138.《ネタバレ》 ユダヤ人のスピルバーグが、ユダヤ人によるパレスチナ人たちへの復讐劇をどう描くのか?
というのは普通に興味深い。
同じく彼が監督した「シンドラーのリスト」は、ユダヤ人を救った英雄物語なので、分かりやすかったが、「ミュンヘン」は、シンドラーの話とは違い、”人殺しサイド”にユダヤ人が置かれるので、それをどう描くのかなと。
当初は、ユダヤ人による11人分のパレスチナ人殺しを見ることになるのかと思いきや、もともとはユダヤ人を殺したテロの首謀者としてリストアップされた11人を殺す予定が、おとなしくしてらんねぇってことでテロの実行犯をわざわざ殺しに行ったり、テロ首謀者を殺すために結成されたチーム仲間のひとりをハニートラップで誘ってベッドで殺したオランダ人の女を報復で殺したり、必要以上の殺しにまでパワーを注いじゃってるので、そりゃ主人公の彼も精神的に病んじゃうなと思う。
でもね、主人公にワイフだの生まれたての赤子がいなけりゃ、
そこまで病まなかったんだろうな。
気持ちは「イスラエルを守るぜ!」で一点集中できてただろうな。
その赤子も、男の子だったらそこまで病まなかったはずだ。
女の赤子って、ずるいですよね、父親のハートをもってく。
なんか、だから、映画で女の赤子をもってきて、父親の葛藤を描くのって、安易で嫌いです。
イスラエルという国家にとって、この腕利きの主人公に女の赤子がいることは、非常に迷惑なことだったろうなとも思う。
ユダヤ人は、3000年も前に最初に暮らしていたはずの土地を他国に奪われ、
世界中どの国よりも、国への執着があるわけだし、このイスラエルのエルサレムを聖地とするキリスト教とイスラム教よりももっと前からこのエルサレムを聖地とするユダヤ教を発祥させていたわけだから、イスラエルは我々の土地だというプライドはとても理解できる。
だから、私としては、主人公にワイフと女の赤子持ちというツマラナイ設定を外して、
最後はイスラエル万歳と叫んで殉死してくれるオチが、ユダヤ人を描く映画としては正しいって思うのだが。
でもまぁ、主人公がそんなこんなで、平和な暮らしを求めて
「報復の連鎖は無意味だ」
って言うわけですが、そんなの、平和な家庭を維持したい人間の言い訳だろって感じです。
カメラワークは秀逸でしたから、ワイフと女の赤子がいるっていう設定がなくて、「報復の連鎖は無意味だ」と主人公が言い切っていたなら(そう言い切る説得力のある場面を描けるなら)もっと高い点を出せましたが。
ワイフに、女の赤子ねぇ…フンッ。安直。