1.《ネタバレ》 ジュリエットを演じるには、私は歳を取り過ぎてる?――。1981年、リヴァプール。長い下積み生活を続ける売れない役者ピーターの元にある日、一本の電話が掛かってくる。過去にオスカーを獲得したこともある、かつての人気女優グロリア・グレアムが公演中の劇場で突然倒れたというのだ。何故か彼女は病院でも家族の元でもなく、ピーターのアパートに運んでほしいと訴えたらしい。戸惑いつつも彼は、両親や弟夫婦も住む自らのアパートへと彼女を連れてきてもらう。胃にガスが溜まっただけですぐに良くなるというグロリア。彼女との再会は、この数年間のともに過ごした濃密でかけがえのない日々を彼に蘇らせるのだった。運命的な出会いと初めてのデート、還暦に近い女性と28歳の自分との歳の差を越えて過ごした幸せな月日、そして愛に満ちた情熱的なセックス――。だが、いつまで経ってもグロリアに回復の兆しは見られない。主治医と連絡を取ったピーターは、彼女の本当の病名を知ってしまう…。実話を基に、往年の名女優と売れない役者との30歳もの歳の差を乗り越えて紡いだ愛の日々をドラマティックに描いたラブ・ストーリー。いつまでも女としての誇りを失わなかった、そんなかつての人気女優を演じるのは同じく還暦に近い名女優アネット・ベニング。本作の最大の見所は、いつまでも若々しい彼女のチャーミングな魅力に尽きると思います。確かに四人も子供がいる年相応の見た目なのですが、やはり女優と言う職業柄なのか、終始凛とした彼女の美しさに思わず惚れ惚れしちゃいました。そして、二人の大胆なラブシーンにちょっとびっくり。でも、きっと撮り方もあるのでしょうけど、終始上品で美しく、また実に官能的で大変良かったです。普段は若い子のばかり見てる僕でも、たまには熟女ものも見てみようかななんて思ってみたり(笑)。また回想シーンへの入り方も凄く凝った撮り方をしているのも印象的でした。と、ラブストーリーとしてはすこぶる王道で充分及第点ではあるのですが、その分物足りなさを感じたのも事実。あまりにもオーソドックス過ぎて、こちらの想定した範囲を一切越えてこないんですよね、これ。まあ原作がこの青年の回想録と言うことで、かなり思い出美化フィルターが掛かっているからなんでしょうけど、ちょっとあまりにキレイごと過ぎたのが僕的にはちょっぴり不満でした。もう少しこの青年の打算的なずるい部分(恐らく経済的な)にも踏み込んで欲しかったですかね。そしたらこのきれいごとなお話にピリリとした隠し味が利いて、より深みのある物語になったと思うのですが。まあでもそこは好みの問題。どんなに歳を取っても男と女でありたいと思わせる、なかなか美しいラブストーリーでありました。