1.《ネタバレ》 前に見た同じ監督の「ラブ ゴーゴー」(1997)に比べて、映像的な洗練度や娯楽性(大衆性)がさらに向上したように見える。
原題にある「情人節」とは、本来は2/14のValentine's Dayの意味のようだが、近年はなぜか七夕をこれに当てるという風潮があるらしい。前半の「消失的 人 」が消えた人というのはわかるとして、後半の「消失的情 節」の「情節」は、実際にplot、storyといった意味があるようだった。
全体構成としては、前半の郵便局員パートで各種の疑問を提示しておいて、それを後半のバス運転手パートで解いていく形になる。変に日焼けしていたのはUFOに拉致されたせいかという想像が広がらなくもない。
特に前半ではラブコメ風味が強い。こんないかがわしい男を相手にして大丈夫かと心配すべきところだが、本人の言動や表情が微笑ましいというか笑わされるので和む。後半は少ししんみりさせられるものがあり、少女に救われた記憶というのは「ラブ ゴーゴー」のパン屋かと思ったが、今回はちゃんと望みを果たす結末になったようだった。
謎の出来事の真相に関しては、利息という説明はよくわからなかったが、とにかく人によって1日増える場合と減る場合があり、それが主人公男女の運命を変えたということらしい。ただ郵便局員の心変わりの理由が不明瞭なのは残念だった。「大切な記憶」が共有できない寂しさ(男)に対し、「あなたを愛する人がいる」(女)と気づいて応えようとしたということかも知れないが、後者はあまり説得力がない気がしたということである。今回はドラマ的な面で不満が残ったかも知れない。
なお相合傘の下に人名を書く習慣の世界的分布がどうなっているのかは気になった。縦書きできる言語でないと難しいはずだ。
映像面では街の人々が停止していた場面が見どころかと思われる。人形を置いたのかと思ったら、終盤で一斉に動いたのは生きた人間だったことがわかる(犬は違うか)。また浜辺でのおふざけは「熱帯魚」(1995)のようだったが、生きた人間を相手にできないようなのは切ない気分だった。冠水した道を走るバスが千と千尋を、また車内がエヴァンゲリオンを思わせたのがアニメの実写化のようで目を引く。
登場人物としては、郵便局の若手同僚もかなり目立っていたが、何といっても主人公(演・李霈瑜/Patty Lee)が愛嬌があって可愛いので好きだ(かなり好きだ)。この人あってこその映画だった。またヤモリに親和的な態度も悪くなかった。