14.《ネタバレ》 確かに、アート系映画というよりは映画系アート、映像である以上に静止画としての美的価値の方をより評価するべき作品にも思われる。要所要所の画を引き延ばしてプリントして、美術館に飾って展覧会を開く(音楽は場面場面でのそれを流しとくとして)方が、更にじっくりと画の美しさに浸れて好いかも知れない。 個人的にはやはり、肌を塗った人物のシーンのあまりの美しさ・非実在感が衝撃的だった。この古びた映像の質感であーまで幻想的にやられると、本当に中世の古い美術品が現代に蘇って動いている様にしか思われないというか。映像で観流してしまうのがあまりにも勿体無いホドにひとつひとつの画の中に盛り込まれる種々の「こだわり」も、しばしば巻き戻して観直してやっと十分満足できるくらいに完成度が高かった。 映画館で一回観て見事に別世界に行けたのだけど、ちょっと消化不良だったのでDVDで再見してようやっと楽しみ切れた、という感じ。トリップしたければ映画館での鑑賞がオススメだが、消化不良になるのが嫌ならDVDで観るしかない(やはり、美術展形式でやって貰って好きな様に観るのが好さそうですね)。 【Yuki2Invy】さん [DVD(字幕)] 8点(2020-11-05 21:39:47) |
13.とりわけ白い布に、赤いざくろの果汁が滲み広がるファーストシーンが鮮烈!。そのデサイン性と色彩からくる美術感覚が斬新。サヤト・ノヴァの生きた、古式アルメニアの伝統衣装を初め、絨毯や壺など、どれも時代性を忠実に反映・内包しながらも、抽象的表現の能舞台劇のように、演技の様式化がひとつの特徴。特筆すべくは女優、ソフィコ・チアウレリその人。イコンを思わせる顔の造形、特徴的な眉の形から、この映画の中で彼女が男役を含め、複数の役で多義的に演じ表現しているのが判る。 舞台劇を想起するものに、明確な正面性がある、例えそれが横向きであっても。常に一貫して、画面構成における形と配置を重視。詩人の生涯に沿ったストーリー展開は、抽象的省略表現のため、表出された全てを理解するのは難しいが、視覚的に、感性的にそれを感受すればいい。雨に濡れた図書館の書籍、水の排出作業から屋根での天日干し、その並べた本の配置すらデザイン的で美しいし、染色作業に伴う色の演出も目を惹く。 こうした独自性にとむ映像表現に、少なからぬ影響を受けた映画に『落下の王国』がある。パターン化された形象と色使いの類似、少し現実離れした鮮やかな彩度高めの発色。あまりの美さに思わず目を奪われるが、対して、本作の色表現は、日常の現実世界から切り取った実在の色、故に幾分彩度低め、代わり同じ赤でも多種多様な赤が蠢く感じ、様々な色と形が織りなす未知なる世界。特異な映像美に被さる音と音楽の響きがとても神秘的。 【DADA】さん [DVD(字幕)] 9点(2017-01-18 19:34:37) |
12.《ネタバレ》 サントリーローヤルのCM(ランボー編)を思い出した、あ、こっちが先か。なんやようわからんがすごいでこれ。 【la_spagna】さん [映画館(字幕)] 9点(2014-09-25 00:42:37) |
★11.《ネタバレ》 音楽&伝記もので面白い映画を探している人に是非ともオススメな作品であり、加えてアンドレイ・タルコフスキー好きにはもっとオススメしたい作品。
タルコフスキーの盟友であるセルゲイ・パラジャーノフが送る不思議な音楽伝記映画。
アルメニア生まれの詩人サヤト・ノヴァの生涯を独特の映像世界で描いていく。 タルコフスキーのような映像の美しさ、狂気、幻想的な空間。 ノヴァの恋人からミューズや天使と複数の演技をこなすソフィコ・チアウレリの見事な演技。
普通、前衛的な映画はストーリーが無いので難解で取っ付き難い。 だが、この物語はノヴァの生涯に渡って繰り返される苦悩が強烈な映像によって綴られているのだ。 いかにノヴァが苦しみもがいているのかを、少しでも眼で感じられるように。 もしかしたら、言葉では現せないほどの苦悩とノヴァは戦ったのかも知れない。 物語で流される柘榴(ざくろ)の“鮮血”は、彼が血を振り絞るほどの苦悩を繰り返したという事なのだろうか。 「我が生と魂は苦悩の中にある・・・」のセリフと共に。
生涯に渡って渇き、潤いと安らぎを求めた詩人の数奇な物語。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-05-14 17:27:54) |
10.私のノートには文章の合間にいろいろ図が描きこまれていて、言葉だけで記録をとるのが難しい映画だったのが分かる。階段の図に矢印が二つ(上っていくのと通過するのと)描きこまれてたり。壁画のタッチ、黒から白へ変わる、ということも何度も繰り返し書かれている。びしょ濡れの本、枠を持って歩く人たち、ろうそくの原に倒れている老いた主人公、なんてイメージが延々と綴られている。おそらく伝統に根ざしたイメージなんだろう。仕種や表情なんかもそうで、一人よがりになっていなかった。人形劇を見ている清潔感がある。やぎ、ロバ、鶏、羊、といった家畜の匂いも、頭だけでこしらえた宇宙じゃなくしている。もちろん伝統は格闘すべき対象であるべきなんだけど、差し迫った敵に対するときに団結する土台にもなるもので、グルジアの一般民衆がこの映画をどういうふうに受け止めたのか知りたい。黒いものが白くなっていくって、浄化のイメージでいいのかな。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-09-13 09:46:05) |
9.色彩と構図だけで勝負したら、この映画の右に出る作品はないだろう。 台詞を排し、時折り入る語りも音声がしぼられており、色彩と構図をひたすら強調した演出も、さりげなく巧みである。 ソフィコ・チアウレリの美しさも鮮烈。 特に、白装束・白塗りの彼女は、神秘的なまでの美しさとオーラを放っている。 目じりが印象的な女優で、もっと沢山の作品で彼女の姿を拝みたかったものだ。 強いて苦言を呈すれば、映像的な美しさと物語としての面白さが両立していないところ。 だがこれは、究極的に色彩と構図に焦点をしぼった結果だとも言える。 それだけ、絵画的美しさに特化した、孤高の作品だった。 【にじばぶ】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-06-27 00:35:05) |
8.美しすぎる。目が眩む。 セルゲイ・パラジャーノフという人間の頭の中はどうなっているのだろうか。 正直、「映画」として見たら超駄作。様々な所にも書かれているが、正に「動く絵画」としか言いようがない。 この映画に点数をつけるとすれば0点か10点。どちらかしかないと思う。 その基準は「映画としてみられるか」ということ。 自分はそんなにはっきり分けられるだけの自信はない。故の9点。 【せかいのこども】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-12-11 17:54:47) |
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7.セルゲイ・パラジャーノフ監督、噂には聞いていましたがまさかこれほどとは。圧倒的な映像美と音の融合、ストーリーなど気にしなくてもそれだけで十分。あくの強い都内のヴィンテージorアンティークショップなどで流れていそうな作品。どのシーンを見てもそれぞれが1枚の宗教絵画になるような。いったいこの監督の頭の中はどうなってるんでしょう。 【THEすうぃんぎん】さん [DVD(字幕)] 9点(2008-07-21 17:27:04) |
6.《ネタバレ》 なぜこの作品がこんなにも平均点が高いのでしょうか。 僕にはとても難しくて全く内容が理解できませんでした。 パッケージを見てアニメーション作品だと思ったら全然違った。 僕はもっとメルヘンチックでシュールなおとぎ話で少女の出てくるような作品を期待していたのだが。 映像が美しくて、雰囲気も好きです。 そしてその崇高さ。世俗作品とは距離を感じます。 その過剰なまでの宗教的雰囲気がゆえに「ホドロフスキー」を連想してしまいました。 全然違いますが。。。 長さもちょうどいいと思います。 【ゴシックヘッド】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-12-04 03:04:48) |
5.まさに芸術の原動力は抑圧と衝動。思想の抑圧は反動の力を生み、精彩に乏しい環境は色彩に対する希求を生む。どのシーンを切り取っても一枚の絵画として鑑賞に堪え得るだけの芸術性を備えているのは凄い。象徴的な一枚画の羅列であり、もはや通常の映画としての評価は出来ない。 ただ、普通の娯楽映画の鑑賞法で見るべき作品ではないのは当然としても、世間的に評価されているように「色彩の洪水」だとか、「視覚芸術の最高峰」などと大絶賛されているほどに超絶的な傑作とは思えなかったのも事実。今まで見た事も無いような凄まじいまでの色彩表現を期待していたので、むしろ抑え気味の表現内容だったのは、期待し過ぎた事を差し引いてもかなり拍子抜けさせられた。少なくとも「色彩の洪水」はオーバー。 「独特な画面構成」と言われているものも、元々この作品のコンセプトとしてカメラワークという概念を必要としていないからであり、一枚画の写真撮影のように登場人物たちがカメラの方を向いてじっとしているというパターンが多いので、はっきり言って見ていて退屈だった。 「宗教的な装飾美」が基本としてあり、背景色は抑え気味にし、象徴的な意味合いを持たせたい対象の色彩や動きを強調するというパターンが多いので印象的な画として残りやすいのだろう。もちろん時代や国柄を考えれば、他にあまり影響を受けるものが無い環境でありながら、これだけの内的世界を鮮烈な映像として構築したというのは間違い無く稀有な感性だとは思うが、色々な意味で腐るほどの多種多様な演出と表現に満ち満ちた日本の漫画やアニメを見慣れた目からすると、やはり視覚的なデザインや画面構成、ストーリー展開の衝撃という点では、どうしても物足りなさを感じるというのが偽らざる感想(私は大真面目に日本の漫画やアニメはあらゆる芸術のエッセンスを取り込んだ「総合芸術」だと思っているので)。 サヤト・ノヴァという詩人の生涯を映像化したといっても、この人の詩を読んだ事も無ければ、どういう人物かも知らないから感情移入もしにくいし、彼の詩的世界をどれだけ的確に映像化しているのかも判断し兼ねる。 まあ、何か表現に携わる人間なら一度は見ておいて損の無い作品である事は間違い無いが、一般人に薦められるような作品とは言い難い。何事も期待し過ぎてはいけないという哲学を込めて、この点数で。 【FSS】さん [DVD(字幕)] 6点(2007-01-01 02:41:55) |
4.抽象的すぎる作風が旧ソ連では許されず、当局による20年以上の迫害、投獄を繰り返し、生涯でわずか4作品(長編)しか残せなかった伝説の巨匠、セルゲイ・パラジャーノフの代表作。投獄された際に、ヴィスコンティ、フェリーニ、トリュフォー、ゴダールといったヨーロッパ中の映画人たちの抗議運動を起こさせたことからもその偉大な映画人ぶりがうかがえる。この作品は8章からなる詩を映像化したものです。大抵の映画は物語を映像で語るもの ( 昨今の娯楽作では映像で語っているとは言い難いものが多々ありますので物語を映像にのせていると言ったほうがいいかも。あとゴダールは映像表現の一手段としてしか物語が存在しないところがあるのでこの人も例外 ) なので詩の映像化というだけでかなり異質な作品ということになると思います。かといってストーリーが無いわけではないですが、この作品にとってはさして重要なものでもありません。詩の世界をいかに映像で表わすかが重要であって、見事にその前衛的思想を具現化し得た作品だと思います。当然ながら物語を映像で語る映画ではないので既存の映画文法から逸脱しているところがあります。よって狭い価値観で見るとこの作品の良さがわかりにくいかもしれません。何が良いのかは私の乏しいボキャブラリーでは説明できません。ひとつ言えることは、他には無い美しさが在るということ。そんなことしか言えない自分が疎ましい。 【R&A】さん 8点(2004-12-22 12:40:57) (良:2票) |
3.これは衝撃的だった・・。見たこともない映画。血とザクロでできた紙しばいみたい。“めくるめく”とはまさにこのこと。その色と音と、幻惑的な動きのリズムに圧倒される。でも、あのころシネヴィヴァンでなんども予告編を見たけど、じつは本編以上に、予告編のほうが衝撃だったし、魅力的でした・・。(~~ゞ 【まいか】さん 10点(2004-03-16 21:33:43) |
2.確かに色の使い方がやばい。ストーリー性がない分、映像が際立ちまくっている。詩人の内的世界の美しすぎる映像化に成功したセルゲイ・パラジャーノフに敬意を表したい。とてつもなく高いインスピレーション、私達、凡人には到底及ばない世界だと感じた。うーん、深い、深すぎる! 【たましろ】さん 9点(2004-02-03 14:50:46) |
1.鮮烈な色、色、色、、、、、 ともかく爆裂した色彩です。さまざまなシーンが記憶に残っていますが、どれもストーリーというよりもイメージの記憶として脳裏に焼きついています。イスラムの影響が濃い音楽も凄い。「めくるめく」という表現がこれほど似つかわしい作品は他に思いつきません。これを観た当時ソ連の検閲官はいったいどう反応したのでしょうか。ともかくあのハイな気分が忘れられず、もう一度観たいのですが、どうすればよいものやら。。。 【バッテリ】さん 10点(2004-01-16 17:23:24) |