126.原作ものの悪いところを最大限に引き出してしまっている。
読んでいないが、あまりにも雰囲気が継ぎ接ぎで単なる映像化の一例になってしまった感じだ。
一巻でファンが悶えるポイントを、らしい映像化でつなげていったという感じではないかと思う。
おそらく中終盤が持つだろう原作の中核的な色ではなく、80年代風ファンタジー映画という個性でまとめられているのは疑問だった。
もしこの雰囲気が原作の雰囲気であればそれは原作が原作ものを売りにしているファンタジー映画に劣る可能性があるがそうではないと思う。
原作ものは、原作があるからベースの話はしっかりしているはず。という誤解を上手に使わなくちゃいけないと思う。
指輪物語でさえ序盤のフワフワ感から中盤以降後半に進むに従って急速に固まっていく感じ。
指輪物語が映画化されるとき、最終盤の味わいを基準に序盤の雰囲気を入れ替えて、開始からラストまで一貫した物語がどっしりと据わるというところに文字通り「重さ」があった。
正直、通常のシリーズものでは作ごとに同一のスタッフでも雰囲気や話作りが異なるのが普通。
だけど、ファンタジーものはそうはいかない。締まった雰囲気と筋の通り具合が一番重要だから。
指輪物語は原作ものがすでにして完成品であるという誤解をこの上なく上手に利用して、原作愛読者でさえ完全に映画化されたと一瞬でもそう思ってしまう筋を作って見せた。
原作で一番深く没入する、終盤の下りのあの雰囲気で全編をリフォームし、序盤からラストまでぶれずに紛れもなく指輪物語であるという認識を与えていた。
こういう良い作り方がすでに存在するにもかかわらず、素直にパクらずビジュアルに振った作りをやってしまったのが残念。そのビジュアルも、明らかに金がかかってないシーンが混ざっているせいでただの暇つぶしにもってこいのそこそこ面白い映画になってしまった。ファンタジーものの金字塔のはずなのに・・・。
とはいえ、ただの映画であれば、そうつまらないものではないからこれはこれで良いのかなと思う。
かわいそうなのはやはり、原作を擦りきれるまで読んでいる愛読者だ。
愛読書がこれじゃなくて良かった。