★12.《ネタバレ》 神々しいほどに美しい映像と構図、でも気が遠くなるほどに救いの無いストーリー。画と話の両軸がかけ離れているが故に強烈に記憶に残る一本。 大人側の世界、まあ見事なまでに陰気な材料ばかりだ。荒んだ母親、焼身自殺の父親、兵役から帰還した兄は原爆症の疑いが濃く、そのうえ子供が被害者の連続殺人が発生するときたもんだ。 大人が全員暗い目をしている。なんで誰も彼もがどうかしちゃってるんだろう。ぶつぶつ言いながら道を往く二人組のおばさんは勘弁してほしいくらい怖かった。 病んでる大人の世界は子供の無垢なフィルターを通すと様子は違ってくる。ヤバイ未亡人は吸血鬼で、白蝋化した誰かの中絶胎児は天使なのだ。セスにとってはそうなのだ。自分の世界が優先するから大人の浮き世の騒ぎはピンと来ないんだ。警察に目撃した車のことを言うことなんかより、兄を吸血鬼から守ることの方が断然大事なことなのだ。 だけどラストにフィルターは崩壊し、現実のその意味が降りかかる。8歳の子が悟るその残酷なこと。 シュールで苛烈なまでの不条理が金色の小麦畑に展開する。美しくて怖い白昼夢のようだ。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2019-04-26 16:55:22) |
11.淡々とした、時々ドキッとする、胸がちょっと苦しくなるような怖い映画。 映像の美しさや、登場する人たちの多少壊れた感じや、何か凄いと思わざるをえない作品でもある。 【simple】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-01-31 20:36:02) |
10.前半はよくある少年の妄想ものと眺め、「吸血鬼と謎の女の対比など少し理に落ちてる、シナリオはあまりキッチリさせずに、少しイメージがはみ出すぐらいの遊びがほしいところだ」などとブツブツ呟いていると、放射能がどうのこうので社会派タッチに流れそうになり、アレレと思っていると、作者がうまくまとめてやろうという気持ちを放棄したらしく、俄然イメージが奔り出す。友人が黒い自動車にさらわれるあたりからか。なんかこの少年が核兵器を含むすべての罪を内へ内へと引きこみ始めるような凄味が出てくる。目撃したことをなぜ喋らないのか、自分の妄想かもしれないから? そうやって外界の悪いことを全部引きこんでラストの慟哭に至るわけ。責任は僕には重過ぎる、という慟哭なのか。彼が喋らないのは、どこかで連中を分身と思っているところがあるからか。幻視かもしれないと判断して黙っていると考えても面白いか。などとあれこれこっちの判断も分裂気味になるが、それが楽しくもあった。弦にコーラスの音楽がやたら格調高い。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 6点(2012-11-13 09:41:37) |
9.《ネタバレ》 デヴィッド・リンチに『ぼくは怖くない』の舞台を与えたらこんな映画を撮るんじゃないだろうか。一面の小麦畑に囲まれた風景は美しいが、『ぼくは…』のように陽光を受けた穂がきらきらと光るような爽快感は一片もなく、むしろ逃げ場のない孤絶した雰囲気、寂しく陰鬱な光景にしか見えない。 大人たちはみんなどこか歪んでいて、主人公のセスもまた彼らの影響を受けてか否応なく間違っていく。神経質でヒステリックな母親、気弱な負け犬の父親、夫の死に正気を失っている近所の中年女。一番まともなのは主人公の大好きな兄だが、彼もまた核実験の後遺症を抱えている。 状況はすでに絶望的なのだが、主人公の幼い愚かさがやがて悪夢のような結末を招く。最後の最後になって自分の妄想を悟った少年の心は、決定的に壊れてしまう。幼さゆえに犯した罪には、本当は致し方ない部分もあるはずなのだが、彼がそれを一生背負っていくことは間違いない。そしてその重みに耐えられないであろうことも。 暗鬱な物語だった。最初から希望らしい希望も与えられず、登場人物たちの転落は必然的、運命的であったように思える。格調高い音楽と映像は宗教的ですらあり、人間の抱える醜さや愚かしさ、大げさな言い方をすれば原罪とでもいうべきものを突きつけるようでもあった。 意味不明でシュールな味付けはなくてもよかったんじゃないかと思ったが、それを差し引いても充分傑作であると思う。 【no one】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2006-03-17 16:34:04) |
8.《ネタバレ》 ラストシーンがあまり腑に落ちませんでした。なんで少年は嘆いてたんでしょう。A> 今さらながら自分のやったことを自覚して怖くなった。B>「人間が死ぬ」ということを初めて理解した。C>大好きな兄ちゃんが自分以外の人を大好きだったのが哀しかった。・・・等等、いろいろ考える余韻があるのは良いです。それにしても、いくらヴィゴファンを当て込んだDVD化とは云え、あのジャケットはなかろう、と思ってたら、ファーストクレジットがヴィゴだった(笑)低予算だなぁ。でも主人公はやっぱり弟君のほうだと思うんだけど。麦畑の映像や、全体に漂うシュールな空気も好みでしたが、ヴィゴが出てなきゃ観なかっただろうし、点数も半減してたでしょう。 【HIDUKI】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-04-29 12:31:49) |
7.これはたとえ夢オチであっても全然許せるであろう素敵な作品でした(夢オチじゃないですが)。子供の視線であらわしたなんともいえない、1本のシュールな白昼夢みたいで、映像も美しいです。そのままの、柔らかい殻、という邦題でよかった。 【マミゴスチン】さん [映画館(字幕)] 7点(2004-07-31 19:27:21) |
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6.始まって比較的すぐの、あの掴みからして凄かった。このテンションでこの物語は進行するよ、という、無感情でグロテスクな提示。そしてその世界観を破綻させることなく、最後まで貫いた。たまらなく好きな空気。この世の外にあるような場所で起こる異常な出来事の数々。誰1人として正常な人間が出て来ない。皆1人ずつ、静かに病み、狂っている。「正常な世界の異常な人々」や「異常な世界の正常な人々」ではなく、「異常な世界の異常な人々」という1mmの逃げ道もない確信犯的に救いのない空気、そのビザールな世界観に浸った。思うに、デイヴィッド・リンチ+ギャスパー・ノエ+ユルグ・ブッドゲライト÷3な空気感。結構的確な表現だと思うのだけれど、どうだろう。とりあえず健全な人には勧められないな、とは思う。病的な映画が好きな人には積極的に勧めたい。 【ひのと】さん 9点(2004-02-16 15:32:30) |
5.ピンク・フロイドのジャケットをそのまま映像化してしまったかのような映画。広大な麦畑の中で繰り広げられる密室劇という感じ。情景は美しく「ぶちぶち喋る双子」などシュールな小ネタも多く、結構好きです。 原題は原爆被害者を指しているのでしょうが「向こうの人の認識って今だにこの程度なのか…」と違う意味でも興味深い。 【番茶】さん 8点(2003-11-23 09:37:58) |
4.とにかく観ていて締め付けられるというか、淡々としているのにいや~な空気が肺に流れ込む感じ・・・。いろいろ意味があるのでしょうが。 【ひなた】さん 5点(2003-08-14 23:47:00) |
3.確信犯的にイヤ~な嫌悪感を見る者に与える、そういう点で言えばかなりの野心作。連続殺人鬼の正体(?)と、大地に接吻せんばかりに泣き伏す少年の姿を捉えたラストシーンは、ドストエフスキーの『罪と罰』でしょうか? すべては、少年の歪んだ妄想ともとれる、しかしそうだったなら「な~んだ」で終わってしまう、スレスレの映画ってとこでしょうか。これ、ビデオあんのかなあ。たぶん(地味すぎて)テレビじゃなかなかやんないだろうけど、機会があればご覧ください。趣味があう方にはかなりイケてるでしょうから。 【やましんの巻】さん 6点(2003-06-06 17:11:28) |
2.映像は美しく、ストーリーは淡々として、息苦しくなってくる映画。主人公の少年を取り巻く現実は痛々しく、彼が現実に耐えられなくなっていく感じがせまってくる。母親が怖い、というのは何となくわかる気がする。父親が死んだことによって帰ってきた兄の、ひ弱で、はかない感じが意外性があって良かった。「愛されたい!」という暗いがエネルギッシュな少年と、弟の機関銃のような感情を受け止められない消え入りそうな兄との対比は、非常に面白い。暴走する少年の渇望は、残酷な結果を引き起こすが、これで終わるの??? ここで??? という気分になってしまう。それにしても、未亡人がもっと美しかったら、また映画全体のイメージが変わったかもしれないのに。 |
1.きわどくて面白い。奇妙な感じがする。途中の天使を拾う出来事をはじめ、よく考えたらおかしな出来事が何の説明も無く起こり、それがなんだったかとか、関係なくストーリーが進む。久しぶりにこういう脈絡の無い映画を観た。面白い。 |