2.マイケル・ベイ監督作でマーク・ウォールバーグとドウェイン・ジョンソン競演と聞けば、善し悪しの前に、一体どれほど“大味”で“大馬鹿”なアクション映画が繰り広げられるのかと身構えることが、真っ当な映画ファンの在り方だろう。
しかし、この映画、「トランスフォーマー」シリーズで顕著なようなおびただしい映像的物量で大仰なエンターテイメントを提供してきた近年のマイケル・ベイ映画とは明らかに毛色が違う。
ボディービルダーに扮した主要キャラクターのビジュアルの通り、「筋肉バカ」についての映画であることは間違いない。
「バカ」であること自体が大罪であると断言したくなるほどの大馬鹿野郎どもが大馬鹿な事件を巻き起こす映画であるが、描き出されるストーリーテリングは、この手のクライムアクション、もしくはクライムコメディの常軌を逸し、暴走的で、シニカルで、ビターだ。
馬鹿と馬鹿と馬鹿が織りなす欲望と狂気、そしてそれに伴う罪と罰。
端から見れば彼らの言動は滑稽で笑えるけれど、その欲望そのものは世界中の誰しもが、表すことはないにしろ、少なくとも心に潜めているものであり、恐怖も感じる。
この馬鹿な話が実話であるということが、その恐怖感に拍車をかける。
筋肉バカ3人を演じた俳優たちがそれぞれ良い。
主演のマーク・ウォールバーグの近年の作品選びには的確な自己評価と抜群のセンスを感じる。
文字通り骨太な筋肉ヒーローを演じることが多い“ロック様”ことドウェイン・ジョンソンの愚か者ぶりも見事だった。
いまやアベンジャーズの一員としてキャプテンの片腕にまで出世を果たしたアンソニー・マッキーの天然バカぶりも笑えなかった。
犯罪実録物としてオリジナリティは際立っている。
実在の麻薬王やギャングスターの自叙伝的な映画は数多あるが、これほど馬鹿げた大犯罪者映画は他にない。
マイケル・ベイ監督作としては極めて異質な快作、いや怪作だ。