13.《ネタバレ》 下世話な言葉で表現するのなら、これは「ダブル親子丼+他人丼」(←メイドさんも居たから)映画。こってりドロドロになりそうな濃ゆい中身になりそうなのところを、極めて薄味淡泊な仕上がりとなったのは、突然の訪問者「彼」を演じた若き日のテレンス・スタンプ氏の、何とも表現しにくい不可思議な瞳の魅力のおかげ。この役に彼を得なかったら、一体どうなっていたことか。人生観が変わるような、難解映画に挑戦してみたところが、全然難解でもなく、面白く解り易かった事に逆に拍子抜け。それぞれが瓦解し、家庭崩壊となる結末だが「彼」が去った後、道端の男を漁りまくる奥方のキモチが一番良く理解出来た。キリスト教、神とはなんぞや云々等の小難しい事を考えなくてもフツ―に楽しめる、健全な変態映画だと思います。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(字幕)] 8点(2024-08-13 22:05:11) |
12.《ネタバレ》 随分昔に某動画サイトで観て、全く歯が立たなかったという作品。今回、DVDを調達してのいわば再挑戦なのだが、前回よりは少しだけ得るものが有った様に思われる。 第一に感じ取れるのは、やはりキリスト教的な価値観。「訪問者」のイメージに重なるのは、何と言ってもイエス・キリストである。ただ、一家がブルジョアとして描かれること(言葉としても「ブルジョア」という台詞も複数回登場するし)、そしてパゾリーニが共産主義に傾倒していたことから鑑みるに、彼には「革命者」としての姿もまた重なってくる様に思う。 重要なのは、その彼の運び来る「変革」の結末である。要は、それは明らかに「ブルジョア」たる一家にとって望ましい結果を齎していない。それを非常に単純に解釈すれば、本作は単なる資本主義批判映画だと言えるのかも知れない。 しかし本作、決してそんなに単純な作品でもない様にも思われる。ブルジョアを単に「敵」と看做さず、そもそもこの世界は資本主義者に満ち溢れているのだから、これをそのまま「世界」だと捉えたならば、また話は違ってくる様に思う。救世主たるキリストや、真の革命家を以てしても善き方向に進まない「世界」。この重苦しい作品には、そんな世界(或いは逆に、そんな世界における共産主義の在り方それ自体を含むものか)に対するパゾリーニの絶望的な苦悩が感じ取れる様にも思う。 ひとつ確からしいのは、一家でただひとり「プロレタリアート」を代表するエミリアを通して描かれる「癒し」と、それに伴って来たる「希望」である。パゾリーニは、真に人々を癒し、そして導ける存在は、労働者階級の中から現れるということには確信を持っていたのではないだろうか。年代的にも思想間の二項対立とそしてその「善と悪」が揺らぐ歴史の中で、そこだけには(=映画中のそこの表現には)ある種の普遍性が感じ取れる様にも思われる。 【Yuki2Invy】さん [DVD(字幕)] 7点(2020-05-23 00:08:27) |
★11.《ネタバレ》 ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の「テオレマ」について、パゾリーニ監督は、最初はこのテーマを詩による舞台劇として考えていたそうだ。
そのため、この映画は知的な構成が明らかすぎるほど明らかだ。画面の隅々まで緻密に計算されており、登場人物の役割も非常にわかりやすい。 だが、主人公が神か悪魔かといった謎が"不条理演劇"のように、簡単には割り切れない。
それは、主人公を演じるテレンス・スタンプの顏のクローズ・アップが、極めて映画的な効果をもたらしているからなのです。
~ミラノの大企業家パオロの家に謎の青年がやって来る。青年は、パオロやその家族と性的な接触を持ち、彼らの欲望を解放して、やがて立ち去って行く。残された人々は、彼ら自身の真実に向き合うこととなる。そして、彼に感化されたメイドは屋敷を出て、聖女になり、パオロは自分の工場を労働者に渡して荒野を彷徨うのだった~
悪魔の中に天使が宿るというようなイメージで、悪魔に魅入られた、悪魔のような美しい俳優・テレンス・スタンプ。 パゾリーニ監督の「テオレマ」に登場する彼は神なのか、それとも悪魔なのか?
彼の来訪は、郵便配達の姿をした天使によって告げられ、その辞去も天使によって予告される。 天使をつかわしたのは、そうすると神なのだろうか? 彼自身が神であったら、迎えの通知がくる筈はないのだから。
彼はただ彼という存在のままブルジョワ一家に迎えられ、客として滞在する。 彼はそこにいるだけで、一家の人々に不思議な力を及ぼす。 彼を見、彼に触り、そして彼に抱かれることによって人々は、自分自身に到達する。
イエス・キリストの衣に触れただけで病が治る聖書の話が、ふと連想されるが、彼は決して人々を救いに来たわけではない。 一家のメイドは、やがてブルジョワの屋敷を出て、故郷の貧しい人々の所に行き、身を犠牲にして土をかぶり、聖女となる。 だが、一家の他の人々は、それぞれの苦悩を生き始めるのだ。
この映画でテレンス・スタンプが果たす役割は、そこに存在するということなのだと思います。 彼の顏と彼の微笑、そして彼のなまめかしい肉体で、そこに存在するということ。 映画を観る私は、一家の人々と同じようにその存在を感じます。
神なのか、悪魔なのか、それとも神の子なのかという問いの答えは、永久に得られない。 逆に言えば、神は彼のような存在だとパゾリーニ監督は見ているのだろう。
ここでは、ひとりの役者が自分の存在をメタフィジカルな存在と同一化させているのだと思います。 【dreamer】さん [DVD(字幕)] 7点(2019-03-18 14:26:10) |
10.とにかくパゾリーニが苦手という方に「奇跡の丘」「カビリアの夜(フェデリコ・フェリーニ監督)」等と共にオススメしたい作品。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-05-05 17:49:24) |
9.パゾリーニ作品の中には好きなのもあるけど、本作はどうも好きになれなかった。 【にじばぶ】さん [ビデオ(字幕)] 4点(2007-09-03 16:18:39) |
8.《ネタバレ》 人が「自己の存在感」を感じる要素、つまり地位や名誉、容姿や金銭の存在というのは地球上に存在する生物の価値観からすれば砂上の楼閣であり、ただ清らかな心=純粋な宗教心のみが人が人として存在できる最大の要素たるものなのだ、とパゾリーニは述べたかったのかなと感じたのですが如何なものでしょう。「コレクター」もそうですが透明感のある青年(しかも性的魅力に溢れた)を演じたテレンス・スタンプはまさにはまり役。レンタルビデオでみる機会が無かったこの映画を見る為だけに私は東京-名古屋間を移動する、というアホな事をしたものだが今ではDVDが発売中。世の中変わったなぁ。 【Nbu2】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-11-11 07:16:03) |
|
7.30年以上も前、封切り時に観た。以後みなおしてない。パゾリーニを咀嚼する力なんてあるわけなかったが、不思議なことに、退屈もせず、とにかくビックリ仰天した。映画の訴求力の神秘ではある。確か、モーツァルトのレクイエムが大事なシーンで流れていて、この映画をみた仲間うちで――つまり当時若いもんの話題の映画だったわけだが――カラヤン指揮のLPが突如人気アイテムになって貸し借りされたりした。アホな高校生をそこまでビックリさせた力技に素直に敬意。今観たらどう思うかは謎。 【哲学者】さん 9点(2004-06-22 16:09:00) (良:1票) |
6.何かの解説で、この映画を「神が主役の映画」と書いてあったのを読みました。とりこにすることがセックスなんだろうか、よくわかりません。話は面白いんだけど、パゾリーニで心から好きだといえるのは「華やかな魔女たち」だけです。 【omut】さん 5点(2003-08-04 06:05:28) |
5.父親も母親も息子も娘も、みんな虜にするなんてすごすぎる! 【オルモ】さん 9点(2003-05-09 23:30:40) |
4.パゾリーニ作品では一番好き。シルバーナ・マンガーノが美しい。パゾリーニ的表現の自慰性を映像で見せられたカンジ。でも、この感性が妙に心地よくて、つい繰り返し観てしまうのでした。人には薦めないけどね。 【ミナカタ】さん 9点(2003-02-12 05:38:47) |
3.植草甚一氏がかつて「人間の心の中は砂漠だ、とパゾリーニは言っている」とかいうタイトルで文章を書いていた。僕がこの映画を観て思ったのも、やはりこの一センテンスだった。ジュゼッペ・ルッツォリーニの静かだが激情的で張りつめるような美しい画面、そこに虚しいようなけだるいようなエンニオ・モリコーネの音楽がかぶさってくると、現代人の孤独とか終末みたいなものを感じてボーッとなってしまう。 【アンドロ氏】さん 10点(2002-12-17 22:37:12) |
2.いいです!!「豚小屋」に通じる鍵の作品。テレンススタンプが座る時ほとんど足を広げて股間を強調するのは・・・最高! 【yozi】さん 8点(2002-11-02 12:39:22) |
【リコシェ号】さん 9点(2001-12-02 03:12:56) |