174.何というアタマの悪い映画だろうか。
登場するキャラクターも、製作チームも、この映画を愛する観客たちも、揃いも揃って「なんてアタマが悪いんだ!」と思わざるをえない。良い意味でも悪い意味でも。
バイオレンスアクションの金字塔としてあまりにも有名な映画だと思うが、世代的な要因もありこれまで未見。今夏の最新作“怒りのデスロード”を観てから初めての鑑賞に至った。
全世界においてカルト的な人気を誇るこの映画を初めて観た率直な印象を先ず一言で述べたい。
「クソ映画」だなと思った。
はっきり言って、支離滅裂でいたたまれない愚鈍な映画世界に対して、居心地の悪さしか感じなかった。
何と言っても我慢ならなかったのは、傍若無人・極悪非道の悪党どもよりも誰よりも、主人公とその妻の著しく生存本能に欠けた馬鹿さ加減に辟易してしまい、冷めてしまった。
満を持して観た映画史上に残る傑作に、全くハマることが出来なかったことは、至極残念に思う。
ただ、それは映画を観るという行為において致し方ないことだとも思うし、だからと言って、この映画が世界中から愛され続けていることに対して疑問を感じることはない。
自分なりに長らく映画を観てきて思うことは、「カルト映画」と「クソ映画」の差は紙一重というか、むしろ同義だと言ってしまっていいのだろうということ。
公開された1979年において、全く新しく、暴力的で破天荒な映画世界に世界中の映画ファンが心酔したこともよく理解できる。
同時に、当時においてもこの映画を全否定した映画ファンも決して少なくなかったことだろう。
是と非がせめぎ合うほど、映画のカルト性は深まり、伝説化していくものだ。
すべての映画を楽しむことが出来たならばそれに越したことはないのかもしれないが、やはりそれでは映画を観るという行為の価値が薄れてしまうようにも思う。
一つの作品に対して、「面白い」か「つまらない」か、それぞれの反応が等しく存在することが許されることこそが、映画というものの醍醐味だろう。
とまあ、「クソ映画だ!」と断言しつつも、無意識的に各シーンを思い返もしている。
まったくもって変な映画である。
アタマの悪い映画ファンに愛されるわけだ。と、口角が上がる。