59.《ネタバレ》 サーカス映画の傑作と言うとフェデリコ・フェリーニの「道化師」や「道」、
ボリス・バルネットの「レスラーと道化師」、
マックス・オフュルスの「歴史は女で作られる」、
トッド・ブラウニングの「知られぬ人」「フリークス」、
アルベール・ラモリスの「フィフィ大空をゆく」、
エドワード・バゼルの「マルクス兄弟-珍サーカス-」、
ジョージ・マーシャルの「あきれたサーカス」、
D・W・グャィスの「曲馬団のサリー」、
ジョージ・パルの「ラオ博士の7つの顔」、とあるが、個人的な最高傑作はチャップリンの「サーカス」を挙げたい。
爆走が起こす破壊の連鎖で笑わせてくれるのはキートンやローレル&ハーディだけにあらず。
恐らくチャップリン映画で最も走ったりアクションに挑んだ作品が「サーカス」じゃなかろうか。
警察に追われるのはいつも通りだけど、今回の大目玉はクライマックスの綱渡り!
クライマックスまで次々とハプニングを巻き起こす破壊力。撮影裏でもフィルムが現像ミスで4週間分も使えなくなるわ、二人目の妻リタ・グレイとの騒動でヘトヘトになるわ、「どうしてこんな事になってしまったんだ」という、そんな追い詰められたチャップリンの精神が反映されているかのようなシーンである。
これ吹き替え無しだぜ?しかも例の猿軍団は「キートンのカメラマン」にも出演していた連中だ。
キートンの「カメラマン」では強い意思を持って主人公を助け、チャップリンの「サーカス」では無意識に主人公を殺しにかかる。
ライオンの檻に入ってしまう場面はキートンの「恋愛三代記」への回答だろうか。
「君が着ぐるみなら、私は本物のライオンだ」的な。流石に首を折って撮影を続行(キートンの「探偵学入門」)はマネできなかったか。
アレをマネ出来る(する大馬鹿)野郎はジャッキー・チェン(「プロジェクトA」)だけでええわ!異能生存体かおのれらは。
キートンやハロルド・ロイドは体を張って笑いを生み、チャップリンは如何なる苦労も顔に出さずニッコリ笑って見せる。
喜劇王と呼ばれた男達に共通する事は“自分で動かなければ何も始まらない”という事だ。
特典映像で携帯?に話しかける女性は何者なのだろうか。謎だ。