1.ムルナウの『最後の人』に匹敵するくらい、ほぼ全編が「ドア」やそれに類する開閉装置(門、窓、トランク)のショットに満たされ、そのいずれもが見事に活用されている。(オープニングとエンディングも黒地画面の開閉である。)
ドアを介した人物の頻繁な出入りと縦横の移動撮影を組み合わせたショット接続は映画の運動感を高め、また舞台となる保育所、屋敷、病院、人形ショップなどの家屋構造を立体的に表現する機能を発揮している。
人形の並ぶショップ地下室の不気味なムード、キャロル・リンレイが夜の病院を脱出するシークエンスから犯人との対決までの緊迫感の持続はこの優れた空間提示の賜物だ。
尚且つ、ドアをめぐるアクションはその鍵の用法や所作によって主要キャラクターの心理を表象化し、内/外の分断というドラマ上の伏線としても機能する重要なアイテムといえる。
まさに「ドア」の映画。序盤から持続するサスペンス感覚が、ブランコの揺り戻し運動を高所から捉える不安定なカメラによって視覚的にも極大となっていく展開も見事。