23.《ネタバレ》 ドロドロと金&色の欲に塗れる人々が描かれてゆくが、そういった自分の欲望に素直な人間の方が概して世渡りは上手く、その面で潔い人間の方が却って社会的には弱くて頼りない、というのは然もあることであろう。どちらの人々にせよ、特に現代の感覚から言えば本当の意味で「幸福」からは程遠く見える。そこには、率直に「隔世の感」を覚えるのである。 一方で、亡くした夫の面影を見出せば妾の子にも情をかける次姉にせよ、自分の娘が捨てた婿に延々貢いでしまう母親にせよ、これも現代的な感覚からすれば実に人情味・人間味に溢れるというか、そこにはまた古めかしくも愛おしい魅力を感じ取れるのである。もちろん、なんとも一本気で清らかな高峰秀子もとても清々しかった。個人的には呆気無いラストも実はかなり好み。素直に観て良かったと思える古典の良作。 【Yuki2Invy】さん [インターネット(邦画)] 7点(2020-09-04 23:59:51) |
22.《ネタバレ》 高峰秀子がどうしようもない家庭環境でけなげに生きる主人公を好演。 この映画の彼女はすごく清楚で綺麗です。作中いろいろ大変なことがあり、人間不信で不幸なんだけど、応援したくなる。 後半、借家の隣家の良い人そうなお兄さんと知り合い、この先上手くいきそうな予感が感じられホットする。 香川京子がチョイ役で出ているのもうれしい。当時の彼女は、ほんと天使のようにキュートです。 ラスト浦辺のお母さんとけんかするのだが、そこは血のつながった親子で、なんともなかった様に仲直りする様子が微笑ましい。 【とれびやん】さん [インターネット(邦画)] 7点(2020-05-23 17:08:47) |
★21.《ネタバレ》 三女清子がこのゴタゴタ家族の中和剤になっており、なんとか観れたかな。。基本次女の姉は優しいが、気が弱くて頼りないし、後の兄弟は最悪。お母さんは悪い人ではないのだろうけど、全てお父さんが違うなんて子供が可哀想ですよねですよね。なんか話が滑り出したなーてとこで終わっちゃいました。中途半端な感じです。 【SUPISUTA】さん [DVD(字幕)] 5点(2018-06-04 11:53:36) |
20.《ネタバレ》 成瀬巳喜男のやるせないドロドロ全快な傑作「稲妻」。 登場する兄妹は全員父親がバラバラ。 この時点で「(゜д゜)」である。流石成瀬初っ端から残虐だ(褒めてる)。 更には突然落雷が起こるように次々と家族に不幸が訪れる。 拍車をかけるフラストレーション・・・爆発した怒りの「叫び」は雷雨の如く家族を嬲り合う。 ただ稲妻は同時に恵みの雨をもたらす。 暗闇を一瞬でも照らす稲妻は希望の光でもある。 そして嵐で生き残った者には肥沃な大地が待っている。 嵐で荒れた大地を人の手で豊かにしていくように、彼らもまたそれぞれの希望を胸に新しい人生を初めていくのだろう。 清々しい作品だ。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-12-11 04:37:06) |
19.次女の保険金に当然のようにたかり、下卑た男は出入りし、長男は頼りない。末娘高峰は兄のすね毛にさえ嫌悪を感じる、そういう一家のネットリ感を丹念に丹念に描いていく。どうしてそれが不特定多数の客の鑑賞の対象となる映画作品になるのだろう。次姉の死んだ亭主の妾のところに談判にいくエピソード。川や小さな橋のたたずまいが懐かしいということもあるが、この二人の味も素っ気もない会話もいいんだよ。ねちねち反撥し合いながら一つの共同体を作ってしまっている家族というものの、肯定でも否定でもない描写。これの対比として下宿人だった女性がいた。あまり深く立ち入って描かれてはいなかったけど、一人でやっていく厳しさと爽やかさが置かれる。あと下宿先の兄妹の睦まじさ(夜、光が漏れているさま)も、比較としてある。でも彼らは主人公の家族のネットリのリアリティを高めるために、デッサンされただけなのかもしれない。これらを倫理的判断を下さずにただ並置していく。普通の映画だったらちゃんと次女が見つかるところまで責任持つだろうが、成瀬はそんな分かりきったところにこだわらない。作中の言葉を使えば「ずるずるべったり」の、糸を引いてるネバネバを、なぜか不潔感なく描ききった映画ということだ。大人になった高峰秀子の戦後の成瀬作品はまた車掌さんから再スタートし、日本映画の黄金時代を築いていく。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-10-16 09:41:21) |
18.すいません・・私には退屈でした・・・。レビューする資格もないのかもしれませんが、最後まで観たのでレビューさせて頂きます・・・。 【ケンジ】さん [DVD(邦画)] 5点(2012-09-02 20:42:57) |
17.女を描かせたら日本一、複雑な家庭環境で育った末っ子の心情を成瀬監督が巧みに描写、 ストーリーは特別何があるというわけではないけれど、ヒロインの不満や鬱憤など、 心の内がしっかりと伝わるホームドラマに仕上がってます。高峰秀子のヒロイン役はもちろん、 母親役の浦辺粂子が飄々としていて面白く、ラストへの流れもよかった。 タイトル「稲妻」は劇中で演出効果として使われており、その意味は十分理解できるも、 ちょっと当てつけがましく、個人的には今一つピンとこなかった。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 6点(2012-01-21 20:55:57) |
16.《ネタバレ》 『めし』は駄目だったが、これはよかった。父親の違う兄妹が入り乱れてゴチャゴチャなのですが、主人公の清子がすがすがしいので、気分が悪くなることもなく見られました。清子とはよく名付けたものです。次姉三浦光子の存在も大きい。彼女がいるから、人物間のバランスがよくとれているのだと思います。金をたかって喧嘩ばかりしているきょうだいでは、こちらもしんどくなりますから。 現状を変えようと下宿した清子。お隣の根上淳・香川京子兄妹が、それまでのきょうだいへのアンチテーゼとして生きています。ピアノの使い方がみごとで、斎藤一郎の音楽は最高。後味もさわやかで、清子の人間的成長が端的に表されているようです。当時の東京の街並みが見られるのも嬉しい。 【アングロファイル】さん [地上波(邦画)] 8点(2012-01-03 20:35:46) |
15.ある人が成瀬監督の映画を、どこから始まってもどこで終わってもおかしくない映画と言っていたのを思い出す。この映画にしてもしかり、父親が違う姉妹と兄という環境に至った経緯にさほど深入りすることもなく始まり、この映画の中で起こったいろいろなことの結末が描かれないうちに終わる。淡々としていて平凡ではなく、一見どろどろとしているようであっさり描かれる。それが魅力の成瀬映画、大変好きだ。 中北千枝子演じる愛人が出るところに出てと言っていたが、どうなったのだろう。清子さんの引っ越し先の隣人香川京子の兄を演じる根上淳とどうなっていくのだろう。などの余韻を残しながら終わるのが実に良い。 ところで2階に住んでいた娘さんが聴いていたレコードの曲と隣人の兄妹が弾いていたピアノの曲は同じに聞こえるが何という曲だろう。映画のBGMとしても流れてロマンティックな雰囲気を醸し出している。実に印象的。 【ESPERANZA】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-08-05 11:15:45) |
14.お母さんがはっきりしてないから、女性の多い家族に変な男が出入りしたりする。そんな状況で高峰さんの演じる女性はそれが嫌で家を出ちゃう。そんな話ですが、高峰さんって有名な「浮雲」の薄幸の女性を演じたり、「カルメン」ではストリッパー演じたりとどんな役でもこなしちゃうけど、何故だかどういう役を演じても、好い人は裏切らない女性って感じがします。騙すより、騙された方がいい、って感じ。さばさばしてるけど、白けてないっていうか。こんな女優がいたんですね。目のあたりが薬師丸ひろこさんに似てると個人的に思いました。 【トント】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-06-15 23:36:45) |
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13.《ネタバレ》 一番いい子で通ってきた清子が、言いたい事を言って楽になったような感じが面白かった。一人暮らしを始めて、あの家から解放された清子だからこそ、お母さんに優しくできたのかな?。ずいぶん嫌な話をしてたはずなのに、あっという間に笑顔にさせられる。まるでマジックを見た気分。でも決して強引ではなく、自身の経験からも「あるある」と思える内容だったのがまた素晴らしい。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-06-15 18:02:44) |
12.食べることの交通だけを取り上げてみても豊饒である。娘高峰秀子が母元の「有象無象」と共に蕎麦を食べるシーン、これが爽快で、蕎麦を食べることが「有象無象」の陰気な会話に風穴をあけ、さらに高峰は蕎麦を二階の貧乏女子学生(自立への知的ないざない)へと運ぶ。蕎麦が取り持つ縁である。縁といえば、下宿の大家さんがながーい蕎麦を打ってくれる(女性の団結)のがなんとも微笑ましい。葡萄を食べる時間というのも素晴らしい。引越し荷物を取りに親の家に帰って、仏壇の葡萄を食べながら母と会話、その際、葡萄の皮を庭にすてる律動的な運動は、庭という「外」との交感であり、葡萄を食べ終わればさっさと立つ鳥である・・・成瀬巳喜男の瑞々しさの面! 【ひと3】さん [映画館(邦画)] 10点(2010-12-01 21:57:23) |
11.《ネタバレ》 目線を動かすだけで画面には映っていない人の動きを表現したりすることをいわゆる成瀬目線と言って成瀬監督の特徴的な演出として有名らしいのだが、単に目線を動かすに留まらず、高峰秀子が何かを見て表情を変える様子で画面に映らないなにものかを想像させている。あるいはバイクの音だけで小沢栄の登場が描かれる。常に画面の中の世界と外の世界が通じ合っていることを意識させている。描かれる物語の世界を広げると同時にこの作品に描かれる高峰秀子が言うところの「ずるずるべったん」なしがらみから抜け出す道があることを示唆しているようにも感じた。それにしたってこのネチネチとした世界には正直うんざりで、いくらなんでもこの陰鬱な気分のままじゃたまらん、と思ってたら終盤に来てようやく香川京子が登場。彼女の爽やかな笑顔が全ての暗雲を消し去ってしまうのだ。画面の外からはバイクの音ではなくピアノの音色。香川、根上の爽やか兄妹、この二人だってある意味「ずるずるべったん」だ。良い「ずるずるべったん」だ。そんなものがあるってことを知るだけで気持ちは晴れるのだ。 【R&A】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2010-11-19 15:00:11) |
10.《ネタバレ》 次女光子の消息が気になったり、隣人の兄妹のシーンがもう少し欲しかったりと少し物足りなさが残った。複雑な事情を持った母、兄弟と取り巻く人々の人物描写が良くできており、次々に起こる問題と感情のぶつかり合いが見る者を惹きつける。主演の高峰秀子の投げやりなブドウの食べ方が好き。出番は少ないが香川京子の可憐さも光る。ここに出演している俳優でリアルタイムで見たことがあるのは浦辺粂子と根上淳と香川京子くらいだと思うが、この時すでに初老の母役をしていた浦辺粂子の芸歴の長さには驚いてしまう。 【きーとん】さん [DVD(邦画)] 6点(2010-09-26 23:57:08) |
9.文句なしの10点、素晴らしい映画でした。 最初からだらだらと続く抑揚のない映画、しかしその中にもきちんと思わせる 演出などがあって決して悪い意味でのだらだら感ではない。 そしてラストの気持ちよさと言ったら・・・!とにかく素晴らしいの一言。 【05】さん [地上波(邦画)] 10点(2009-03-06 15:56:18) |
8.私的に1・2を争う傑作。 もう皆様が書かれているのですが、成瀬真骨頂といえる題材、動いてなさそうでアクション映画より動いているかのようなカットの素晴らしさ(本当に素晴らしい編集ばかり!!!)。 監督の遊び心かのようなシーンが好きで、川島雄三に小沢昭一が居るように、成瀬巳喜男には中北千枝子が居る。三浦光子と高峰秀子が談笑している軒の外に、赤ん坊をおんぶし、軒を行ったり来たりしている中北千枝子が小さく写っています。寅さんの登場シーンのようで笑ってしまいましたし、中北千枝子の家から帰る高峰・三浦の二人が橋の上で会話するのだが、その後方にある家の二階の窓からしっかり中北千枝子が覗き見していた。 その他にも、今では貴重である銀座の「柳」も観れますし、コミカルなカットから深刻なシーンにおいても様々な技を堪能できる作品でもあります。 【サーファローザ】さん [映画館(邦画)] 9点(2008-09-23 23:56:02) (良:1票) |
7.「人間が愚痴を言う事の美徳」を礼賛した成瀬巳喜男監督の傑作。とにかくまあ全編「ずるずるべったり」(←この言葉好き)の登場人物が、互いに互いの愚痴を言い合うシーンの連続。極言すればこの映画にはそれしかないと言っ切ってしまってもいい(笑)それなのに面白くてたまらない、不思議。成瀬監督には大風呂敷を広げた題材よりも、狭くて息苦しくなるほどの下町地縁の中、欠点だらけのぐうたら人間がグズグズグズグズ蠢いているオハナシの方が絶対向いていると思います。四人の子供が四人とも違う父親から生まれたっていう林芙美子原作の設定もよく考えたら凄い。性格がてんでバラバラな兄弟一人一人の人物像もくっきりと浮かび上がっています。この母親にしてこの子供たちありっていうのを観客になるほどと納得させる、母親役の浦辺粂子がやっぱり巧いですね。小沢栄太郎のイヤラシサも絶品。唯一人、この世界から何とか抜け出して自活しようとする聡明な末娘役、高峰秀子の醒めた視線と立ち姿、そして時折見せる笑顔のなんと美しい事!この映画が私にとっての成瀬映画ベストワン。世評、評論家筋では「浮雲」が彼のベストワークという評価ですが、自分はあまりにいろいろな文献を読んだ後で観てしまった為か、それほどとは思えず。 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(邦画)] 10点(2008-03-15 10:48:41) (良:1票) |
6.なるほど、あの稲妻はそんなきかっけを示唆していたんですね、青観さん。 まだまだ映画を観る力が足りないようです。 それにしても、あまりに香川京子の出番が少ないのが残念で仕方ないです。 【にじばぶ】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-11-15 20:59:28) |
5.成瀬巳喜男監督作品で二番目に見たのがこの作品でして、これは凄い映画だ!とにかくどの人物にしても感情を見事に表現している。その凄まじさとその感情表現の中で揺れる人間の心の闇をきちんと捉えているのが凄い。勿論、これはどの俳優にしても素晴らしく、中でも高峰秀子、やはりこの女優が素晴らしい。母親に散々、文句を言われ、母の愚痴に対しての感情剥き出しの演技の凄さとそして、この映画の凄い所は映画のタイトルにもなっている「稲妻」、つまりこの場合の稲妻とは「雷」のことで、その雷が鳴った瞬間、それまでいがみ合っていた母と娘の関係がごく普通の母と娘に戻るというそのこれぞ日本映画、そう、これこそが成瀬巳喜男監督が言いたかったテーマ、所詮、人間なんてものはちょっとしたことがきっかけで元の通りになれるのだと言っているような素晴らしい演出、どんなに喧嘩しようが、何かのきっかけで日常に戻れるのだ。私はこの映画のあの雷の鳴った後の二人の表情からそう感じることが出来たと共に見終わった後の何とも言えないカラッとした気持ちの良さ、本当に良いものを見させてもらった気がする。 この映画、最初は9点にしたけど、何度か繰り返し見ているうちにもしかしたらこれこそ成瀬巳喜男監督、高峰秀子のコンビ作品で最高の映画のように思えてきて、観る度に好きになっていく。よって10点に変更したいと思う。 【青観】さん [CS・衛星(邦画)] 10点(2007-01-02 22:55:38) (良:2票) |
4.もう、構図が素晴らしいの、とにかく。タイトルの稲妻にあるように、最後、高峰秀子演ずる娘の部屋に、母がやってきて口論になる。その場面で窓の向こう側に一筋の稲妻がピカリと走る。それだけ、たったそれだけの演出でこの映画の凄さが身にしみる。家族という囲いの中で巻き起こる様々な事件、出来事。そられの積み重ねが人を変え、人生を狂わせて行く。滑らかな台詞回しから漂う穏やかさ、静けさ、美しさ。この成瀬巳喜男という監督は、日本人女性を華麗に写す天才だったのかも知れない。いや、天才だったのだろう。 【ボビー】さん [映画館(字幕)] 9点(2006-06-19 00:31:05) (良:1票) |