2.《ネタバレ》 大富豪のシートン卿が亡くなる。遺産を受け継いだ甥のマイケル・シートンが、飛行機世界一周冒険旅行中に事故に遭うというニュースが流れる。シートンはマギー・バークレーと婚約中で、財産をマギーに与えるという遺書を残していた。お金に困っていたマギーの従姉でエンドハウスの主人ニック(美女)は、二人の婚約が秘密裡に行われていることを知っており、遺産奪取を企む。マギーを亡き者とし、正式名がマギーと同じマグダラであることを利用し、シートンと婚約していたのは自分だと主張する計画。
先ず自分の命が何度も狙われているという作り話をし、ポアロの前で銃に撃たれたように芝居。ポアロの勧めで後見人としてマギーを呼び寄せる。自分のドレスをマギーに着せ、射殺。マギーが人違いで殺害されたと見せかける。なおも芝居を続け、自作自演の毒入りチョコをで食べる。あらかじめマギーの家からシートンからの手紙を盗んで自分の部屋に置いておくという小細工もしていた。ポアロはニックを死んだことにして捜査する。
【ミスリード】①エンドハウスの園丁夫婦がニックの偽の遺言状を作成。②ニックの友人たちが麻薬常習者。一人は麻薬売買で金を儲けている。③女友達のコートの中に拳銃。
【感想】事件が起こる前からポアロが絡み、展開する。いくつかの異なった証言があり、どちらから嘘をついているのだが、それがなかなか明らかにされず、最後までサスペンスが持続する。人違い殺人と見せかけたため、殺害動機が終盤まで不明。ミステリーとしてかろうじて合格ラインには達しているレベル。そもそも婚約者の取り替えは不可能だろう。いくら秘密にしていても周囲には分る。ニックがシートンの遺言の内容を知っていたことにも疑問がある。盗んだ手紙にしても宛先が違う筈だ。マギーだが、婚約者が事故で死んだかもしらないという重要な時にのこのこやって来るだろうか。毒チョコは誰に頼んで送ったのか。帽子を貫通した弾が座席近くに落ちていたのも不自然。ニック一人の犯罪としては無理が多く、誰か協力者を作ればよかった。命を狙われている本人が犯人だというのが最大のミスリードだが、他に大したミスリードもない。事件が一つしか起こらないのも物足りない。死んだふりや霊媒会などの小芝居は鼻白んだ。美女の演技は良かった。