12.《ネタバレ》 ※このレビューは「コネクテッド」のネタバレだけでなくオリジナル版の「セルラー」のネタバレも含みます※
21世紀のアメリカサスペンス娯楽映画の中でも屈指の傑作「セルラー」
個人的にとても好きな映画なわけですが、そのリメイク映画があると知って今回観てみました。
結論から言うと、かなり残念な出来でオリジナルの偉大さを改めて感じる事に。
「セルラー」のよさは、頭悪そうなチャライ若者、そこそこいい暮らしをしてる中年夫婦、定年退職を迎える老警官という20代、40代、60代と年代も生活基盤もまったく異なる普通だったら決して接点がなさそうな3組の主役が、偶然つながった一本の電話で繋がって大事件を解決していくという設定の妙と練り込まれた脚本、そして練り込まれた演出にあるわけですが、この映画ではその主役を軒並み30~40歳の同世代に設定してしまってます。それじゃメリハリも面白みもないだろ!と言いたい。
リメイクである以上、設定を多少変えるのは当然なわけでこちらでは同世代の片親同士の出会いの映画に変えるというのはわかります(ついでに言えばこの2人が最後くっつくのは最初にわかってしまうわけですが)
刑事の方も上司と確執のある降格になった元エースというのもいかにも香港っぽい設定でわかりやすい。
そんな感じで主要メンバーの設定を大きく変えてるわけですが、しかし残念ながらそれが成功してるとは言い難いのです。
全体的に家族愛を強調する形になってるのはいかにも香港映画らしいんだけど、悲しいかなそれも安っぽさに拍車をかける形に。
同様に安っぽいのがクライマックスシーン。
それなりに知恵を使って進んできた話が急に安物の刑事もののテレビドラマのような撃ち合いシーンになってしまってもうがっかり。
ぶっちゃけぶち壊しです。
いや香港映画は撃ち合いとか好きだから、そういう風にアレンジするのはわかるんだけどさ…
こーんなありがち安っぽいクライマックス、もうなんだかとても残念な気持ちにしかなりません。
普通のサラリーマンの主人公が百戦錬磨の捜査官と格闘しても瞬殺されるはずなのになぜか1対1で格闘するっていうのおかしいだろ。
オリジナルでは主人公は撃ちあいの中を無力で逃げ回るだけでありながら、ここ一番で機転をきかせて逆転のサポートをする、というメリハリのある役どころなので、その差がとても気になるわけです。
映画作るなら頭もっと使ってよ…
ラストもそう。
オリジナルのラストは、それまでずっと電話一台で会話していた二人が、ついにはじめて顔を合わせて会話する気の利いたシーン
「本当にありがとう。私にできる事があれば何でも言って」
「じゃぁ一つだけ」
「何?」
「2度と僕に電話しないでくれ」
んーーなんてべたでシンプルで気の利いたセンスのある会話なんでしょ。
しかしこのリメイクでは、ここの会話もダラダラと長い!
もちろん2人が付き合う事になるだろう展開だから会話が変わるのは当然として、でもここの会話は長くしちゃダメ!
短くピシっとセンスよくするから決まるんだよ!!
そんなダメなリメイク版ですが、個人的にはもう一つ残念な点が。
「セルラー」のレビューに書いたんですが、「セルラー」冒頭と最後の舞台が若者が集まる海で、素敵なビキニ尻のおねーさんが沢山出るのです。それもB級ホラー映画のような安い露出ではなく、品がよく実にちょうどいい、しかもかっこよくエロい尻ばかり。
もう尻フェチ的にはたまらん映画がセルラーだったのです。
しかしこのリメイク版、設定を変えた事で、ビキニのねーちゃんなんかただの一人も出ません。
逆にラジコンオタクのムサイ男が余計に出てきたりして、もう本当にがっかりなのです。
そんなこんなでこのリメイク版、センスでも尻という点でもオリジナルの足元にも及びません。
部分的にはオリジナルの不自然な点を(携帯が混戦するなんて普通はないので)解消してたりするところもあるんですがトータルでは大きく落ちる内容になっています。
それでも、基本的なシナリオがいいためある程度面白く観る事ができるのですが、本家と比べると2点落ちで6点程度がいいとこじゃないでしょうか。とにかく尻がないのが許せない映画でした、うん。ビキニ尻大事!!