1.《ネタバレ》 大作曲家フランツ・リストが主人公のスラプスティック・ロック・ミュージカルです。ザ・フーのロジャー・ダルトリーがリストを演じるのですが、そこは鬼才ケン・ラッセル、時代を先取りしていますが実に悪趣味な映画になっています。まずこの映画の凄いところは、時代考証無視の登場人物の衣装で、ピアノリサイタルのときのリストの衣装などギンギラギンのロック・スターみたいな代物で頭がくらくらさせられます。このリサイタル・シーンは、観客がみんなアルプスの少女ハイジみたいな衣装を着たギャルで、リストのピアノに熱狂するところなどロック・コンサートそのものです。史実でもリストのリサイタルは当時の若い女性たちには大人気で、会場では失神する娘もいたそうです。この映画ではリストの楽曲にロジャー・ダルトリーが歌詞をつけ、ロック調にアレンジされて使われています。リストはカサノヴァ顔負けのプレイボーイで、映画冒頭から伯爵夫人とやりまくり、終いにはロシアの人妻王女ともいい仲になるという節操のなさ。ほんと、観ていただければご理解いただけますが、このロシア王女とのシーンは、画面がモザイクだらけになってほとんどポルノ映画状態になります。確かに悪乗りし過ぎではありますが、この煩悩にまみれたリストは「アマデウス」のモーツァルトを先取りしていることは間違いありません。娘のコジマは夫を捨てリヒャルト・ワグナーと結婚し、夫婦でナチスの様な秘密結社を作り、ユダヤ人を迫害するは人造人間の製造に乗りだすわと大暴れ状態。法王(配役はリンゴ・スター!)より命を受け、リストはワグナーと死闘をくり広げる…。はっきり言って、ラストのくだらなさはにはぶっ飛びますよ。恐るべし、ケン・ラセッル。