48.《ネタバレ》 ジム・ジャームッシュによる愉快な刑務所&ロードムービー。
ジャームッシュの最高傑作はコレだろうねえ。
歌を歌うように淀みのない会話で人と人とが繋がっていく楽しさ。
デコボコだった3人の男たちが、会話や音楽によって「親しい兄弟のような間柄」になっていく映画だ。
こういうセリフが多い映画は、速さが足りない字幕なんぞで愉しみきれない。
戸田奈津子のカスみたいな字幕で楽しめるワケねえだろうがあっ!!
原語だけで愉しむのが一番だ。
まあ、そんな事はどうだっていいんだ。
この映画は、軽快な音楽と共に郊外の自然や市街地を移動撮影で映していく場面から始まる。
男と女が熱く愛を語っていた筈のベッドは冷たくなり、女に愛想を尽かされた男達は家を出て行く。
「あんたの音は聞き飽きたの」とばかりに散乱するレコードの破片、破片、破片。
外の町だってゴミだらけ。
銃を背中に向け「撃つわよ」と弾を込める音をわざわざ聞かせる女、それを「君になら撃たれても良い」とばかりに黙って立ち尽くす男。
男は背中で語る。こういうシーンが大好きです。
白いベッドに横たわる黒い女の裸体がエロい。布団を優しくかける紳士すら捨てられていく。
ジャックとザックは女に捨てられるわ罠に嵌められるわ仕舞いにゃブタ箱。
独房の壁のザラザラした音が耳障り。あの感触を想像するだけで胸が痛くなる。
だが、そのブタ箱で思わぬ出会いをする3人目の男ロベルト。
この男が衝突する2人の間を取り持ち、潤滑油のように友情を深めてしまう。
喧嘩するほど仲が良い。
ジャックとザックの殴り合うような掛け合いだけでも面白いが、そこにロベルトが加わる事でアンサンブルはより楽しくなる。
3人の合唱は独房全体に響き渡り、警官の警棒がフィナーレを締めくくる。最高に楽しい場面だった。
独房の中心でアイ(スクリーム)を叫ぶ(スクリーム)。
ロベルトは壁に“窓”を書いて「ここから出ちまおうぜ」と言ってのける。
本当に出ちまうんだから面白い。
逃亡という名の森林散策。
船で沼地を進む3人ををロングショットで捉えたシーンの幻想的なこと。
ウサギの丸焼きは美味そうだ。
飯喰って仲直り。
道の一軒屋で3人を持て成してくれた奥さんがキレイな人でねえ。
ロベルトもまた恋に出会う。
やがて別れていく3人だが、分かれ道でのやり取りの何と粋な事。
「おまえが左なら俺は右よお」