20.《ネタバレ》 これは本当にすごい映画です。
スリラー映画の定番演出に「何かあると思わせて一回スカした後でヤル」ってのがあります。
「あそこ何かいるんじゃね?やばいんじゃね?」
→「おそるおそる覗いてみる」
→「な~んだ猫じゃん」
→「から~の、本命はこっちでした。グシャドビュ!」
みたいな奴です。
スカす展開を何回か重ねて客の緊張感を煽ってから本番に行く場合もありますが、とにかくスリラーの定番演出です。
しかしこの映画はその定番を一ひねりしてきます。
映画のあいだ、終始ずっとただただスカし続けるのです。
ヒロインのカミーラベルは電話の恐怖に怯えて一人であたふするのですが、ほんとうにただそれだけで映画終盤まで何も起きないのです。
何かありそうな雰囲気の中、ただカミーラベルがうろたえて走り回るだけの映画なのです。
大山鳴動ネズミ一匹状態がずっと続くわけで、さすがにいくらなんでも飽きてしまいます。
お約束演出の大事さというものを反面教師として教えてくれているわけですが、さてこうなると観客に残された唯一の楽しみは、彼女のちょっとエロいボディラインを眺める事だけになってしまいます。だって画面にそれしか映ってないし!
いやここはポジティブに捉えてみましょう。
カミーラベルのちょっとエロいボディラインをゆっくり堪能できるようにあえてストーリーでは何も起きないようになってるのです、多分。
おかげでしょーもないストーリーに惑わされる事なく私達はカミーラベルの魅惑のボディラインをじっくり堪能できちゃうのです。
なんてすごい映画なんでしょう!!
しかし、そんなすごい映画にもさすがに終わりが訪れます。
ラストになってやっとお話が動き、ついに犯人登場!
そしてそこで観客はさらに衝撃の事実に直面するのです!
「…お前誰やねん??」
ガチで誰なのかわかりません。
最後に思わせぶりに犯人の顔がアップになるんですが…だからお前誰なの?
そもそもずっとカミーラベルの一人芝居を延々と見ていただけの観客には、彼女以外の登場人物の記憶はありませんし、そもそもこんな人は出てなかった気がします。
てか急に自分がベビーシッターだった事を思い出したらしく途中までまったく登場しなかった子供2人が急に増えてるし!
脚本家の頭の中は大丈夫なんでしょうか?ちょっと心配になります。
延々と謎の一人芝居を観た後は、意味不明のラスト。
スリラーの新境地を切り開くほんとすごい映画です。
しかし考えてみれば現実の猟奇殺人というのは、行きずりの見知らぬ人に殺されたりするもの。
この映画は忘れがちなその事実を我々に教えてくれるすばらしい映画なのかもしれませんね。