13.《ネタバレ》 ハイボよりも共犯のペドロの方がよっぽど酷い目に遭っている。 ハイボは最後撃たれて終わりで済んだが、ペドロは散々ハイボに苦しまされた上に殺された。 なんだかバランスが悪い。 最初は被害者だと思われた盲目の大道芸人が実はかなりイヤらしい人間だったりとか、最初は子どもが悪いように描いておいて実はその子どもたちに愛情を与えなかった親も悪いとか、そもそも貧困が元凶だとか、何かを一方的に悪とはせず物事を多面的に描き出しているのが興味深い。 【にじばぶ】さん [インターネット(字幕)] 6点(2024-10-11 20:53:34) |
12.盲目の老人の人物造形がすごいですね、障害者でありながらとにかく傲慢なクズという描き方でインパクトがあります。ただそれは結局見世物的な魅力であってそれが現実の社会へ何らかのメッセージを伝えるものになっているとは思えません。少女のエロティックな見せ方、障害者や動物への暴力シーン等も当時は斬新だったのでしょうが、時代を下ればシリアスな社会派映画だけでなく低俗なホラー映画でも頻繁に採用されるような描写でしかないです。物語性が希薄で誰が主人公かもよくわからない構成ですが、かと言って既にイタリアン・ネオレアリズモが存在したことを考えると当時の劇映画から大きく逸脱したような内容でもありません。ルイス・ブニュエル監督らしいシュールレアリスティックな夢のシーンはこの映画でも見られますが、結局そういうシーンが一番魅力的であり逆にこういうリアリズムを基調とした社会派映画のような作品はあまり向いていないことを強調しているとすら感じました。 |
11.《ネタバレ》 弱肉強食のようなメキシコ貧民街が生々しい。不良少年が障害者を何の容赦もなく襲うのが衝撃的。 クソガキ代表のようなハイボはどうしようもないが、子分扱いのペドロは同情の余地がある。盗難ナイフの罪をペドロに擦りつけようとしたハイボの策にはまり、必死で無実を訴えるペドロの言葉を母はまったく信じようとしない。子を顧みない母親の愛を健気に求め続けたペドロが哀れ。 ただ、ろくでもない大人達ばかりではなく、ペドロをちゃんと人として扱い、ペドロに大金を預けてお使いを頼んだ感化院の院長のような人もいた。その慈悲と信頼に応えようとしたペドロを、またもハイボが踏みにじる。まさにクズ中のクズで、殺意が湧くほど。 こんな疫病神のようなハイボも、社会の犠牲者と言えるかどうか。大きな要因ではあるんだけど、恵まれない生い立ちや劣悪な環境の中でも真面目に生きている者はいるので。 ブニュエル監督の描く、最後まで救いのない世界。暗い気持ちになってしまうが、一見の価値はある。 【飛鳥】さん [DVD(字幕)] 7点(2017-03-12 08:20:40) (良:1票) |
10.《ネタバレ》 なんかすごいなーー、白黒のソリッドな映像が結構えげつない内容とマッチしていますねー。ちょっとあんまり見慣れない雰囲気なので、なにかとても新鮮でゴザイマシタ 【Kaname】さん [DVD(字幕)] 6点(2016-04-23 19:39:42) |
9.《ネタバレ》 社会の底辺で、愛情を閉ざされた子供たちが、野良犬のように撃ち殺され、あるいはごみ捨て場に捨てられ、救いのないまま孤独に死んでゆく。 その死がそのまま社会の貧困を照らし出している。現代にも通用する、非常に厳しい映画。紛れもなくブニュエルの最高傑作のひとつ。 【kinks】さん [映画館(字幕)] 10点(2015-07-30 20:09:44) (良:1票) |
★8.《ネタバレ》 ルイス・ブニュエル最高傑作の一つ。 ブニュエルといえば何を考えているのかわからない変な映画(それが面白いのだけど)が多いが、本作は明確な社会的テーマを生々しく捉えた作品だ。 リズムやストーリーの密度は確かに凄いし面白い。たった1時間15分とは思えないほど話が詰まっている。 ブニュエル映画特有の音、悪夢、女への欲情もそろい踏み。 この「忘れられた人々」はメキシコの歴史から「忘れられた」名も無き人々の生き様を描いていく暗いストーリーだそうだ。 生活のために必死に金を稼ぐ少年、それをことあるごとに邪魔する不良グループ。 特にそこのガキ大将のハイボ。 盲目の楽士や足のない紳士から金を巻き上げ、さらには少女や子持ちの母親にまで手を出そうと(劇中ではちょっかいを出す程度)する筋金入りのクズだ。 余りにクズすぎるので妙な愛着すら出てきてしまう恐るべきクズ野郎である。「時計じかけのオレンジ」よりも愛すべきド畜生と言える(きっと褒めてる)。 ハイボの妨害に負けるものかと孤独な戦いを続ける少年。 カメラに向って卵を投げつけるほど苛立ちはつのる。 1対1のケンカに挑む少年、落ちたナイフでハイボを敗走させた。それにしても引き際を知るいじめっ子だ。 障害者への差別、躊躇なく動物を殺すシーンなど倫理に訴えかけるような生々しい描写、ラストの後味の悪さも手伝って賛否が分かれる作品だろう。 それでも見て損はしない、ブニュエルの傑作として歴史に残る作品だと俺は思う。他人は忘れても、観客は一生忘れない。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-01-25 13:40:49) (良:1票) |
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7.《ネタバレ》 メキシコスラムのルポのように始まり、盲人から金を奪い、いざりの車を坂道から滑り落とし、ほんとどうしようもない不良連中。なんかカタワに対する微妙な不快感を目覚めさせるようなところがあって、見てて実にいやーな感じになる。不良のリーダーハイボによるフリアン殺し、真っ当に働いているところを呼び出して、後ろから殴って殺しちゃう。罪を半分着せられるペドロ、さあここらへんから残酷な歯車が回り出す。ペドロの孤独が浮き上がってくる。スローモーションの夢が素晴らしい。舞い散る鶏の羽根。肉の塊は食料だけでなく母の愛でもあろう。ペドロは母に喜んでもらいたく働き出すが、母は「どうせ」と思っている。そしてここぞと言うときにやってくるハイボ。母の手で感化院に送られてしまうペドロ。院長に信頼され、この映画で始めて明るく町を歩くペドロ、しかしまたハイボが来る。ここらへんの、救いを用意したようでいて、それを次々に取り上げていく残酷ったらない。イタリアのネオ・リアリズモのようでいて、あの「最後には心の芯が温まる視線」がない。ただ救いのない現実を記録していく。ペドロが見ただろう現実のやりきれなさを再現することに集中する。もちろんそこにはペドロだけでなく、あのどうしようもないと思われたハイボも含まれるだろう。彼の最期の、路上でゆっくり首を振る動作が忘れられない。それでも忘れられていく彼らたち。映画とはこういう仕事をしなければいけない、としみじみ思わされた作品。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-08-25 09:26:21) (良:1票) |
6.《ネタバレ》 オリヴァー・ストーンのようにおもくそ社会を皮肉った、社会が将来に全く希望が持たせようとしないストーリーは衝撃的。貧困層を取り巻く現実とそこに住む人たちの状況っていうのをリアルさを追求したルイス・ブニュエルが見事に表現できてるし、子供たちが主演なのにこの出来栄えは凄い。モノクロの映像がより悲惨さを表してて人間の無力さをなんか感じてしまうぐらいだからやるせなさが半端ない。メキシコ映画だからな~、とちょっと甘くかかってみたらエライ事になっちゃいました(笑) |
5.《ネタバレ》 タイトルを自動翻訳にかけると「The Forgotten」と出た。要するに「忘れられた人々」というのは原題の直訳のようです。 最初は、社会水準の低さの犠牲者として、子供の辛さが描かれた映画なのかと思いながら観ていたのですが、観終わってみて「忘れられた子供たち」ではなく、やはり「~人々」でいいんだなと実感しました。 子供に対しての愛情がない親というのは初めて見ましたが、普通はどんなに辛く当たっても根底に存在する愛情が見えるおかげで温かみが感じられる事が多い中、とにかくこの映画におけるブニュエルの愛情のなさは強烈で、こういったところからも「子供たち」としてではなく、あくまで「人々」の中の一個人に過ぎないという表現をしているものとして捉えるべきなのでしょう。 この映画を語る上で欠かせないのが、ジャイボという感化院から脱走してきたという少年の存在だと思いますが、最初は貧しい生活に耐え切れずに盗みをしてしまって捕まったのだろうとか彼の背景を想像して情をもって見ていましたが、ペドロの母親と必要以上に仲良くなってしまったりと既に大人な一面を見せていたりして、映画の終盤でペドロに対して過度に干渉してくる頃になるとこっちまで情が薄れてしまうような気がしてきます。 エンディングを始めストーリーの部分部分にも一筋の光も見出す事が出来ず、イタリアのネオリアリズモをも上回るほどの冷徹な眼差しでストーリーが展開されるのは、都心部で普通に暮らしている人からはそれまでは目を向けられる事もなかった人々の過酷で貧しい生活振りを世の中に知らしめようというブニュエルの強い意思の表れであり、ペドロが感化院で仕事中に卵をこっちに向かって投げつけるのは、当時お金を払ってこの映画を見ている人たちに対して自分たちの方に気を向けて欲しいということかもしれませんね。 蛇足になりますが、登場人物は皆素人だと思われますが、全員も全員、演技の素晴らしさは目を見張るものがありました。 【もっつぁれら】さん [映画館(字幕)] 7点(2012-01-09 04:07:03) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 まったくもって、救いのない映画。見た後、心が重たくなった。あまりに悲惨なラストシーンゆえかも知れないが・・・。主に、2人の少年にスポットが当てられているのだが、どちらも「彼の人生は、一体、何だったのだろうか?」という虚無感に襲われる。生まれてきた意味は? 誰にも(親にさえ)愛されず、社会からも排斥され、心安らげる場所もない。挙句、人のぬくもりを知ることなく絶命。「人間、生きているだけで意味がある」なんていう安っぽい自己啓発本など、この映画の前に、喝破されるだろう。50年前のメキシコのお話じゃなくて、いつの時代にもどの世界にもある現実なのだと思う。「だから何だ?」と言われそうだが、実際、だからと言って、これで何かが自分の中で変わるわけじゃない。ただ、ほんの少し心を痛め、そして数日、いやそれどころか数時間もすれば、またそんなことには無頓着な自分がいるんだろう。この世も、人生も、無常であることだけが真理だと、改めて実感。 【すねこすり】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-09-09 16:47:44) |
3.メキシコの貧民街に住む不良少年たちが盲目の大道芸人を襲うその残酷性に衝撃を受け、残酷の中に微かだけど確実に存在する光を何度も垣間見せては、大人たちが叩き潰すという悪循環を最後まで見せつける。「最後まで」というのが重要で、物語性を出しすぎずに現実を冷徹に描いたところに、並々ならぬメッセージ性を感じる。貧困がもたらす悪循環を強調しており、ブニュエルが肌で感じたこの国の抱える問題に真向から取組んだ作品と言える。ヨーロッパ時代のブニュエルの作品からは想像できないほどのストレートな訴えをびんびん感じます。一方で、夢のシーンに代表される幻想的かつ本質をえぐりだすような映像は、その後のブニュエルを彷彿させる。ブニュエル流リアリズムはどこかが違う。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-08-25 19:02:33) |
2.《ネタバレ》 ラストの女の子の言動にはゾッとしました。こういうのがあちらの貧困のリアルさなのかも知れない。 名高い「アンダルシアの犬」と併映で見ましたがこちらの方がよりインパクト強かったです。 【番茶】さん 7点(2004-03-09 20:58:55) |
1.《ネタバレ》 フランコ独裁下のスペインを離れ、遠くメキシコで相当数の映画を撮ったブニュエルの異様な迫力に満ちた一本。巷間、メキシコ時代の彼にとってベストワークとして名高い。比較的ストーリーが晦渋でなくストレートでとっつきやすいからだろう。とは言え、イタリアのネオ・リアリスモを思わせる、いや遥かに酷薄無残で容赦の無い強烈なタッチは脳裏に焼き付くインパクトではあるが個人的には好きにはなれないタイプのモノ。特にペドロの悲惨な死に様は思わず目をそむけてしまう。ガブリエル・フィゲロアによるカメラワークも悪夢のイメージを増幅させて見事だが、矢張り好感は持てない。娯楽を王道と考える私としては、申し訳ないが2点マイナスさせて頂く。悪しからず! 【へちょちょ】さん 8点(2004-01-16 01:32:12) |