2.《ネタバレ》 今はアルゼンチンに住むユダヤ人の老人。体も思うように動かなくなってきた。
彼には長い人生の中で、ずっと心に引っかかっているやり残していることがあった。
それは1945年、ポーランドで別れた親友との約束。
この前提だけで彼の人生にどんな困難があったのかを想像するに十分なのですが、
時折フラッシュバックされる若かりし頃の彼の映像が、
ポーランドからアルゼンチンへ、どんな困難があったのかを思い知らせてくれます。
口にも出したくない「ドイツ」「ポーランド」という国名。
ドイツには一切足を踏み入れたくない。そんな思いが痛いほど伝わってくるのですが、
飛行機で乗り合わせた若い男。スペインのホテルの女主人。列車で出会ったドイツ人女性。
そして彼を救ったポーランドの病院の看護師。旅先での出会いの1つ1つに無駄が無く、その全てがいい。
ドイツの地に足を付けたくないと頑なにドイツを拒んでいた彼が、ドイツの地に足を下ろす駅での何気ないシーンが印象的。
「会うのも怖いが、会えないことも怖い。」親友の家の前に来てのこの台詞が70年という時の重みを感じさせます。
しかし、2人の目が合い、互いを認識し合うまでの1分にも満たない時間か。この時の2人の台詞も無い演技が素晴らしい。
70年の時を埋める「家に帰ろう」という本作最後の台詞と2人の姿と、
その姿を見届け、何も言わずその場を後にする看護師の女性の姿が胸を打つラストでした。