8.《ネタバレ》 三人の監督によるオムニバス。
ウォン・カーウァイ「若き仕立て屋の恋」は、裸は出てこないのだがエロい。
高級娼婦役のコン・リーが女王様のように若い仕立て屋に性的な手ほどきを。
女の手で翻弄されて、ウブな男はすっかり虜になり、彼の人生を変えてしまう。
パトロンにも捨てられすっかり落ちぶれてしまった女にも忠実に尽くすさまに、思いの一途さを感じる。
男が仕立てている女のドレスを一人まさぐり恍惚となるシーンが印象的。
直接的な性描写はないのだが、エロティシズムあふれる作品。
ソダーバーグ「ペンローズの悩み」は、カラーとモノクロで構成されたコミカルな作品。
毎日エロティックな同じ夢を見る男と、それを診察する精神科医だが、この精神科医がなかなかふざけている。
男を瞑想させて夢の分析をしながら、窓の外をのぞき見したり紙飛行機を飛ばしたり。
モノクロからカラーに変わって、夢の女が男の嫁で、精神科医がカツラの同僚に。
どこまでが夢でどこまでが現実なのか、ごちゃごちゃになってしまうような不思議なテイスト。
エロスとはあまり関係ないようで、オムニバスの中では少し浮いて見える。
ヌードは出てくるが、エロスというテーマに無理やりくっつけた感がある。
ミケランジェロ・アントニオーニ「危険な道筋」は、一番裸が出てきてストレートな性描写が多い。
1本目の「若き仕立て屋の恋」とは好対照で、東洋とイタリアの違いを見るような。
セックスレスに陥ったクリストファーとクロエ夫婦に絡みはないが、夫が出会った若い女リンダとは濃厚なベッドシーンも。
夫とやり直そうとするクロエと、リンダが浜辺で素っ裸で向かい合う、なんだかよくわからないシュールなラスト。
三本の中で一番格調を感じるのは一本目のカーウァイ作品。
三本目がソフトポルノを見るようなのに対し、妄想にいざなう官能小説のようにイメージに訴えるエロス。
ただ、三つまとめてオムニバス全般の印象でいえば、それほどいい出来とは思えず消化不良の感が残る。
オムニバスの傑作というのは難しい。