★1.《ネタバレ》 1941年、アメリカ南部の保守的な田舎町で起こった、貧しい黒人男性による裕福な白人女性レイプ事件。社会に衝撃を与えたこの事件に弁護士として関わることになるのは、「全米黒人地位向上委員会」で当時唯一の弁護士だったサーグッド・マーシャルだった。まだまだ根強く残る黒人への差別感情と戦うために、マーシャルは身重の妻を残して現地へと旅立つ。だが、事件を担当することになった判事は、彼が他州で弁護士登録をしていたため被告の主任弁護士となることを認めなかった。仕方なく彼が取った方法、それは現地で手伝いだけをする予定だった民事専門の弁護士フリードマンを担当弁護士として祭り上げること――。波風立てず順調に出世コースに乗ることだけを心掛けていたフリードマンは、降ってわいた事態に混乱するばかり。だが、裁判が始まり、黒人たちが置かれたこの国の現状を知ってゆくと、彼の心情にも変化が訪れ……。のちに黒人初の最高裁判事にまで昇りつめた弁護士サーグッド・マーシャルの文字通り法廷を変えた事件を描いた法廷サスペンス。実話を基にしたという本作、綿密な取材と時代考証、役者たちのナチュラルな演技、そして何より黒人たちが受けてきた不当な差別にスポットライトを当てる社会性等によって、なかなか見応えのあるドラマに仕上がっていたと思います。重いテーマを扱いながらも、一貫して変わらない軽妙洒脱な演出やお洒落でブルージーな音楽とによって非常に観やすく創っているのにも好感持てました。黒人と白人、方や正義感に燃える敏腕弁護士、方や平凡に生きていたいだけの小市民弁護士と、まったく正反対の二人にいつしか芽生える友情という弁護士版バディものとも言うべきストーリーも分かりやすくてグッド。ただ、良くも悪くも本作は実話を基にした作品。肝心の法廷劇の方は、正直微妙と言うほかありません。黒人が犯した白人女性レイプ殺人未遂と言う凶悪事件の真相がドラマの最大の焦点となるのですが、最終的に明かされることの真相が「え、結局それだけのことやったんかい!」と言わざるを得ない凡庸なものでした。まあそれが事実だと言われればそれまでかも知れませんが、もう少しドラマティックな見せ方をとっても良かったのでは。法廷劇としてはちょっぴり物足りなさの残る作品でありました。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 6点(2020-01-09 03:06:23) |