6.《ネタバレ》 確かにエロさの面でも圧倒されるのですが(笑)、エロさ以上に、映画の中で展開される世界に圧倒される作品でした。
冒頭からいきなり凄惨な場面が登場し、もう先が思いやられるわい、トホホ、ってなもんですが、一方で登場するのは竹中直人演じる冴えない中年男の「何でも屋」。滑稽でもあり哀愁も漂わせていて好対照、さてこの2つの世界がどう交わっていくのか、と。
竹中直人は芸達者だから、一見冴えない・でも時に勘が鋭く・結局は自らの誠実さに負けていく男を熱演しているし、大竹しのぶも芸達者だから、壊れかけのオバチャンを熱演しているし、井上晴美はこれはもう持って生まれた意地の悪さがそのまんま出た適役(知らんけど多分そんな気がする)。そんな中で、佐藤寛子だけは、ニュートラルな、映画の中でどんな色にも染まりうる存在となっています。
いや、ニュートラルというのは違うかな。彼女は作中でこれでもかと脱ぎまくってますが、シャワー、主人公の妄想、事務所の夜、ラストの廃坑、4回あるハダカのそれぞれが、映画の節目になっているとともに、彼女の多面性を象徴する場面にもなっています。彼女は、誰よりも同情されるべき存在なのか、それとも3人の女の中でも飛び切りのワルなのか。最初の2つのハダカはそれぞれに対応しているようであり、3つ目の一番エロい(笑)場面は、彼女の二面性、いや存在の二重性をそのまま表している(だからこそ、この緊張感)。で、ラストで彼女は自らを一体化させようとし、しかしもはや、分裂していくしかない。おお、まさにエロの起承転結とはこれのこと。
それにしてもこのラストで舞台となる廃坑、スゴいですね。深海のような世界、まさに人外魔境。しかし、前半で竹中直人が彷徨う東京の街も、こんな風に底知れぬ闇を湛えていて、このラストシーンと呼応するものが感じられます。
異世界へのいざないに抗えず引き込まれて行ってしまう主人公を、かろうじてこの世界に引き留めうる存在・東風万智子、いつも、忘れた頃に絶妙のタイミングで姿を現すんです。ナイス。
いや、見事な作品でした。