2.《ネタバレ》 【前置き】
重く・苦しい映画ながら、鑑賞しながら頭の中に何故か本作の副題が浮かんできた。
「世界チョイ住み!(かなり悲惨な状況付き)」・・・某国営放送の番組から拝借
「名も無き少年 ~一期一会じゃなきゃやってらんない~」・・・某有名な映画から拝借 とか・・・
冒頭からふざけてしまい、すみません。
【本題】
本作鑑賞のきっかけは、滅多に5点満点を出さない日経紙金曜夕刊の文化欄で本作が満点評価されていたから。
また、全編がモノクロで陰影に富んだ自然の描写が荘厳で素晴らしいとの評もあった為。
金曜朝9時、私も含めて観客は5人と言う環境で鑑賞した次第。
凄まじい映画だった。
私は開始数分で、本作がモノクロで有る事に感謝した。
カラーだったらとてもではないが正視に堪えない場面の連打。
物語の構成は、ナチスドイツの迫害から逃れるべく両親と離れ叔母の下に疎開してきた主人公の少年(役名は無い)の
様々な体験を短編形式で綴っている。
心温まるエピソードはほぼ無く、人間の持つ業や悪しき部分を寓話の形を借りて極めて冷めた視点で描いている。
主人公の少年の描き方が興味深い。
物語当初は、酷い方法で殺されたペットの小動物の亡骸を泣きながら埋葬してあげる優しい面を持っていたのに、
エピソードが進むに従いどんどん無表情になり言葉を発しなくなり、しまいには自らの手で人を殺めてしまうまでになる。
小鳥屋の老人の最期に少年が取った行動の意味。
若い女性に対し抱いた思春期らしい思いと、嫉妬から取った過激な行動の意味。
色々と考えさせられた。
観ている私も少年の体験に併せて各エピソードで綴られる描写に耐性が付いてしまうのか、酷い事の数々が描かれているにも関わらず、
終盤はいたって冷静にスクリーンを見つめている自分に驚いてしまった。
人間と言う物はこの私も含めてつくづく罪な存在だと思いつつ、何故かこの手の作品にありがちな鑑賞後に重たい思いを引き摺る事も無く
私は家路に付いた次第。
【終わりに】
本作にとっての一服の清涼剤とも言える3人に付いて書いておかなければならない。
ハーベイ・カイテル、ステラン・スカルスガルド、そしてバリー・ペッパーの登場は予期していなかっただけに驚いた。
そしてその役回りも心に残るものだった。
それにしても、バリー・ペッパーに狙撃銃を持たせるとは制作陣の皆さん判っていらっしゃる。このシーンは思わずニヤリとしてしまった。