10.《ネタバレ》 重厚なヒューマンドラマで見ごたえがある。 実話ではなくフィクションだけれど、時効の短縮で多くの戦争犯罪人の罪を見逃すことになったドレーアー法は実在のもの。 事件の真相に元ナチが隠されていたというのは何度も見たパターンだけれど、この法律を扱うことによって一味も二味も違ったものになった。 【飛鳥】さん [インターネット(吹替)] 7点(2024-06-27 00:17:14) |
9.《ネタバレ》 ドイツ人資産家老人が殺された。犯人は逃げもせずに捕まるけれど、弁護士にも一切動機を話さない。導入部からして一級のサスペンスの様相。さらにその後の展開は予測不能かつ衝撃的でした。レオパルト戦車並に重量級の、まさにドイツにしか作れない映画です。 凡百の脚本ならば被害者のマイヤー氏が元ナチ親衛隊長であったことが判明したくだりで、状況は急転回し(傍聴席や検察側の動揺ぶりでも空気の変化は手に取るように分かる)‶1942年に何があったのか”を見せることでコリーニ氏の情状が酌量されて終幕となっていたことでしょう。 しかしここから話が二転するのには唸りました。 被告も若き弁護士(移民二世のトルコ人なんですね、これがまた)も観ている我々も、求めるのは「正義」のみ。戦後ドイツがずっと取り組んできた清算すべき課題が事件に大いに絡んでくるとは。ドレーアー法・・、知らなかった。衝撃を覚えました。 話の横糸となるライネン弁護士の人間関係も丁寧に織り込んであって、ドラマに厚みを持たせます。恩人を告発することの葛藤、恋人との亀裂、望まぬ師弟対決、とかなり盛りだくさんで穏やかじゃありません。そのうえ人種差別も顔を出します。 そしてフランコ・ネロの演技が素晴らしかった。台詞がほとんど無いにも関わらず、彼の瞳はあまりに多弁で圧倒的でした。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2023-06-14 23:46:39) |
8.《ネタバレ》 真相があったうえで更にその先の真相もあり、見ごたえがありました。子供時代のコリーニがかわいそうでなりません。最後のコリーニ親子の映像にグッときました。 【珈琲時間】さん [インターネット(字幕)] 7点(2023-04-19 09:38:48) |
7.《ネタバレ》 レビュー数は少ないものの高評価なので隠れた名作と期待して鑑賞。 法廷ものとしてはシンプルでした、難解過ぎるのは苦手なので助かりました。黙秘を続ける被告を紐ほどいて、酌量の余地を探りつつ正義を問う展開は秀逸でした。ドイツって事でおよその展開はふわっと予測できてしまうけどそんなことは全く気にならない。 ナチに対する禁忌は正直わからないけど、発覚したシーンでの傍聴席の反応で知る事が出来たのかもしれない。 最近観たニュースで、収容所のタイピスト?97歳のおばあさんが有罪になっているとの記事を見て、異常に思える執拗さに感じた。もし自分がその状況に置かれたとして有罪とならない行動ができたか?と言われるとおそらく無理だろうと思う。法律はある程度納得できる基準の様な物なのでそう思えない場合はどこか捻じれているのだと思う。 【ないとれいん】さん [インターネット(字幕)] 8点(2023-03-01 10:28:54) |
6.《ネタバレ》 けっこう重い話ながら秀逸。あまり見聞きすることのない、ドイツ人による先の戦争観を垣間見ることができました。 最初に面白かったのは、マイヤーがナチス親衛隊の幹部だったと明らかになったときの法廷の動揺ぶり。やはりナチスというのは忌み嫌うべき過去であり、その当事者にとってはひた隠すべき過去だったということでしょう。しかし本当の問題はそこではなく、1968年のナントカ法。どうして忌み嫌うべき過去を免罪するような法律を作ってしまったのか、すごく興味が湧きました。もう禊は済んだということか。教授が主人公に「お前は当時のことを知らない」とか諭していましたが、もう少し踏み込んで説明してほしかったかなと。いずれにせよ、「正義」を敢行したくなる気持ちは痛いほどわかります。 ただし、作品としてどうかと思う部分もいくつか。まず、登場人物の多くが以前からたまたま知り合い同士というのは、偶然にもほどがある感じ。それから戦中のマイヤーと戦後のマイヤーでは、キャラが変わりすぎではないかと。「戦場は人を狂気にする」ということかもしれませんが、豹変にもほどがある感じ。 それはそれとして、そこそこ歴史の勉強になりました。 【眉山】さん [インターネット(字幕)] 7点(2022-12-30 04:09:24) |
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5.《ネタバレ》 なかなか見応えがあった。焦点はコリーニへの量刑だと思うけど、マイヤーが有罪かどうかに関わらず情状に汲むべき事情があるんだから、マッティンガーをそこまで追い詰めなくてもいいんじゃね?って思ってしまった。 【センブリーヌ】さん [インターネット(字幕)] 7点(2022-12-25 23:12:21) |
4.《ネタバレ》 なかなかに重たい内容だったが、かなりの見応えがあった。 特に後半は怒涛の展開で、惹きつけられた。 事件の動機となったシーンの役者(特にマイヤー役とコリーニの父親役)の演技は特に名演で、 かなり効果的に随所で挿入されていた。 細かいツッコミどころがないわけではないが、 これは「名作」と言ってもいい出来だと思う。 【2年で12キロ】さん [インターネット(字幕)] 8点(2022-11-13 09:36:52) |
★3.《ネタバレ》 新米弁護士が担当した最初の裁判が、育ての親とも言える実業家の殺人事件。 しかもその憎むべき被告人を弁護するという、なんとも稀有なケース。 そんな偶然ないって、と途中までは思いながら観ていたものの、被害者の過去が明らかになるにつれて、この設定でなければこれほどの衝撃は与えられないと納得。 愛情深き育ての親が、本来なら裁かれるべき戦争犯罪人であったことの意外性と蓋然性が混在して、戦争によってもたらされる人間性破壊の恐ろしさを突きつけてくる。 被告人役の重厚な演技にも胸を打たれる。 語らずとも雄弁。 そこにも加点。 |
2.《ネタバレ》 法廷ものとしてはどちらかと言えばシンプルな展開運びだとも感じられるが、率直にクライマックスの見応えは実に素晴らしかった。一点、それは今作において法廷で問われてゆくのが、被告が「有罪か無罪か」ではなく、被告が犯した罪に対する量刑(=情状酌量)の妥当性だ、という点で、それは厳密な法論理・ロジックからはいくぶん離れて、むしろより本質的な「正義とは何か」というヒューマニズム的葛藤に帰着してゆくからだ、と感じられたのである。他方、そうで在りながら本作のサスペンス展開には高度な論理性と十二分な明快さもが見事に保たれている。そのロジカル的・サスペンス的な面白さと、描き出されるヒューマニズムの清々しさの両立、という部分には、私の愛して止まない『人間の証明』を読破した時の感動というのを少し思い出させられた様に思う。 演技面は全体的に非常に手堅い感じであったが、ひとり、フランコ・ネロに関しては文句無しに出色の出来だったと思う。非常にユニークなクオリティをつくり出しており、これには流石!と言う他無いかと。 【Yuki2Invy】さん [DVD(字幕)] 8点(2021-05-20 00:50:31) |
1.ナチス高官を祖父に持つ弁護士フェルディナント・フォン・シーラッハのベストセラー小説(未読)の映画化。 殺人犯コリーニの国選弁護人となった新米弁護士ライネン。惨殺された被害者が彼の幼少時から育ての親として面倒をみてくれた恩人マイヤーである事に葛藤を抱えるも、恩師マッティンガーの助言もあって弁護を決意。しかしそのマッティンガーが遺族側について法廷で相対することに。そしてコリーニが黙秘を貫き動機が分からず弁護が困難を極める。マイヤーが大企業社長と言うことで経済的に破滅させられた恨みかと思いましたが、そんな安い話ではありませんでした。調査を進める過程で一瞬映った鍵十字。人格者である恩人の別の顔が明かされ、更に、1968年に発布された法律の存在が明らかになる。迎えた判決が下るその日。 淡々としながらも非常に理路整然とした展開で過去と現在を行き来するカメラワークも実に滑らか。裁判モノによくある胸糞悪さもありません。そして特筆ものの奥歯噛み締めて物言わぬコリーニ(フランコ・ネロ +1点)が発する言葉の重み。あまりにも切ない「ありがとう」が記憶にとどまります。 自国の黒歴史に向き合うドイツらしさを感じた傑作です。 |