2.《ネタバレ》 鑑賞動機は祷キララさん。勝手に2代目水川あさみと命名していますが、何故か目の離せない女優さんです。演技が凄く上手いとか、見た目が好みとかいう訳ではないのですけど。『ファンファーレが鳴り響く』の後遺症の一種かもしれません。
さて前置きはこれくらいにして本題へ。本作の主人公は拗らせ2人組でした。ひとりは17年間高校から抜け出せないでいるノブオ。もう一人はかまってちゃん女子高生のリカコです。ノブオの方が一見重症に見えますが、引き籠りやニートの類ではなくちゃんとアルバイトをしていました。社会的に断絶していない所がポイント。拗らせ解消はキッカケ待ちとも言え、失踪という名の荒療治はノブオにとって「渡りに船」であったかもしれません。むしろ深刻な病状であったのはリカコの方かと。かまってちゃんなど珍しくもありませんが、彼女の場合は幼少期に負った心の傷が結構えぐい。治療せぬまま大人になろうものなら、人生台無しにする可能性もあったと思います。
学校は基礎学力を身に付けるだけでなく、社会的人格形成の上で効率的なシステムですが、閉鎖空間で価値観が偏るのが難点です。各々が様々な価値観に触れバランスを取らないと煮詰まってしまいます。そこで重要なのが「家庭」の役割。リカコは此処に問題があった訳ですから、一度家庭から解放され「別の風」や「違う水」に触れる必要があったのだと思います。彼女の失踪は危機管理的に正しく、野生の勘で効果的な治療法を選んだのかもしれません。だからといって「ストリップ劇場」は劇薬に違いなく、娘を持つ父親としてはこんな冷静な感想など現実には言えるはずもありませんけども。かくして2人はそれぞれ人生を前に向かって歩け出せた模様。男の方はかなり遠回りをしましたが、失った時間を悔いても仕方ありません。なるべく楽しく、笑って死ねる為に必要と思われる課題をクリアするのが人生の醍醐味。学校で出される課題よりずっと大変ですが、その分遣り甲斐があるというもの。ノブオにはこれから勇気を持って自分の人生と向き合って欲しいと願います。
青春ドラマとして王道のつくりで、この手の映画が好きな人にはお勧め。個人的には「ギターを背負った女子高生」と「学ランを背広に見立てるネクタイ中年オヤジ」の絵面に得も言われぬ「エモさ」を感じました。これぞ映画ならではの魔法であり、ロマンであります。