1.《ネタバレ》 IMAXの大画面と大音響いっぱいに「山田尚子」を浴びたわ。それは雑味のない、どこを切り取ってもまごうことなき山田尚子監督の世界。光、色、音、水、空、窓、鳥。全編に監督が多用するモチーフに溢れていて。それはひたすら幸せな時間。
バンドものアニメって最近色々あって、そんな中では物語として特に目立った特徴のある、特異な作品というワケでは無いわ。ミッションスクールと教会を舞台に、聖書の教えがテーマとして芯に存在していることくらいかしら。
バンドが作られてゆく過程や等身大の悩み、それがドラマチックに、という訳ではなく、なんとなくこれまでにもあったようなカンジで(もっとも元々山田尚子監督はバンドものアニメの原初的な作品『けいおん!』の監督であるわけだけど)。猫に誘われて辿り着いた先に、なんていうのは何度も見たパターンね。
でも、それが山田尚子監督の手にかかると繊細で優しい、キラキラ輝く心地良い世界へと昇華されてゆくわ。そうね、『聲の形』みたいな厳しい痛みも『リズと青い鳥』みたいなせつなさもあまり無くて、『けいおん!』や『たまこラブストーリー』の世界に近いかしらね。
ディティールに凝り、色と音にこだわり、舞い上がってその先へ続く未来を祝福する、そんな映画。山田尚子監督の世界を無条件に愛する人には至福の時を過ごせるカンジ(そういう意味ではちょっと限定的なのかも)。
今回、窓が重要なモチーフになっていて、外側と内側の世界を隔てていたり、それを越えて物語が動いたり。全然違うジャンルだけれど同じように窓がメタファーになっていた『戦場のピアニスト』を思い出したりもしたわ。
あと長崎、離島、教会、音楽映画、そしてガッキーって事で『くちびるに歌を』も。山田尚子監督版『くちびるに歌を』ってところかしら。
山田尚子監督作品としてはこれまでで最も大規模な公開のされ方だけど(IMAX版が上映されるくらいだし)、そんなに気負うことなく、サラリと触れるのがいいと思うわ(アタシはガチガチに期待しまくってたのだけど)。