哀れなるものたちのシネマレビュー、評価、クチコミ、感想です。

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哀れなるものたち

[アワレナルモノタチ]
Poor Things
2023年アイルランド上映時間:141分
平均点:7.64 / 10(Review 14人) (点数分布表示)
公開開始日(2024-01-26)
ドラマSFコメディアドベンチャーファンタジーロマンス小説の映画化
新規登録(2023-10-13)【Cinecdocke】さん
タイトル情報更新(2024-04-08)【イニシャルK】さん
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監督ヨルゴス・ランティモス
キャストエマ・ストーン(女優)
マーク・ラファロ(男優)
ウィレム・デフォー(男優)
クリストファー・アボット(男優)
ハンナ・シグラ(女優)
マーガレット・クアリー(女優)
撮影ロビー・ライアン
製作ヨルゴス・ランティモス
エマ・ストーン
サーチライト・ピクチャーズ
配給ウォルト・ディズニー・ジャパン
字幕翻訳松浦美奈
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1
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14.《ネタバレ》 猿は道具を得て人のようなものになったという。さて人のようなものは知恵を得て何になるのであろうか。聖書をなぞったといえば確かにそうなのだが、映像や道具立ての意匠がスタイリッシュで多彩な味付けが飽きさせない。ダンスシーンは素晴らしい出来。とはいえ娼館のくだりは長いし、遠慮なしのえぐい描写は悪趣味で気持ち悪い。最後、知恵を得て主人公周辺は社会正義と知識欲に固められ、あっぱれあっぱれめでたしめでたしと見える。しかしその一方、どうも慈愛からは遠ざかったように見えるのは皮肉であり滑稽である。人として生まれた以上どっちに向かってもどうあがいても誰も幸せになれないのかもしれない。
ほとはらさん [映画館(字幕)] 7点(2024-03-25 20:18:58)
13.《ネタバレ》  ロングランしてて、アカデミー賞も各賞とってちょうどいい時間にやってたので観ました。
 スタイリッシュな芸術的作品も割と好きな口です。

 R18なんで大人向けの寓話的な作品という事で、まあ面白かったんですけど、個人的にはコメディっていってるけど、ある種、今のリアル過ぎ、生々しすぎじゃね?(寓話的幻想的作品が、現実以上に現実的に見えてしまう瞬間があるみたいな)という感じがして、ブラックユーモアとして笑わせようとしてるっぽいけど笑えないかな(苦笑)て感じでした。フェミニズム的題材作品としてみると、今だとちょっと古めかしいというか、時代設定が昔なので仕方ないかもしらんけど、せっかく寓話的ファンタジー作品をやるならもっと先端的にえぐったのをやってくれると逆に痛快で好きだったりしますが、そこまで振り切れてはおらず、差し引き今の現代的感覚と同じくらいになっちゃったかな、という感じ。

 斬新さがちと足らんかな?

 あとはなんだろう、下世話ですけど、アカデミー受賞作で話題になった女優が2~3年後くらいに濡れ場とかの多い汚れ役をやり出すサイクルがありまして、典型的なそういうサイクルの作品だなあと思ってしまったのと(とはいえビジュアルは素晴らしいのに当たって各賞も受賞して良かったなというところではありますが)、主人公が子供から現代的な女性に成長して魅力的になってくのは良いんですけど、最終的にたどりついた安寧の地が自らの力で勝ちとったものではなく

「たまたま運よく獲得できただけ」

なので、じゃあこの話が終わって平和な人生が続いてくかというと次の瞬間無慈悲な理不尽によってすべてを失っても全く不思議ではない状況で、ハッピーエンドと言えるのかどうなのか何とも言えん終わりだなあと思ったのと、最後のオチは割とベタなブラックジョークなんですけど、中盤で不遇な人々に対する慈悲の心は学んだのに、キリスト教的な、

「汝の敵を愛せよ」

は学習しなかったんだなあという、精神的に成長して大人的人格を身につけたけど、それには欠陥があったみたいな、そんなようなことを思いました。

 あと、(映像作品での)フランケンシュタイン的映像表現があるせいで、画面が結構グロテスクだったりして、私はグロいのは苦手なのでちょっと受け付けなかったのと、話のメインの動機や道標が、性的快楽とか結婚とかになってるのが、今だとセックスレスとか、そもそも結婚自体しなくなってきている現状を踏まえると、生々しいだけで、ちょっと価値観が古めかしいかなとも思ったり。個人的には、ペドロ・アルモドバル監督の「私が生きる肌」くらいやってくれたら、ひゅー! って思ったんですが。

 とはいうものの、ビジュアル(衣装や舞台)は素晴らしいし(私は主人公の服のパフスリーブが赤毛のアン(映画)のスタイルなので時代は1920年代前後くらいかなあとか思ってたのですが)、エマ・ストーンの演技も素晴らしくて総じて楽しませていただいた感じです。

 ああ、あと、主人公が「世界を見る」というので、もっとアレコレいろんな場所に行っていろんな経験を積むのかと思ったら、意外とそんなにどこにも行かなくて、物足りなかったかな。旅程は船に乗ってアフリカの辺? にちょろっと立ち寄ってお金無くなって、パリに舞い戻って、家に帰ってきただけですからね(上映時間は長いんですけど)。

 そんなところです。
simさん [映画館(字幕)] 7点(2024-03-25 13:44:10)
12.《ネタバレ》 極めてフェミニズムな映画だな~というのが率直な感想。
女性版フランケンシュタインが男たちを身体的にも精神的にも社会的にも常識的にもバッタバッタとなぎ倒していく話。
いや~男って非常に哀れですね……。まさに哀れなるものたち。
eurekaさん [映画館(字幕)] 8点(2024-03-24 11:04:14)
11.エマ・ストーンがやらかす映画だと思い込んで鑑賞
ボクの彼女のイメージは「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」のビリー・ジーン・キングでした
今回の彼女は随分と体を張った感じでした
作品は、面白かったです
考えオチも、まぁまぁだと思います
一緒に鑑賞した嫁が「あのオチの意味するところは・・・?」と言ってましたが
ボクは「コメディ映画ですからアレでいいのよ」といった所感でした
SFでありファンタジーであり、恋愛でありグロでありエロであり、社会派的であり
様々な面が伺い知れるいい映画だと思います

ただ、芸術性に振りすぎていて、なんというか、いまいち趣味に合わなかった
本当にいい作品でしたが、ボクには明朗簡潔さが足りなかったかな
それは監督さんが意図したことではないので、仕方がないですね
ボクには合わなかった、というだけの話ですから
ぐりこさん [映画館(字幕)] 8点(2024-03-09 12:35:34)
10.《ネタバレ》 おもしろいですよ。 くだらないと言う人もいるとは思いますが、大人向けのセクシー童話ととらえたら大満足です。
どうかしたら、『アルジャーノンに花束を』的な内容で、主人公の言動がどんどん成長していく過程(セクシー要素も加味して)が良くできています。
終盤の花嫁強奪エピソードは要らなかったなあと思いますが、最後の最後に声を出して笑わせてもらえたので、善しとしましょ。
ミスプロさん [映画館(字幕)] 8点(2024-02-27 23:00:11)(良:1票)
9.《ネタバレ》 中国嫁が居ない間に何か観ようかと新作レビュー点数をモニタリングしておりましたところ、種ガンダムと本作が目に付き観る事にしました。キャスト含め前情報は何も無しです(少なくとも嫁好みのジェイソン無双アクションではないのは確認してます)

これあれですわ、ベクトルがわからない奴ですわ。この感じはキューブリックを思い出しました。
それで他の人のレビューがめっちゃ気になる作品です。

タイトル通りで皆哀れ?なのかと言葉を色々調べてみると古語の「あはれ・なり」を発見し6つほどの意味が出てきまして、どれでもありどれでもない複雑な感じが本作のベクトル分らないのが近いように感じました。

久しぶりに監督の名前覚えとこうって思いました。他の作品も観たいですね。
初期で高得点をつけてくれたレビュアーさん達に感謝!
ないとれいんさん [映画館(字幕)] 9点(2024-02-13 09:59:28)
8.《ネタバレ》 鑑賞すればR18の理由も納得。
エマ・ストーンはアカデミー戴冠の噂も納得の入魂の演技ながら、作品自体は一人の女性の成長譚として観たら至って普通。
映像美(特に各エピソードの冒頭の短いショット)と音楽はセンスの高さを感じさせるものの、
色々とえげつない描写が多数有る事による話題先行の感は否めない。

追伸:
映画館で○○○〇をボカし無しで観たのは初めてかも知れない。
こうして観ると何故ボカしを入れるのか増々不可解になる。
何でもかんでも隠せばいいってもんじゃないでしょう、みんな持ってるんだし。
たくわんさん [映画館(字幕)] 6点(2024-02-12 12:02:59)(良:1票)
7.《ネタバレ》 現代によみがえったフランケンシュタインの物語。いや、「フランケンシュタインの花嫁」の、もしも花嫁が生きていたら、の世界線の続編ですね。フランケンシュタイン博士とモンスターは同一人物で。
赤ん坊の無垢な脳みそが成人女性の体に入ることで、世界と人間の本質について、文字通り全身で猛スピードで学習していく。そういうテーマだから、人類最古の商売などともいわれるあれについても、逃げずに真正面から描写している。だいぶ衝撃的な展開の続く話ではありましたが、主人公ベラは最終的にはなんだかかなり普通の女性に育った感じで、ラストはそこまでえぐいものではありませんでした。中盤でショックを受けた人間社会の残酷性については、彼女はどう消化したの?って感じ。そこは結局我々一般人と同じように、知っているけれど知らないふりをするしかない、っていう風に自分を納得させているのですかね。
エマ・ストーンは大熱演で、彼女しかこんな役は演じられないだろうな、と思う反面、まだ幼児段階のベラにもちょっと貫禄がありすぎて発する雰囲気が恐ろしく、そんな彼女に周りの人が無条件にひきつけられていくのが不自然に感じられてしまいました。これは単に個人の感覚なのですが・・・
あと、音楽は大変印象的でしたね。
Northwoodさん [映画館(字幕)] 7点(2024-02-11 19:21:23)
6.《ネタバレ》 前作『女王陛下のお気に入り』で免疫はできていたと思ってたヨルゴス・ランティモス作品ですが、今回もまた独特すぎるワンダーランド。前作では3人の女優の演技合戦が見物でしたが、今回はエマ・ストーンの独壇場。冒頭の赤ちゃん演技から終盤の難しい語彙も駆使する知力あふれる姿まで、やりたい放題という感じでした。それが女性の解放と自立という本作の主題とも見事に合致していて、彼女の表情や動き、ファッションを見ているだけでなんとも爽快な気分になるから不思議です。とくに、後半に彼女が「知」にめざめるきっかけが、「男」ではなく、本とシスターフッドであったというところは、とてもよかった。マッド・サイエンティストともいえるゴッドウィンがそれでも彼女と関係を築けていたのも、科学という知への執着があったから。また、船で出会った黒人青年とベラの会話もよかった。彼が現実の矛盾を象徴する「格差」をベラに見せつけることで、本作が単に性欲や性愛の話ではなく、私たちも生きる「世界」についての寓話であることが明らかになります。セックスのシーンばかりが話題になるのですが、実は「知」というものの可能性を描いたものとして受け取りました。

とはいえ個人的にはちょっと難点も。まあ、キャラの位置づけ上しょうがないのですが、マーク・ラファロ演じるダンカンにはもう少し奥行きがあってもよかったのではないかとは思いました。ダンカンと終盤に登場するある男性はまさに「有害な男性性」の象徴なのでしょうが、彼自身のなかにある理のようなものを浮き彫りにしてはじめて、「有害な男性性」と向き合えるのではないのかな、とも思いました。
ころりさんさん [映画館(字幕)] 7点(2024-01-29 21:46:04)
5.《ネタバレ》 なんか凄い物を見せられた気がするてのと、スタンリー・キューブリックの映画に近い雰囲気を感じる映画で、誰もが解る映画ではない。解る人だけ解れば良い!俺の描く映画はこうだ!どうだ?みたいな監督からの強烈なメッセージを作品から受け取る映画だ。いきなりエマ・ストーン演じる主人公ベラが海に落ちていく(自殺する)シーンから、何だ?てなる。その後もいつまた自殺するんじゃないか?てハラハラドキドキしながら見てました。次から次へと色んな男、それも本当に愛してる男ではなくて、ただお金の為に身体を売って生きるベラの変貌ぶりの凄まじさ、哀れなるものたちてタイトル通りの哀れぷり、ベラは勿論、ベラに振り回される男達が哀れな事といったらない。とにかくタイトルに相応しい哀れなものたちの哀れぷりが凄まじい。そんな中、エマ・ストーン演じるベラのラストの表情に単なる不幸な女ではない幸せみたいなものを感じずにはいられない。
青観さん [映画館(字幕)] 8点(2024-01-29 18:52:25)
4.《ネタバレ》 特に見た目の印象とかも含めて、私見ですが恐らく『千と千尋の神隠し』と同じ様な観方をしてゆけば好い作品かな、と思えてました(まあ、全年齢対象版か否か、といった辺りにはかなり大きな違いが在るとは思いますが)。ただ、その彼女らの「成長」の意味するトコロの解釈には、ある面において小さくない条件の違いが在る様にも思えていて、それはたぶん、今作中の表現を借りるならば「良識ある世界」をまずどう前提に置くか、というコトだと思われたのですよね。『千と千尋』の千尋というのは、その「良識ある世界」から出て異世界を旅して⇒そして(成長を携えて)そこにチャンと戻って来る、という役だったと思うのです。が今作のベラの旅というのは(ある意味)もっともっとプリミティブなモノで、彼女はそれこそ良識ある世界の「外」からやって来る、だから、結局その彼女が最後に一体ドコに辿り着くのか…といった部分については寧ろ、その予想が付かなかったコトそのものをかなり楽しんで観てゆけた、と思いますかね。

エマ・ストーンという方については、暫く前からは何とゆーかほぼほぼオールマイティ=演技のカテゴリの殆ど全てにおいて卓越している、という印象も覚えて居たのですが、その意味でも今作のベラの様な、美醜・善悪・理性と本能(或いは狂気)といった多面的な要素を包含するキャラクターには正に打って付けだったと思います。一箇所、短いシーンでしたが中盤のダンスのトコなんかも凄かったですよね!そりゃ『ラ・ラ・ランド』出てたんだからダンスは元々出来るんでしょーケド、あれはも~ダンスとゆーよりは何らか高度な「身体表現」の方のレベルだったと思うのですね(こんなコトまでこんなに出来るのか…)。いずれ、どんな域にまで到達するのか、楽しみで仕方ありません。
Yuki2Invyさん [映画館(字幕)] 8点(2024-01-28 13:33:26)
3.セクシャルすぎるかなとも思いますが、とても濃厚な時間を過ごせました。前半はエンターテイメント的でした。後半はエモーショナルな内容で、1人の女性が聡明に育っていく様を、短期間で見せてくれます。製作も兼ねえているエマ・ストーン渾身の映画ですね。
shoukanさん [映画館(字幕)] 8点(2024-01-28 11:51:01)
2.《ネタバレ》 天才外科医の手により瀕死から目覚めたアタシ。だけど脳がイカれてもうて、奇行を繰り返しちゃうド天然ハレンチ女に。そんな半人造人間的なアタシのSFアドベンチャー、ラブロマンス。放蕩男に連れ出されて世界を見る壮大な旅に出る…はずが内実は性の神髄を知るためのエロエロ紀行。死体のチ〇ポをビヨヨン、性器性〇りっこしよ…ヘンタイ女やんけ。イケない方向に目覚めていくアタシ。毎日がオナ〇ックス三昧。オトコを性の奴隷にし、楽しみ尽くしちゃう。深い理屈をこねているけれど、所詮は悦楽の追求に過ぎねえな。惜しげもなく、決して包み隠さず…そのおカラダをギョロ目いっぱいに披露しちゃうアタシ。エマ・ストーンがオスカー級の怪演。だけどもどちらかと言うと残念ながらアリガタクないんだけど、オカズには充分だ。
獅子-平常心さん [映画館(字幕)] 6点(2024-01-28 00:47:11)
1.嗚呼、とんでもない映画だった。

ひと月ほど前に、映画館内に貼られた特大ポスターを目にした瞬間から「予感」はあった。
何か得体のしれないものが見られそうな予感。何か特別な映画体験が生まれそうな予感。
大写しにされた主演女優の、怒りとも、悲しみとも、憂いとも、感情が掴みきれないその眼差しが、そういう予感を生んでいた。

チラホラとアカデミー賞関連のノミネート情報は見聞きしつつも、本作の作品世界についてはほとんど情報を入れずに、公開日翌日の鑑賞に至った。
朝から原因不明の頭痛が続いていて、その日の鑑賞をぎりぎりまで逡巡したけれど、体調が万全でないことで、逆に映画世界に没入できるとも思い、赴いた。

正直、もっと楽観的にファンタジックな映画世界を想像していたものだから、モノクロームで映し出された序盤の展開から面食らってしまった。
ゴシックホラーを彷彿とさせる怪奇とグロテスクは、想定していた“ライン”を嘲笑うかのように超えていき、油断をすると一気に置いてけぼりを食らうところだった。

今思えば、この序盤のモノクローム展開の中で、惜しげもなくトップレスを披露する主演女優エマ・ストーンに対して、「さすがアカデミー賞女優、体を張っているな」などと上から目線の称賛を送っていた自分は、あまりも幼稚で愚かだったと思う……。

死んだ母親の体に脳を埋め込まれて「生」を得た主人公ベラは、狭く、色の無い世界を抜け出して、人生という冒険に踏み出す。そして、「性」の目覚めとともに、その世界は過剰なまでの彩色と造形で彩られていく。
世界は綺羅びやかではあるけれど、その本質は決して美しくない。それは、「良識ある社会」のルールやあり方が、まったくもって美しくないからに他ならない。

綺羅びやかに彩られた醜い世界、そしてそこに巣食う“哀れなるものたち”

それはまさしく、呪いたくなるくらいにおぞましくて、哀しいこの現実世界と人間たちの本質だろう。
けれども、何よりも自分自身の“成長”に対して純真無垢で迷いのないベラは、それらすべてを受け入れ、自分の価値観に昇華していく。
タブーとされる行為も発言も、性別や職業、生まれた環境に対するレッテルも、希望も絶望も、薄っぺらな「良識」を盾にして拒否することなく、先ず全身で受け入れ、自分自身の「言葉」を紡いでいく。

主人公ベラのキャラクター造形は、すべてにおいて奇々怪々だけれど、その生き様は極めて“フェア”であり、昨今の耳ざわりの良さだけで乱用されているものとは一線を画す真の意味での“ジェンダーレス”を象徴する存在だった。
怪奇とグロ、ありとあらゆる禁忌が入り交じる本作の混沌とした映画世界が、ベラの達観した眼差しと共に、極めてフラットで高尚な地点へ着地していることが、そのことを雄弁に物語っていると思えた。


すべてを曝け出して、人間の本質をその身一つで体現してみせたエマ・ストーンは、授賞式を前にして二度目のオスカーに相応しいと確信した。
久しぶりに“緑色の超人”以外のキャラクターで卓越した演技を見せたマーク・ラファロも流石。プレイボーイの放蕩者を、その凋落ぶりも含めて見事に演じきっていたと思う。
古き父性の象徴であり、“怪物”の生みの親として、作中もっとも破滅的な人生観を披露するマッド・ドクターを演じたウィレム・デフォーの存在感も素晴らしかった。

時に「4mm」という超超広角レンズで写し取られた映像世界は、非現実的でありながら、この世界のすべてを文字通り広い視野で余すことなく映し出しているようでもあり、類まれな没入感を得られる。
その映画世界のすべてをクリエイトしたヨルゴス・ランティモス監督の圧倒的な世界観には、終始驚愕だった。


ふと“ジャケ買い”したアルバムが、想定外に強烈なパンクで、問答無用に脳味噌をかき混ぜられ、ほじくり返された感じ。(いや、本当に文字通りの映画なのだが)
奇想天外で、際限なくおぞましい映画世界ではあったが、不思議なくらいに拒絶感はなく、愛さずにはいられない。そして、これがこの世界の「理」だと言われてしまえば、確かにそうだと納得せざる得ない。

エンドロールを見送りながら、様々な感情と感覚が入り混じり、とてもじゃないが脳と心の整理がつかなかったけれど、朝から続いていたはずの頭痛は、きれいさっぱり消え去っていた。
鉄腕麗人さん [映画館(字幕)] 10点(2024-01-27 23:36:23)
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【点数情報】

Review人数 14人
平均点数 7.64点
000.00%
100.00%
200.00%
300.00%
400.00%
500.00%
6214.29%
7428.57%
8642.86%
917.14%
1017.14%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 6.00点 Review1人
2 ストーリー評価 6.00点 Review2人
3 鑑賞後の後味 6.00点 Review2人
4 音楽評価 8.00点 Review2人
5 感泣評価 6.00点 Review1人
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【アカデミー賞 情報】

2023年 96回
作品賞 候補(ノミネート) 
主演女優賞エマ・ストーン受賞 
助演男優賞マーク・ラファロ候補(ノミネート) 
監督賞ヨルゴス・ランティモス候補(ノミネート) 
撮影賞ロビー・ライアン候補(ノミネート) 
作曲賞(ドラマ) 候補(ノミネート) 
美術賞 受賞 
衣装デザイン賞 受賞 
脚色賞 候補(ノミネート) 
編集賞 候補(ノミネート) 
メイクアップ&ヘアスタイリング賞 受賞 

【ゴールデングローブ賞 情報】

2023年 81回
作品賞(ミュージカル・コメディ部門) 受賞 
主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)エマ・ストーン受賞 
助演男優賞ウィレム・デフォー候補(ノミネート) 
助演男優賞マーク・ラファロ候補(ノミネート) 
監督賞ヨルゴス・ランティモス候補(ノミネート) 
脚本賞 候補(ノミネート) 
作曲賞 候補(ノミネート) 

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