★1.《ネタバレ》 様々な科学技術が発展した近未来。大手企業でバリバリと働くキャリアウーマン、レイチェルは植物学者である夫とともに充実した日々を送っていた。仕事も順調、豪華な高層マンションでの暮らしも快適、夫との関係も良好。でも最近、彼女は何か物足りないものを感じていた。そろそろ子供をつくるべきなんじゃないか――。不意にそう思い立つレイチェル。だが、今の仕事から離れたくはない。そんな折、彼女はベンチャー企業が新しくはじめた画期的なサービスを知るのだった。それは、体外受精した胎児を卵型のポットの中で10ヵ月間育てるというもの。これなら産休も取らなくてすむし、出産のリスクを負わなくてもいい。さっそく話を聴きにいくレイチェル。でも、豊かな自然を愛する植物学者の夫はそんな出産は摂理に反すると反対してきて……。卵型のハイテクポッドの中で胎児を育て出産することを決意したある夫婦の葛藤の日々を軽妙に描いたSFコメディ。アイデアはなかなか良かったと思うんですよ、これ。近い将来、本当にこんなサービスが出来るんじゃないかと言うリアルな部分に目をつけたところがなかなか秀逸。出産のリスクや面倒を何故女ばかりが負わなきゃならないの?というフェミニズムな視点もそこまで押しつけがましくなくて好印象。目玉をモチーフにしたAIなど一見シュールなのにどこまでもポップな描写も、この監督の品の良いセンスが感じられて大変グッド。ただ、問題は肝心のお話の方。アイデアは良かったのに、それがアイデアのまま終わってしまってるんですよね~、残念ながら。普通、こーゆー画期的なアイデアを基に脚本を書くなら、そこから起こるであろう様々な問題や波紋を拡げてお話をどんどん面白くしてゆくもの。例えば、胎児の取り違えが起こったり、人身売買など闇組織に利用されたり、生まれてきた子供に愛情が芽生えないなどの問題が起こったり……。でも、この映画はそーならない。ただ、ハイテクポッドで子供をつくって産みましたってだけ。最後、何故かハイテク企業の手を逃れ自分たちだけで胎児をとり上げようとする主人公夫婦もその理由付けが弱く、いまいち盛り上がりに欠ける。かといって前述したフェミニズムなテーマもサラっと流してるだけで深みはなく、アート系映画としても弱い。なんかもっと面白くなりそうなのに、すごく勿体ないなぁという感想を僕は持ってしまいました。洗練されたポップな映像や飄々とした世界観はけっこう良かっただけに、残念! 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 5点(2025-03-06 09:57:31) ★《新規》★ |