25.《ネタバレ》 日本初の総天然色映画として百科事典で特記されていたので大昔から名前は知っていたが、子どもが見るものではないと思っていた。今回デジタルリマスター版というのを見ると、浅間山を背景にした牧草地に登場人物の華やかな衣装が映えている。山から噴煙らしいものがずっと出ていて、まともに構図に取り入れている場面もあったが、気象庁の記録によれば1950~51年に火山活動があり、噴火で死傷者が出た事件もあったらしい。実は危険な撮影現場だったのではないか。 それはそれとして基本的には喜劇のようで、深刻そうな場面もユーモラスで笑ってしまうところがある。父親はやたらに主人公をバカ扱いしていたが、特に知能に問題があるわけでもなさそうで、これは当時の社会通念から自由なことをそう言っていただけではないか。昔バスガールをしていた(婿を連れて帰った)姉はどちらかというと主人公の価値観の理解者だったようだが、父親の方は(妻を亡くして?)娘たちに十分手をかけてやれなかったという悔いがあり、その自責の念がバカの木に象徴されていたと思われる。 物語の中心テーマは芸術文化に関することだったように見える。 まず、金儲けが目的なら芸術文化ではないという趣旨の発言があったが、それをいうなら映画も似たようなものといえる。実際に今どき映画を芸術の部類に入れる人々も多くないだろうが、しかし芸術性皆無の映画というのもあまりなく、芸術では絶対ないともいい切れない。また劇中例でいえば、観客の色欲を刺激するのが目的なら芸術とはみなされにくいが、しかし例えば食欲を満たす場合は生の食材そのままでなく調理するところに文化性があり、また主人公についても生のものをただ見せるのでなく歌や踊りの技量、さらに衣装を含めてどう見せるかで価値を高めようとしていたはずである。その点で、目的が不純であっても芸術性・文化性を伴うものはあるといえる。 また興行収入の使途に関する校長の発言には、裸芸術と本物の芸術は隔絶したものではないという認識が示されている。本物の芸術というのも実は範囲が明瞭でなく、元教員が作った歌は芸術寄りではあろうがシューベルトの歌曲と同列ではない。そういったものを全部まとめた、いわば芸術文化連続体の中に裸芸術も本物の芸術も含まれているということだ。 ラストでは、さんざん色々やらかした主人公と同僚が悪びれることもなく去る一方、それとは別に元教員が元のとおりにオルガンを弾いていて、両者の出会いで何か変化がもたらされたようでもなかったが、これは新奇/古風、都会/田舎、高尚/卑俗で良否を分けず、それぞれが併存していて構わないという大らかさの表現に思われる。結果的には、世界の様々なものが持つ芸術性や文化性を広く認め、みながそれぞれにアーティスティックな創意を発揮または評価する時代を志向する映画なのかと思った。 なお主題歌(主人公が歌う方)は結構耳に残る。芸術とまでいうかは別にして華があってモダンだ。 【かっぱ堰】さん [ブルーレイ(邦画)] 7点(2023-01-01 22:58:41) |
24.初の国産カラー映画だそうだが、それ以上に驚きのトリップムービー(但しバッド・トリップ)だ。なにしろタイトルバックからして尋常じゃない。地獄の底から響いてくるような、デビューした頃のあがた森魚みたいな、聴いてると死にたくなる短調の陰々滅々とした童謡。その背景に映し出されるのは脳天気風な筆致の田舎風景のイラスト。画と音楽とが完全に乖離していて制作者の意図が全く理解出来ない。そしてこの異様な乖離は映画全編を貫いているのだからびっくりだ。どうやら真面目で陰気な田舎の人間と軽薄で脳天気な都会人の対比の面白さを狙ったように思えるが、二者のコントラストがあまりに強すぎて二つの世界観を脳内で融合させることは難しい。しかしそれは仕事に対するいいかげんな姿勢の結果というわけではなく、絵的には初のカラー作品という企画意図にばっちりはまった良い画が続出する。まず非常に見応えのあるパノラマ的大自然が美しい。ぼろい建物やトロッコみたいな列車や馬や牛などの動物が昔のカラーで見ると意外なほど活き活きしていて楽しい。もちろんぴちぴちした肢体を見せつける二人のおなごもたいへん眼に美味しい。そんなこんなで感じるバイタリティを、全ての浮かれた気分を、ありえないくらいダウナーなテーマ曲が徹底的にぶち壊す。これが悪い夢を見るような不快さで私のようなトリップムービー好きには堪えられないご馳走だ。おそらくそんな前衛を意図したわけではないだろうから、この違和感は「なんのかんの」さんが仰るように時代の価値観が違うせいなのだろう。戦後の退廃的な世相を皮肉る意図もあったのだろうか。確かに続編の「カルメン純情す」からは監督の「戦後」に対しての苛立ちが感じられる。いずれこんな鬱陶しい曲が違和感なく感じられる辛気くさい世の中など私はまっぴらごめんだが。 【皮マン】さん [DVD(邦画)] 9点(2017-01-23 15:00:07) |
23.デ・ニーロ主演、Taxi Driverに競り勝って権利獲得(笑) 本作をスクリーンで鑑賞することが出来るのは2度めの経験、おそらく前回は生誕100周年を祝してのLincoln Centerでの催しを通して。ただFilm Forumで鑑賞した記憶も交錯しているので初鑑賞はやはりそっちだったのかも。今日に限ってはMoMAで同時間帯にTaxi Driverを上映しており直前までどちらを鑑賞するか迷った挙句、高峰&木下ペアに軍配。それを祝するかのようにJapan Societyのメンバー向け新料金体系と巡りあい、二枚渡した$5札が一枚戻ってきた。いまどき見上げた心がけ。えらいぞ、Japan Society。 前回鑑賞してから今日まで間に観た邦画の本数がものを言い出した、クレジットされていない役者にまで目が行くのだ。今回は望月優子(本映画でのクレジットでは望月美恵子)と井川邦子をゆっくり拝見させてもらおうと思っていたのであるが、エキストラに紛れ込んでいた谷よしのを発見し内心狂気乱舞(笑) 彼女の存在は「男はつらいよ」シリーズを通して馴染み深くなったわけであるがwikipediaにも「島津のもとで助監督を務めていた木下恵介から声がかかり、通行人の役で出演した。以降、『カルメン故郷に帰る』など、木下作品にほぼ毎回出演した。」とあった。この部分は読んでいたかもしれないがすっかり忘れていたわけで、目だけで見つけられたのは誰にも伝えられない自分だけの喜び。他の木下作品、要もう一周だなこりゃ。 二度目の鑑賞ということでいろんな重箱のスミに目が届く。踊りはやはり小林トシ子の方が数段ウワテであったとか、笠智衆の歌声はそれなりに聴き応えがあるだとか、三井弘次がまだ元気に飛び回ってるのが微笑ましかったりとか、日本初のカラーで木下が魅せたかった女優は高峰秀子の次は井川邦子であったに違いないという勝手な確信とかとか。 字幕がよいのか単に滑稽なのか、場内の米人達はゲラゲラと楽しんでいた様子。きっと彼らとは「恥」の感覚にはズレがあるのであろうけど、NYCに住む人達だからこそ自身が生まれ故郷に帰った時のことなどを想像して共感できるところもあったりするのかなと想像してみたりもした。 【kei】さん [映画館(邦画)] 6点(2015-09-05 11:36:03) |
22.昭和20年代のカラー映画で景色の美しさが印象的でした。やはりモノクロより物語も明るくなりますね。 【ProPace】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2014-08-23 18:50:11) |
21.《ネタバレ》 日本初のカラー映画ということで鑑賞致しました。音声がかなり悪くて台詞が聞き取りづらいところもあるし、日本初のカラーということでもの凄くコストもかかり大変だったそうな。フィルムの問題もありそれほど綺麗な映像というわけではないのですが、でもそこに映されている景色は文句無しに美しいものでありました。この作品の真の主人公は、実は浅間山なのではないでしょうか?終始、会話する人々の後ろに悠然とかまえている浅間山。なんだか、この微笑ましい人たちを静かに見守ってくれているような、そんな風にも思えてきます。そしてその浅間山の麓の手つかずの自然。撮影は北軽井沢で撮影されたそうですけど、ほんとに素晴らしい景色なんですよね~。なんかその風景を見ているだけでも楽しかったです。「裸踊り」だなんていってましたけど、ビキニ姿ですから本当に裸ではありません。でも時代的なことを考えると、女性のビキニ姿ってほんとに大胆だったんでしょう。それこそ裸同然に見えたんじゃないでしょうか。それを映画で見せてるわけですから、今見るとお上品で刺激のない映画に見えるけど当時はけっこう刺激的な映画だったんじゃないかしら。大ヒットした理由は単にカラーだからというだけではないように思います。 【あろえりーな】さん [DVD(邦画)] 6点(2014-03-06 18:34:55) |
20.《ネタバレ》 タイトル・ロールのカルメンにばかり注目しがちですが、意外と相棒の小林トシ子がいい味を出していました。佐田啓二に秋波を送る場面なんか、ついつい笑っちゃいます。カルメン自身はストリップを「芸術」だと思っていて、案外まじめなとこもあって、本来ならその辺のズレがおかしみを生むのでしょうが、そこまでは感じられなかったのが残念。どちらかというと、娘がストリッパーになったことを恥じる父親の心情や、盲目の田口先生をめぐるエピソードが印象深く、人情喜劇の部類に入ると思います。 とはいえ、芸術的な(だからへんてこりんなのか?)「裸踊り」をくそまじめな顔つきで踊るカルメンを見ていると、ドタバタの要素も盛り込んであるようです。このように笑いの要素がちょっとちぐはぐだったのが残念でしたが、楽しめました。ところどころで挟まれるクラシック音楽は、これが本当の「芸術」だってことでしょうね。モノクロ撮影版もあるようで、一度見比べてみたいです。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-06-26 16:38:22) |
19.皮相な社会風刺になりかねないところを、主人公の明るさが救っている。「新しいもの」に飛びついて分かったふりをする当時の世相を笑いつつ、その新しいものも切り捨てない。木下さん、ストリップがはやる風潮を愉快には思ってなさそうだが、少なくとも青年を盲目にする戦争よりはいい、と自分の中であれこれ計量しているよう。軸はストリップと佐野周二の歌という当時の文化状況の対比、あれ木下忠司お得意のマイナー調で(たとえば『喜びも悲しみも幾歳月』のテーマ、お~いら岬の~灯台守りは~)、「青葉の笛」とか「水師営の会見」とか短調唱歌で育った世代の「いい歌」なんだな。この陰々滅々ぶりは皮肉な効果を狙ったんじゃなく、あれが当時の「芸術的で真面目ないい歌」だと思って聞くべきなんだろう、「軽薄な」ストリップの対比として。そういう構想で作られつつも、映像としては青空の下の若い娘たちの輝きが圧倒してしまうところが映画の面白さだ。そっくり時代の記録として残った(そうか、盲目の青年だけが彼女らの肢体を見られないわけで、だから陰々滅々な歌の作曲者なのか?)。喜劇としては、三好栄子の怪演が記憶に残る『純情す』のほうがキレが良かったと思うが、この牧歌劇のほのぼの(とりわけ娘が裸で踊るお父さんの苦衷とそれへの周囲の慰め)も味わいあります。 【なんのかんの】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-01-02 09:36:50) |
18.せっかくのストリッパーの田舎への帰省という何かの枠を超えそうな魅力的な設定なのに、何も逸脱したところがなく、ほのぼのと上品にまとまってしまっているのです。これでは面白くありません。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2012-12-21 04:59:06) |
★17.山田監督100選で鑑賞。初の国産カラー(これは、当時の感度が悪いフィルムで良く撮れている)、木下監督と高峰さんの変わった喜劇(?)、当時はすごかったんだろうけど。名作となり得るような物は見出せないです・・・ 【min】さん [地上波(邦画)] 5点(2012-12-18 20:34:19) |
16.カラー映画。北軽井沢の素朴な村に、東京から2人の踊り子がやってきて、村が騒動になる様子を描いたブラックコメディ。移り変わる社会に対するとまどいのようなものが描かれている…かも?記念碑的名作というには品格に欠けるが、当時の雰囲気はよく表れているような気がする。 【且】さん [DVD(邦画)] 6点(2012-06-26 02:12:43) |
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15.日本初のカラー作品ということで、映画史的に見ておこうという軽いノリで鑑賞。正直最初は、とりあえず見ておくかくらいの態度だったんだけど、後半にいくにつれエモーショナル(?)な展開になっていき、普通に楽しんで観ることができました。途中までは感情移入できなかったカルメンですが、最後までアッケラカンとした彼女を見てると、なんだか天使のようだな、と思っちゃった。間違いなく買いかぶりだろうけれど(笑)。 【ゆうろう】さん [DVD(字幕)] 6点(2012-05-14 02:26:38) |
14.私の子どもの頃はカラー映画は大変珍しく、「総天然色映画」という名前でもてはやされたものだ。この映画こそ当時見たわけではないが(お子様には無理だったのか?)、当時の人気はすごかったのだろう。しかし何せカラー日本で初めてというのは大冒険だったろう。 妙なクラシック音楽や信州の大草原での踊り、暗い感じのオルガンというアンバランスの中で、高峰秀子のはじけっぷりは見事。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 5点(2011-10-12 16:33:54) |
13.高峰秀子主演の喜劇、日本初のカラー作品らしい。 高峰秀子のはっちゃけキャラが面白いんだけど、 当時の田舎としては、やっぱり彼女の姿は衝撃的だったんだろうな。 見所は美しい景色ときれいな映像。思わずタイムスリップして、 その場に行ってみたいようなシーンの連続で、さすがは初カラー、気合いが入っている。 ストーリーの方はまあ・・・。当時の素朴な田舎の雰囲気を楽しむにはいい映画です。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 4点(2011-08-14 18:42:01) |
12.日本初の長編カラー映画。 つまりは、国の威信をもかけた作品で、木下惠介がその職人技と安定した技量で、無難に作り上げた人情喜劇という感じ。 日本初のカラー映画だと思って観ているので、なんだか当時の興奮が伝わってくる。 高峰秀子が、今までになく体を露わにし、太ももなんて露出し放題! だけど太い(笑)。 でも、まあいい。 この時代の世相を反映していて、とても興味深く楽しむことができた。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2011-04-10 23:22:27) |
11.木下恵介監督、日本初のカラー作品、小津が「いい映画見た後の酒は旨いね~」と言わしめた作品ということで力を入れてみたが拍子食らった。あまりのめり込めない。やっと面白くなったのはラスト1/3、最後のダンスシーンは大爆笑でした。だたちょっと拍子抜けの感はありますね。木下作品はあまり知らないのでこれから研究します。 【仏向】さん [DVD(邦画)] 5点(2008-09-01 00:02:57) |
10.なんだかなあ。当時見たのなら感動したんだろうけど、いまさら初カラー作品と言われてもピンと来ない。二人の踊りもなんだか中途半端。おとっちゃんが哀れ。 【mhiro】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2007-08-05 20:34:52) |
9.やっぱり高峰秀子はこんな役がよく似合う。現代からすれば奇々怪々な踊りにしか見えないが当時はとても画期的な踊りだったのだろう。カルメンが馬に蹴られたようなキャラで最後まで演じきったのがよかった。白樺とオルガンと浅間山が印象的な作品でした。 【カリプソ】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-04-30 11:36:47) |
8.《ネタバレ》 いや~よかった。日本初のカラー映画として有名なだけあって色合いもなかなか味のある色だった。なんていうか世界名作劇場みたいな雰囲気出てた。それでいて高峰秀子の赤が映えまくる。汽車から高峰秀子が登場したシーンが一番印象的。それにしても当時では異常なほどの露出。さすが高峰秀子と。 【バカ王子】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2006-06-06 23:34:44) |
7.日本初のカラー映画というだけあって、何だか凄く新鮮味を感じるオープニングと色使い、色彩の美しさを感じることが出来るこの作品の一番の良さはどの人間にしても観ていて気持ちが良い。高峰秀子と小林トシ子、この二人の演技の面白さ、特に明るくて陽気な性格の高峰秀子演じるリリー・カルメンが良い。また父親役の坂本武とそして、何と言っても校長先生役の笠智衆が素晴らしい!何だかまるで寅さんに出てくる越前様のようなその人物像がとても良い味、出してて良かったです。全体的な雰囲気も良い。結構、笑えるし、木下恵介監督は人情劇も上手く撮るなあ!と思いました。 【青観】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2006-02-12 13:04:42) |
6.これからは女性が世に出ていく時代になると言いながら、実際はストリッパーとして男を悦ばす仕事しか与えられない。社会進出とは程遠く、芸術という言葉で自分を慰め割り切るしかなく、明るく生きる娘、そんな娘に納得をはしないながらも見守る父。初カラーで映したかったものが女性の肌なんでしょか、浅間山の景色はキレイですが、馬に引かれてウエスタンでも見ているような絵、なんかピントがずれてる気がする。 【亜流派 十五郎】さん [CS・衛星(字幕)] 4点(2005-12-15 23:28:20) |