1.《ネタバレ》 これは、クララとロベルトの愛の試練物語ではなく、クララと父親の近親相姦&親子離れの葛藤物語、ですな。クララの父親がとんでもないステージパパだということは知っていたけれども、映画ということで7割差っ引いて見たとしても、それでもありゃ父娘愛ってよりは、男女のそれに近いでしょうが、ってな具合でハッキリ言ってかなり気持ち悪い。クララが性格破綻気味のロベルトに惹かれたのもある意味分かる。あれじゃ、男を見る目を養うなんて無理だもの。まあ、おかげで後世の我々はシューマンの名曲にも、そしてブラームスの数々の名曲にもあやかれるわけで、娘の幸せなんてそこのけで蹴散らし自分の名誉欲最優先でクララをこき使ったパパに感謝せねばなりませぬ。さて映画としての本作を考えてみると、昨秋、ブラームスの子孫とやらが撮ったクララの映画よりは百倍見るに値すると言えましょう。なにより、ナタキンの溜息の出るような美しさだけでも一見の価値はあり。クレーメルって顔に似合わずあんなに指が長くて美しい手してたのねぇ・・・、ってことも分かって一つ収穫。あ、彼はパガニーニに扮して超絶演奏を聴かせてくれるのでこれも一聴の価値大有り。なんだけれども、最悪なのはロベルト役のグリューネマイヤー。彼の奥目の顔は、あのB級ホラー(?)映画『デビルスピーク』のクリント・ハワードを思い起こさせ、雰囲気ぶち壊し。これは、役者には何の罪もないんだけれども、一旦脳味噌がそう認識したらもうダメなのよ。というわけで、ヒジョーに評価の難しい作品でござんした。