11.《ネタバレ》 今、戦前の映画に興味をもって観ているが、 小津安二郎が国策映画を撮ったから、あのような 独特の小津映画ができたのかなと思っていたが、その仮説が 見事に間違いと気づかされた一本。 国策映画の創られてた頃のこの作品に もう小津安二郎は自分のスタイルを完成させていた。 この映画がそれで、東京物語を思わせるようなストーリー。 でもちょっと後半のあのお兄さんの説教は 勝手だなと思わせる。 説教を垂れる映画は多いが、その大半はうなづけるもの。 勝手な理屈の説教を垂れる映画も珍しい。 小津さんはでもそんな勝手な人間を愛らしく描く。 凄いです。 【トント】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2019-10-16 11:13:21) |
★10.《ネタバレ》 サイレント時代は漲る若さで撮った「大人の繪本 生まれてはみたけれど」、 そしてトーキーにおける小津の最高傑作は、個人的に「戸田家の兄妹」あたりだと思う。 小津の作品と言うと説明的で説教臭い話が多く、俺のような人間にはまず肌が合わないタイプ。 そんな俺でもこの「戸田家の兄妹」は良い作品だと思ったよ。メッチャ良い! 「東京物語」ほどかったるくないし、何より家族が崩壊していく様子をストレートに描写していくところに惹かれる。 突然の死や老いた家族のたらい回しなんか「東京物語」より残酷さを感じた。 戦前の映画で家制度の崩壊をここまで辛辣に描けたのは、家族を何十回と描いていく小津だからこそ出せた答えだ。 葬式の後に遅れてやって来た昌二郎は、正に家族への怒りをストレートにぶつける代弁者。江戸っ子人情を噴出させる小津のな。 「食うや食わずの人間だって、親と子の関係はもっと暖かいもの。どれもこれも一つの腹から生まれながらこの有様はなんだ!」 こ の 有 様 は な ん だ ! ! 「人が何と言おうとそんなこと構いやしないよ、対面だとか体裁だとか、世間体とか、そんなことじゃ何にも出来やしないよ。」 何故だろう・・・説教臭い匂いが無い。だって誰もが思う怒りがここに集約されているもの。 良い意味で小津の「家族」描写が完成された作品。唐突なラストもまた意味深だったりするのかも。 斎藤達雄はこれと「宗方姉妹」を最後に小津作品に出なくなってしまった。もう少し見たかったよ・・・。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-01-08 10:16:38) |
9.東京物語と似た雰囲気だけど、こちらの映画の方が先、なんと驚き戦前(戦中)の作である。家族ではなく家柄が重んじられ、子どもは親に逆らえず、長男次男と年功序列が絶対の時代ではなかったかと思う。それだけにこの映画は奇異に見えるのと同時に型破りである。今の私ですら次男の考えは正論だけど生意気にも思える。家より家族という映画のねらいはよくわかるけど・・・。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 6点(2013-08-25 06:24:24) |
8.《ネタバレ》 前半は面白くなかったが、しり上がりに良くなった。 特に、ラスト付近の佐分利信が軽薄な兄妹たちを豪快に追っ払うシーン。 そして、熱心に母や妹を説得し、中国の天津に希望を持って誘うシーン。 これらのシーンはとても良かった。 でもこういう家族内のいざこざや女性同士の問答を内容とする作品であれば、成瀬巳喜男監督なら、もっと上手く撮ったのではないか。 小津監督は、カラっとしたコメディタッチなものを撮らせると最高に上手い監督だし。 成瀬監督は沢山の作品を撮っているから、本作の様なテーマと似た作品を既に撮っているかもしれないけど、本作の成瀬バージョンを観てみたい気がする。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-05 00:35:14) |
7.佐分利信は間に合わない。集合写真、父の死に目、一周忌、ことごとく遅れて登場する、規格外の服で。世間体に背を向けるかのようなアウトローといえば言い過ぎだが、そんな振る舞いが、バッサリと身内を、世間を断罪する。そんな必殺シリーズのような構造ですが、この作品は手の動きの細やかさが楽しい。高峰三枝子がエプロンを叩きつけた後にそれを撫でる、エプロンの裾をつかんで人を迎える、糸をお手玉のようにして遊ぶ、孫がおばあちゃんの手を取る、ライターや扇子を触りながら話をする男たち、縫い物に勤しむ女たち。手は口ほどに物を言う。 【彦馬】さん [DVD(邦画)] 9点(2006-12-12 17:53:08) |
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6.《ネタバレ》 「東京物語」に通じる家族のあり方、家族制度への問いかけ、小津監督らしい人間を見る眼の優しさと厳しさとの両方が上手く描かれていて感心しました。最初のうちはかなり腹の立つ内容ではあるものの、佐分利信扮する次男が帰ってきた辺りから話は段々と面白味を増し、そして、何と言ってもあの法事の席でのやりとり、母と妹が冷たくされている事に対しての怒りを見事なまでに表現し、兄やその配偶者などを片っ端から追い払うところなど気分爽快!小津監督は最後に見事な場面を持って来て見せた。流石です。また一つ小津監督の映画で良い作品を観た。そんな気が致します。 【青観】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2006-02-19 11:50:17) (良:1票) |
5.ひさしぶりに小津作品が観たくなり、そこで手に取ったのがこの作品。『東京物語』で心から感動した僕は、家族の崩壊を題材にした小津作品が他にもあると知り、そこで拝見したのがこれ。序盤では、なんら家族に異常はなく、ストーリーはたんたんと穏やかに進んで行く。しかし、後半に入ると遂に崩壊が始まり、理不尽で、無責任な子供達の行動の数々に、怒りを感じずにはいられなかった。壁に丸い拳大の穴を開けてしまいそうになった。そして終盤では『東京物語』では無かった、無責任な兄妹達の行動に対し、次男が厳しく説教する場面があるが、あれは非常に爽快だった。良くぞ言ってくれました!と歓喜の拍手を贈りたくなるほど感激しました。腹が立つ事もありましたが、終って見ればとても晴れがましい気持ちで胸が一杯です。この小津作品もとても素晴らしい内容の、素晴らしい作品でした。 【ボビー】さん 9点(2005-01-07 19:30:02) (良:1票) |
4.「東京物語」の無常感は些か難しくもあり、少々年を重ね、人生経験を積んでから出ないと十分理解しがたいと思いますが、「戸田家の兄妹」は分かり易く、各々の立場への共感、ラストの爽快感など楽しみやすいです。若い笠智衆や佐分利信、高峰三枝子など必見、ただ音声が非常に悪いのが難点。 【亜流派 十五郎】さん 7点(2004-11-15 17:55:49) |
3.『東京物語』につながる、家族の崩壊をテーマにした傑作です。『東京物語』では、崩壊を受容していく老夫婦を主人公に据えていますが、本作では若き次男を中心に据え、崩壊を徹底的に否定する視点をラストに盛り込んでいます。小津監督は『東京物語』では老夫婦に、本作では若き次男に自己を投影させていると考えると、年月を経て、同じテーマを別の視点で扱った2作品の比較はとても興味深いものがあります。『東京物語』のレビューで「年を重ねないとわからない映画」という思いが付きまとう、と書きましたが、こちらはまさに胸のすくような痛快な作品になっています。『東京物語』では老夫婦が「まあ、わしらええほうじゃよ」と言うのに対し、本作では、満州帰りの次男が「食うや食わずの人間だって、親と子の関係はもっと暖かいもの。どれもこれも一つの腹から生まれながらこの有様はなんだ!」と、強烈にまくしたてます。家族の崩壊という必然を否定する要素を強調したことで、『東京物語』には存在した、死生観や無常観といったものは削ぎ落とされてはいますが、小津作品の中では一番のお気に入り映画です。『東京物語』の息子や長女の態度はちょっと我慢成らぬぞ、という方はこちらですっきりして下さい。 【スロウボート】さん 9点(2004-01-12 20:49:35) (良:1票) |
2.小津作品初めて見た。とてもおもしろかった。なんか火垂るの墓のおばちゃんを思い出しました。あのしゃべりかたできっついなぁと。でも実はそんな不幸ってわけでもないんですけど、なんかすごい不幸そうに見える。一周忌のところのシーンかっこいいです。 【バカ王子】さん 9点(2004-01-05 22:07:15) |
1.「マトリックス・レボリューションズ」を観て「なんだい。こんな結末あるもんかい」(←「麦秋」の村瀬禅の声で読んでね)と思った若者諸君は、是非この映画でスカッとしていただきたい。胸がすく、痛快、そんな気分を味わいたいなら、これだ。「東京物語」の前身だが、ずいぶんメロドラマティックで楽しい小津です。佐分利信がハリー・キャラハンなみにかっこいいっす。今日というか昨日は小津の誕生日&命日なので、躊躇なく10点! 【まぶぜたろう】さん 10点(2003-12-13 00:33:51) |