2.《ネタバレ》 「アニメ」大国日本だけど「アニメーション」全般となると色々と弱いのよね。CGアニメーションにしてもそうだし、ストップモーションアニメーションとなると、最早不毛の地みたいな感じ。日本の長編ストップモーションアニメーション映画って一体どこまで遡るのかしら? サンリオの『くるみ割り人形』(1979年)?
これはそんな日本の、そして世界のアニメーション界に革命をもたらすかもしれない作品ね。何しろライカやアードマンのようなストップモーションアニメーションの大手の作品、何百というスタッフの手と何十億という資金によって創られたモノと比べても、ちっとも遜色のない作品、しっかりと娯楽エンターテインメント作品になっているのだから。最初1人、長編化が決まってからも4人ほどで創られていながら。
グロいのは得意じゃないし、ここに描かれた世界はまるで悪夢のようね。夢に見そうよ。でも、その独特な個性を放ちまくる作品世界にすっかり魅了されたわ。広がる地下世界に棲む、起源を同じにしつつ色々と株わかれしたキモチ悪い生き物たちに触れてゆくうち、段々と親しみを抱いて、最後には愛着も湧いちゃうって、主人公が辿る道と観客が映画に抱く感覚の流れがシンクロしてるカンジね。
世界の造形が凄いの。完全にアタマの中のイメージの映像化をコントロールしきってるように思えるわ。大スケールな画から細部に至るまで独自のセンスで支配されてるの。
そして大切なのは、そこだけに集中してないってコト。パンフ読むと判るのだけど、作品世界はかなりコマゴマと設定されているのね。歴史がどうこう、その世界の成り立ちがどうこう、って。で、日本のアニメってそれを延々と説明しがちなのが大きな欠点だと思うのだけど(それに終始しちゃってるモノも多いわ)、コレはそこにあまり留まらずに物語をちゃんと転がしてゆくのね。物語が面白いの。説明やアクションのために物語が停滞する部分が無いコトはないのだけど、ちゃんと娯楽映画としてのバランス感覚を持ってるわ。
ティム・バートンやヘンリー・セリック、ニック・パーク、ウェス・アンダーソンといったストップモーションアニメーションにプンプンと匂い立つような独自の個性を発揮する作家たち、この堀貴秀という人は彼らに比肩し得る存在だと思うの。凄いモノ見たわ。