7.《ネタバレ》 主人公に踏ん切りのつかない「過去」があるのだが、それが結局どういうことだったのかは詳細には明らかにならない(ある程度想像はつくものの)。その意味では通常の劇映画とはやや様相を異にする作品だが、とは言え本作はシンプルな「止まっていた時間が動き出す」映画である(一言で言えば再生、というか)。
人生とは失うこと、というのは、ある点では確かに正鵠を射た言葉であろう。私としてはむしろ、人生において失うコトと得るコトは表裏一体なのだ、と思っている。失うことを恐れてはいけない。例え失ったとしても、その分得たものを慈しみ、明日への糧にしてゆけばよいのだ、と。ある種、逆説的に前向きな言葉だとも思う。それも含めて、人生とは本質的に「変化」していくことだと思う。止まった時間が夢の如くに安らかであったとしても、人は必ず、いずれ時と共に変わってゆかなければならないのだ、と。
主演の朝倉あきという人は、非常に魅力的なキャラクター・個性を持っている女優だと率直に感じたが、本作ではそれを活かした実際の役づくりの中に、ほのかに、だがしっかりと、この役に求められる「厄介さ」を的確に表現しており、中々優れた仕事だったと思う。
※どーでもいいことですが、部屋を間違えた場面、出てきたガラの悪いオッサンがその後何故か妙に頼りになったというシーンが、これも何故だか妙に印象に残っています。ああいう大人に、ワタシはなりたい。