れたことで、いつもの席に座れないおじさんの不服そうな様子がなんとも。主人公が去ったことで席を移ろうするのに、ちょっとのスキに他の人にその席をとられてしまう。そのおじさん、一日のリズムが狂っちゃったでしょうね。でも、毎日のルーチンから外れてちょっといいことが起こるかも。それから主人公が毎回同じところで同じようにトチるところ。実際は笑えないんだけれど、くすりと笑ってしまいました。そういう小ネタは面白かったんだけれど、やっぱり退屈だったかなぁ~。↑【なるせたろう】様、ええ、“感じるもの”という意見は大きく頷きます。ジム・ジャームッシュの作品なんかは、何がどうっていうわけでなく、なんとなく心地良いって感じですもの。この作品、しばらくしてから再見してみますね。 【元みかん】さん 4点(2003-11-21 10:11:12) |
1.なんとなく「いい映画なんだろうなあ」というのは分かるのですが・・・。ポスターやビデオの写真から、「おじいちゃんと子供の話なのかな?」と思っていたのに、ほとんど子供が出てこないし、ラストも意表を突かれたというか「え?」って感じだったので・・・ごめんなさい、マスター。5点<2005.2.13追記> ←以上は、確かBSでこの作品を鑑賞した時のレビュー。多分この時良く分からなかったのは、この作品がいわゆる「普通の映画」のようにストーリーの展開の面白さで見せる(魅せる)タイプの作品ではなく、【なるせたろう】さんの仰る通り「対象をじっと見つめる」作品だったからだと、今は思います。だから、「冒頭の、老いと死を恐れる愚かな王の芝居が、主人公の状況の静かな隠喩として機能している」とか「そのものズバリを見せるのではなく、周辺を捉えることで観客に全体をイメージさせる」とか「日常の反復の中での小さなズレが、ささやかな物語を紡ぎ出す」とか、言ってる本人も実は良く分かってないよーなもっともらしい事はいくらでも言えるけれど、そんな事は実は割とどーでも良くて、ちょうど音楽に耳を傾けるがごとく画面を凝視していると「映画の悦び」が感じられるという、そういう作品だと思います。 【ぐるぐる】さん 8点(2003-11-16 20:21:56) (良:1票) |