40.《ネタバレ》 もはや娯楽映画のジャンルとしてはやり尽くしてしまっている感もあるケイパームービー(いわゆる金庫破り映画)。
今さら、どんなアイデアを持ち込んだところで、往年の名作の二番煎じ、三番煎じになってしまう可能性は極めて高く、中々“新しさ”を求めることは難しい。
ただし、今作においては、これまでのケイパームービーにはあまり無かった趣向を楽しむことができた。更にこれが実話を元にしてるってのだから、ちょっと驚く。
前述の危惧に漏れず、今作においても“金庫破り”そのものの展開は極めてオーソドックスで、過去の映画で何度も描かれてきたであろうプロットで構築されている。当然そこに目新しさは殆どない。
人生にくすぶり気味の主人公が、ふと持ちかけられた銀行の金庫破りに一発逆転を懸ける。
悪友を引き連れつつ、計画の片棒を担ぐ専門職を集めるくだりは、無駄無くテンポが良かったと思う。
金庫破りが成功するかしないかの展開も、緊張感とユーモアがバランスよく配置されており、娯楽性の巧さを感じた。
このあたりは、ベテラン監督ロジャー・ドナルドソンの手練ぶりが出ていたと思う。
なんだかんだはあるものの、金庫破りそのものは案外すんなりと成功してしまう。
「なんだ余裕だな」とその顛末に若干の物足りなさを感じ始めたところで、この映画が持つ本当のエンターテイメントが始まる。
破った金庫が、裏社会の面々御用達の貸金庫だったことから、主人公一味は悪党から政府の裏組織に至るまで、英国社会の表裏のあらゆる組織から追われる羽目になる。
この三つ巴、四つ巴の攻防が非常にエキサイティングに描かれている。しかもそれが実話だというのだから、殊更に面白味は深まる。
もちろん、この全てが事実だなんてことはないのだろうけれど、それでも実際にあった事件を元にして巧みなエンターテイメントに仕上げていることは事実。
あまりアクションシーンを与えられていないジェイソン・ステイサムの主人公ぶり、そして、非道なポルノ王に扮したデヴィッド・スーシェも印象的。