戒厳令(1972)のシネマレビュー、評価、クチコミ、感想です。
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(レビュー・クチコミ)
戒厳令(1972)
[カイゲンレイ]
État de siège
1972年
【
仏
・
伊
】
上映時間:121分
平均点:
6.50
/
10
点
(Review 6人)
(点数分布表示)
公開開始日(1974-02-16)
(
ドラマ
・
政治もの
・
歴史もの
)
新規登録(2008-06-02)【
にじばぶ
】さん
タイトル情報更新(2021-08-18)【
S&S
】さん
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監督
コスタ=ガヴラス
キャスト
イヴ・モンタン
(男優)
フィリップ・マイケル・サントーレ
レナート・サルヴァトーリ
(男優)
ロペス大尉
ジャン=リュック・ビドー
(男優)
エステ
ジャック・ペラン
(男優)
電話オペレーター
脚本
フランコ・ソリナス
コスタ=ガヴラス
音楽
ミキス・テオドラキス〔1925年生〕
撮影
ピエール=ウィリアム・グレン
製作
ジャック・ペラン
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6.
《ネタバレ》
"ラテン・アメリカの某国のファシズム的な警察国家の闇を衝いた、コンスタンタン・コスタ=ガヴラス監督の実録政治映画の問題作「戒厳令」"
ギリシャの軍事独裁政権の実態を暴いた「Z」、ソ連のスターリニズムを痛烈に批判した「告白」に次いで、社会派の俊英コンスタンタン・コスタ=ガヴラス監督が撮ったのが、ラテン・アメリカの某国を題材にとり、背後にアメリカの力を負いながら、ファシズム的な警察国家体制を敷いている国の実態を生々しく描いたのが、この映画「戒厳令」なのです。
この作品は、コンスタンタン・コスタ=ガヴラス監督お得意の実録ものであり、1970年8月10日にモンテヴィデオで誘拐され、銃弾を頭部に受けて殺されたイタリア系アメリカ人、ダン・アンソニー・ミトリオーネをモデルにしています。
ガヴラス監督は、当時の新聞、公式文書など、ありとあらゆる資料を調べつくし、ミトリオーネという男が受け取っていた月給の金額まで知るほどだったということですが、そういう正確な事実を基にしたという強みが、この映画にはあると強く思います。
トップシーンの戒厳令下の街頭の場面が、まず非常に冷酷で薄気味悪いムードを湛えており、一種クールな魅力を画面に与えていますが、南米のチリに長期ロケーションをした効果があって、現地での生々しい臨場感を観ている我々に感じさせます。
そして、この映画は、ガヴラス的演出で、フラッシュ・ショットによる回想シーンなどを随所に挿入し、時を自由に前後させながら展開していきます。
「Z」「告白」ともに、政治映画でありながら、ガヴラス監督の手にかかると、面白すぎるくらい面白くなりますが、ここではその映画的な技巧の円熟味は、ますます冴えていると思います。
主人公のフィリップ・マイケル・サントーレ(イヴ・モンタン)の死が、まず冒頭に出て、その葬儀のシーンあたりから、回想で彼の生前に遡り、革命派が誘拐するプロセスが歯切れよく描かれてくるあたりで、映画は観ている我々を否応なしにその世界に引きずり込んでしまいます。
この革命派の尋問につれて、サントーレという人物像が、次第に浮き彫りにされてきます。
彼はイヴ・モンタンが扮していることからもわかるように、実に風格のある人物であり、外見は良きアメリカ人であり、愛する家族を持つ良きパパなのです。
このように、サントーレという人物を、決して悪玉仕立てにしていないところに、ガヴラス監督の狙いもあったのであり、彼がアメリカから南米へ派遣されて、警察国家の陰の指導者となり、反乱分子に残酷な拷問をかけたりさせる、裏の張本人であるということが、実に感じのいい男だけに、観る者を余計に慄然とさせる効果を持っていると思うのです。
警察学校かなにかで、人体を使って拷問の実習をするシーンなど、かなりな残酷描写です。
こういう教育を受けた連中は、いつか、いとも冷酷で人間的な血の通わぬ非情な警官に育っていくのだろうと思います。
そのよき例が、秘密警察の隊長ロペスで、レナート・サルヴァトーリの何とも言えぬ凄みには圧倒されます。
一種、怪物的な魅力すら漂ってきて、脇役一筋で、地味なレナート・サルヴァトーリが、いつの間にこれほどの重量感のある俳優になっていたのだろうと驚いてしまいます。
このロペスの率いる秘密警察が、革命派の青年たちの居場所を突きとめ、追いつめ、逮捕するあたりの何とも言えない恐ろしさは、観ている我々を心の底から震撼させます。
街頭を革命派の青年が歩き、さりげなく警察官が追いつめていく、その画面にミキス・テオドラキスのクールな曲がかぶさるあたりは、どこか金属的な感じさえするムードで満たされます。
そして、この間、国会では多くの議論が交わされますが、誘拐した革命派グループの再三にわたるコミュニケにもかかわらず、結局、サントーレの生命を救うための動きは全くなく、革命派も彼を殺害する以外に方法がなくなってしまうのです。
国家とか組織とかが、個人などをまるっきり無視して通りすぎる冷酷さが、痛いほど画面の中から迫ってきます。
そして、ラストシーンでは、サントーレの死後、彼の後任として空港に到着したアメリカ高官の姿。
それをじっと見つめている、革命派の青年たちの表情の数々を映し出して、この映画は終わります。
ガヴラス監督式のスリルとサスペンスに満ちた面白さは確かにありますが、しかし、彼の最高作である「Z」の大衆講談的な面白さからはいつか飛翔して、生の実感を込めた不気味さが、ひたひたと我々の胸に押し寄せてくる思いがするのです。
【
dreamer
】
さん
[CS・衛星(字幕)]
8点
(2021-09-12 12:40:35)
5.
《ネタバレ》
コスタ・ガヴラスのいわゆる三部作の一作、南米ウルグアイで起きた事件をもとにしているが、政治的映画というよりもまさに政治映画そのものといった方が相応しいでしょう。“架空の国での出来事”とした『Z』の設定とは対照的に、登場人物たちは仮名になっているみたいだがはっきりウルグアイの出来事として撮っています。全編ロケですがさすがにウルグアイでは撮影できず、街並みはチリで撮られたものだそうです。つまり時おり映り込む海は、ウルグアイが面している大西洋じゃなくて太平洋ということです。 全編がドキュメンタリー調というか淡々としたタッチのストーリーテリングなので、緊迫感には満ちているがまったく盛り上がるところがないお話しです。冒頭が誘拐されたモンタンの葬儀でいわゆる倒置法(『刑事コロンボ』方式ともいう)なのもその一因かもしれません。製作者や監督自身がいわゆる主義者なので狙っているのは確かですけど、娯楽色はいっさいありません。誘拐をする組織は実在の南米最強と呼ばれたツパマロスなんですが、なんせ監督が主義者なので徹底的に善玉という位置づけで描かれています。冒頭や各所で挿入されるドキュメンタリー調の政府側の検問や街頭での取り調べシーンは緊迫感満点で、この種の映画のお手本といって良いでしょう。ウルグアイ政府に弾圧のコーチをする本来悪役であるはずのCIA(?)の工作員みたいなモンタンですけど、堂々とした覚悟のある人物として描かれており“自分の処刑がツパマロスの終わりの始まりなんだ”と腹をくくって死に臨む姿はカッコよくさえあります。撮影時は判らなかったことですが、この映画の公開翌年にはツパマロスは軍事政権によって壊滅させられます、なんか近未来を予言していたみたいです。 ガヴラス三部作の中で他の二作の舞台とされたギリシャ・チェコスロヴァキアと並べると、いちおう議会は開かれているし記者は割と自由に活動している風にも見えますし、ウルグアイは割と生ぬるい感すらあります。さすが昔は“南米のスイス”と呼ばれたこともあった国、80年代には国民投票で軍事政権から民政にスムーズに移管したぐらいですからね、つまりツパマロスが目指した暴力革命は間違っていたってことではないでしょうか。“世界一貧しい大統領”と近年マスコミに持ち上げられたホセ・ムヒカはツパマロスの指導者だったそうで、こういう立場の人が殺されずに政治活動をして大統領になるなんてウルグアイは面白い国なのかもしれません。
【
S&S
】
さん
[CS・衛星(字幕)]
5点
(2021-08-15 22:13:31)
4.
南米のとある国におけるアメリカ人誘拐、その裏には・・・。という筋書きはコスタ=ガヴラスの作品では「ミッシング」を思い出す。しかしこちらは誘拐犯と誘拐された者との会話、政府や議会などの見解や主張が繰り返され、冒頭はどういう組織の何が目的の行動なのか分かりづらいですが、これらを通してアメリカの他国の政治への介入や、体制の問題点を浮かび上がらせていく。原題の意味は分かりませんが、戒厳令が敷かれた動乱の街の描写などはあまり登場せず、勿論エンターテイメント性もありません。長く感じる作品ではありますが、作品を覆う緊張感、力強さには特有のものを感じます。
【
とらや
】
さん
[CS・衛星(字幕)]
6点
(2011-12-25 22:21:54)
3.
《ネタバレ》
ロメロ監督の某ゾンビ映画を観た直後に本作を観ると、戒厳令下の冒頭シーンが何だかゾンビ映画にソックリだなあと。むしろロメロ映画が政治映画にソックリというべきなんですかね。それにしてもこれまた力作のこの映画。南米の某国にて、あるアメリカ人が殺害される。そこから映画は過去に遡り、彼が反政府組織に誘拐されてからの一週間が描かれる訳ですが。ただ、その描かれ方が、単純に「物語」として、事件の顛末や登場人物の感情を追いかけるものではなくて、ドキュメンタリ調の断片的なシーンがパッチワークのように錯綜的に積み重ねられていき、その中では、拷問シーンも会議のシーンも同レベルの扱い。そしてその描き方は、まるでキュビズムのように各部をデフォルメして強調し、状況のグロテスクさをえぐり出していきます。最後はまた主人公の葬儀のシーンとなり、流されるオルガン曲(バッハの幻想曲とフーガ)が感傷的な気分を醸し出すけれど、それは突然に断ち切られ、事態は何も変わっていないこと、また同じことが繰り返されるであろうことが仄めかされて映画が終わります。「これは感情の問題ではない、政治の問題である」と言わんばかりに。
【
鱗歌
】
さん
[CS・衛星(字幕)]
9点
(2011-01-23 08:51:28)
2.
コスタ=ガヴラス作品らしい、重量感ある映像とカメラワーク、そして作品に賭けた沸々とした意志の力を堪能できる内容。ただし、同じところを強調したいがための未整理な部分もあり、そのためにラストが持つ意味も弱まってしまった感がある。
【
Olias
】
さん
[CS・衛星(字幕)]
6点
(2009-12-06 13:32:35)
1.
《ネタバレ》
同じくコスタ=ガヴラス監督の『告白』を観たばかりだったので、少し物足りない感じがした。
『告白』は観ていて疲れるほどの過酷で残忍な内容だったが、本作はそれほどでもない。
ただし、冒頭で主演のイヴ・モンタンがいきなり死体で登場した時はびっくりした。
そして、拷問の“実演”シーン。
これもかなり衝撃的。
随所にインパクトはあるものの、本作と同じコンビであるコスタ=ガヴラス&イヴ・モンタンの『Z』や『告白』に比べると、凡作の感は否めなかった。
【
にじばぶ
】
さん
[ビデオ(字幕)]
5点
(2008-06-17 22:52:27)
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Review人数
6人
平均点数
6.50点
0
0
0.00%
1
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0.00%
2
0
0.00%
3
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0.00%
4
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5
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33.33%
6
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