1.《ネタバレ》 『夜明けのミュー』ならぬ『夜明けのギャー』なんてボケようかと思いましたが、登場人物が悲鳴を上げるシーンも、観客が叫びたくなるシーンも、ほとんど見当たりませんでした。ゾンビに襲われて臓腑や脳味噌を搔き出される、お馴染みゴア描写もゼロに等しいです。そのため傷口パックリ腐敗臭漂うゾンビの造形はグロテスクでも、意外と汚らしい印象はありません。これは、ゾンビ初心者や食わず嫌いの方にとっては在り難いかも。ただ反面、ゾンビ映画の醍醐味に欠けるとも言えます。感染・免疫の概念を強調していること、人間VSゾンビよりも人間VS人間の構図がメインである点も、“ゾンビ映画らしさ”を薄めている要因と考えます。下手をすると、ゾンビとウィルスパニックの差異が無くなってしまいます。ただし、その点本作はよく考慮されていました。息子を手にかけた主人公の痛みと苦しみ、そして回復までの過程を、ドラマの中心に据えたのです。ゾンビ映画ならではのエピソード。必ず見かける定番のシークエンスではありますが、淡白に処理されてしまうことが多く(生き残るのに精一杯で悲しみに暮れている暇が無いですからね)、本作のように人物の内面にしっかりスポットを当てるのは珍しいと思いました。ゾンビ映画のアイデンティティを主張する上で、この方針は正しいと思います。一言で言い表すなら“アッサリ・キレイなゾンビ映画”。たまにはハッピーエンド(?)もいいでしょう。アニメーションを利用した演出や予算規模が窺えるロケーション等、オリジナルビデオっぽい雰囲気は少しだけマイナスかな。