100.この頃の映画は暗い夜の場面でも照明が照らされて画面が不自然に明るかったりするのですが、この映画の場合暗い地下のシーンでは手持ちのランプの火のみで照らされ、人工的ではない自然な照明が現代でも通用するリアリティを生み出しています。それがまた通路を歩くシーンでは光が輪のようになって美しい効果をもたらしています。いい意味でドラマ性が希薄な作品です。最後のシーンまでは5人が仲良しで一つの目的に向かって一致団結し、いじめや対立が起きたりしないのがいいんですよね。基本的には看守とすら対立せず安直なドラマチックな展開は排除されてびっくりするぐらい人がよい人間しか出てきません。そのためか変なことを言うようですが、この映画は深刻な脱獄というよりは修学旅行の夜や学園祭の準備をしているかのようなわくわくする感じがあるんですよね。持ち物検査をされ、先生に隠れて夜遅くまで遊んだり、手作業で何かを作ったり、散らかして掃除をしたり、ラストも仲の良かった友達と進路の違いで別れることになるような寂しさを感じました。監獄とはまるで学校のようなもの、いや、学校とは監獄のようなものというのがより適切かもしれません。そういうところからこの映画は一種の青春映画のような気持ちで見れちゃうのです。 |
★99.《ネタバレ》 面白いな~超絶シンプルで、かつ無駄も(全くと言って好いホドに)皆無な、完成度で言えば特A級という作品かと思いました。いや、ひたすら続く穴掘りにしたって、コレはコレ位の尺で何度もじっくり描く必要が確実にあるモノだと思いますし、音楽が無いのだってそりゃ刑務所ですから(しかもこっそり脱獄しよーとして夜な夜な穴掘ってるのですから)。でも、それ故に全編通してごく静か…ながら緊迫感に溢れた実に好い雰囲気(コレもごくフレンチ・ノワールの「粋」とでもゆーか)が醸されて居たとも思われて、コレは近いうちにまた深夜にでも静かに観たいな…と思ってしまいましたね(今はちょっとエアコンとか喧しいので、この秋にでも)。
でも、状況設定は確かに非常にシンプルですが、中でしっかりと描かれてゆく種々の人間性・人間模様とゆーのはまた際立って優れたモノだと思われましたよ。悪人とは言え、否、悪人だからこそのその持ちうる限りの知恵と体力(或いは「人間力」)を尽くしつつ、そして目的の為に5人見事なチームワークをも発揮していく様子も含めてコレはやはりどーしようもなく美しいモノだとも感じられました。その上で、ラストでソレを見事にブチ壊す裏切りの鮮やかさときたら!(⇒よく考えればコイツとて少なくとも妹とは後ろめたいコトの在る、確かな「悪人」の様にも思えますし)素晴らしいクラシックでした。 【Yuki2Invy】さん [DVD(字幕)] 8点(2022-07-04 23:49:52) |
98.60年前の作品とは思えない内容だった。 近年の下手な映画よりよっぽど深い。 ただの脱獄劇かと思ったら人間ドラマでした。 古いモノクロ映画さえ我慢できれば観れる。 しかしこの当時の刑務所ってこんな気楽なのか気がかり。 【愛野弾丸】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-10-07 18:59:09) |
97.《ネタバレ》 フレンチは基本相性合わないですが、これは違った。 脱獄映画色々見てきたが穴を掘るといういかにもアナログな作戦ながら 個性溢れる脱獄囚に人間の本質がうまく表現されていてクライマックスへ加速していく。 ガスパールはうまく利用され、そして疑心暗鬼を生み濃密なラストの心理劇。 「哀れだな」 映画史に残る名台詞でしょう。 |
96.《ネタバレ》 ひりつく程に緊張感のある映画は数あるけど、この一編はリアリティーを追求したが為の重さが違う作品になっていると思う。 脱出するための穴をひたすら掘る、掘る、掘る。太い鉄柵をヤスリで削り切る、切る、切る。又、一つ一つの作業内容を克明に見せる所等、無駄にさえ思えるシーンも、見終わってみると全てに意味がある事がわかる。そこには一切の音楽を廃し、代わりにコンクリートを打つ音、鉄柵を削る音だけが延々と続き、これ以上の効果音は無いだろう。この映画で唯一の街のシーンは終盤のマンホールから顔を出すシーンだけど、あれは本当にシャバの空気を感じた。 表情も無く淡々と職務を遂行する看守に対し、寡黙ながら人間らしい表情の5人の囚人たちが生き生きと描かれている所も感情移入させられた。 しかし、ガスパールという主人公は一見育ちが良い若者の様だが、それまでやってきた事はかなりの下衆野朗だと言う事が所々で見て取れる。それだけにあのドンデン返しのシーン直前のガスパールの表情にも騙され、そしてなる程と思わされた。いや、あの時点ではまだ仲間に対して複雑な思いがあったのだろう。更に所長との2時間の話は一切省かれているのであれこれ想像するだけなのもフランス映画らしい。 それにしてもラストの覗き鏡に突然映し出された大勢の看守には度肝を抜いた。 【仁】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2020-08-21 01:27:13) (良:1票) |
95.《ネタバレ》 なんとかっこ良い映画だろう。一コマ一コマに無駄が無く寡黙にきびきび人物紹介を済ませ、隙の無い脱獄計画を行う。モノクロが映えるパリの巨大地下空間の画も圧倒的。縦横無限につながる通路、トンネルに吸い込まれ小さくなってゆく灯り。地図が作成不可と言われるほどの巨大な異空間が舞台装置として満点。 そしてつくづくと「脱獄に必要なのは根気と丁寧さ」を思い知らされる長ーい固定カメラ。コンクリの壁を破る、鉄柵をヤスリで切る。ひとつひとつの作業をじっと見守るかのように画を動かさない。この我慢強いことは他の脱獄モノの追随を許さない。 ことごとく「しっかり描き切る」んですよね。差し入れの品を検品する場面も然り、散った土砂を刷毛できれいに清める場面然り。外した扉をはめ直す時はがしゃん、と心棒がはまるまでちゃんとやる。熱量の高い描写に、絡め取られるように酔ってしまいそう。 隣の房から反対側の房へと物品を受け渡しする、あそこも鮮やかだったなあ。 各キャラクターの性格も五人それぞれが見事に描き分けられており、だからこそ観てる者はラストにやられてしまうのですね。誰に、ってガスパールに。リーダーのマチュー、ねえやっぱり新人は引き入れるべきではなかったのだよ。完璧に進んでいた脱獄計画。ただ一つの穴が新入りの彼だった。でも、四人の仲間も我々も「ガスパールを入れてやれよ」って思ってたんだ。あの衝撃のラストまでは。 ガスパールは見るからに誠実な好青年。差し入れられた食料も気前良く皆と分かち合い、育ちの良さが滲み出る。 だけど、観客はラストシーンを経てから思い至る。そんなに良い奴だったか?と。相続した財産を使い果たした後は金持ち女のヒモになり、あげく義妹に手を出す奴。痴話げんかの末に刑務所行き。ふと頭をよぎるは所長と面談した時の金のライター。エンドロールを観ながらワタシは叫んでしまった。あああれは袖の下だったのか・・。しょてから抜かりなく権力に取り入ってたなんて。ラストで冒頭の伏線を回収するなんて・・! 脚本も画も役者もなにもかもが凄い。半世紀以上も前にフレンチノワールは完成しているのだなあ。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2019-11-02 15:20:56) (良:2票) |
94.ジャック・ベッケル監督、原作と脚本はジョゼ・ジョバンニ。 問題はジョゼ・ジョバンニという人です。 映画監督、脚本家、小説家として才能あふれる人なのですがこの人、 それ以前は相当な悪で死刑判決を受けた後、恩赦で辛うじて死刑を免れたという経歴を持つ人です。 で、本作で描かれる脱獄作戦のメンバーの1人でもあったという。どうりでリアルな訳です。 音楽が全く使われていない。徹底してエンターテイメント性を排した作りとなっていますが、 緊張感が一本の線で繋がっているかの如く最初から最後まで全く途切れない。 音楽が使われていないかわりに、無音の中に響くトンネルを掘る音、鉄格子を切るノコギリの音。 これがサスペンスを盛り上げるどんな音楽よりも効果的に作用しています。 冒頭に追加で脱獄メンバーに加わる若者以外は、他のメンバーに関しては名前以外何も明かさない。 しかしこの若者だけは全ての事情が冒頭で明らかにされます。 これが最後の最後になって効いてくる終盤のドラマの展開の見事さにも唸らされる作品です。 【とらや】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2019-09-08 21:12:40) |
93.《ネタバレ》 ●やけにスムーズに進行する脱獄計画。楽勝かと思いきや、敵もさるものだったというオチ。ま、そりゃガスパールも裏切りますよね。悲劇ですけど、こういうのは好きです。鏡に映った看守軍団の演出がすごい。こちらも「うわっ!」と声が出ました。●街中のマンホールから顔を出しながら、一旦引き返した二人。これで嫌な予感がしました。 【次郎丸三郎】さん [DVD(字幕)] 8点(2019-03-11 19:43:42) |
92.《ネタバレ》 緊張感のある良い映画ですね。 この映画や、「パピヨン」のような本物を観ると「ショーシャンク・・」などが、いかにふざけた娯楽脱獄映画であるか (ドリフのお笑いコントより出来の悪い作り話)、改めて分かるね 【cogito】さん [DVD(字幕)] 9点(2018-11-10 18:43:06) |
91.《ネタバレ》 いつまでも耳に残る恐るべき音の映画。 このコンクリート(?)を穿つ音の凄まじい音量よ!それは見る者の想像を遙か に超えている。どうして看守がこの音に気付かないのか?という疑問を誰もが抱 くのだが、しかし、誰もが有無を云わさず納得させられる「現実らしさ」を過剰 に超えた映画的現実。 地下道を手製のランプを光源にして行くシーンはまるでアイリスのような効果。 この画面も必見。全編に亘って見事なサスペンス演出。 【ゑぎ】さん [映画館(字幕)] 10点(2017-03-28 05:47:19) |
|
90.人間関係、リアルな穴掘り、主人公の人間描写、そして最後の苦悩と結末。文句無く面白いです。超オススメ。 【SUPISUTA】さん [DVD(字幕)] 10点(2016-12-27 18:46:25) |
89.《ネタバレ》 最初から最後の最後まで緊張感が続くね~、ただただ穴を掘ってるだけなんだけどさ。 おまけに最後の所長との2時間というのがまたミソだね。シンプルでかつ意味深な本作、とても面白かったな~~。オススメできると思いますよ 【Kaname】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-10-29 08:23:37) |
88.こいつはすごい映画だなぁ~。 普通なら省略を重ねて掘っていく様を見せるのに、そんな上っ面な技巧などなんのその。 板をはずしてコンクリートに金づちを打ちおろす。え? そんなところから始めるのかよ? とあきれるこちらの思惑などお構いなしに、ただひたすら掘る。掘る。全編掘るだけ。 それでいて全然だれない。 緊張感をはらみながらそれだけで一本の映画に仕上げるとか、並みの手腕じゃない。 最後のどんでん返しがまたにくいほど効いてる。 これぞ映画。 ジャクッベッケルといいクルーゾーといい、昔のフランス映画はすごいなぁ。 【kinks】さん [DVD(字幕)] 10点(2015-09-05 22:25:03) |
87.《ネタバレ》 ひたすら掘りますなぁ、本当に。最初の掘るシーンの長回しで、この映画はこういう見せ方をしながら進んでいくんだろうなって思いましたがその通りでした。出演者の5人とも個性豊かで楽しかったです。最後のエンディングはああいう感じでしたがみんなで脱出というエンディングも観てみたかったなって思いました。 【珈琲時間】さん [DVD(字幕)] 7点(2015-03-10 12:25:48) |
86.《ネタバレ》 本格派サスペンスでした。 ただ淡々と描かれています。リアリティーが凄いです。 作風はシンプルでストレートなのですが、 物足りなさや隙が一切ないです。 モノクロのタイトな作風に痺れます。 終盤あたりでなにか不吉な、嫌な緊張感が漂います。 口で語る以上に物語っている男たちの表情に引き込まれます。 ただ淡々と壁を砕いていくシーンにも退屈さが入り込む隙を見せない。 技巧がなせる完璧な映画だと思います。 【ゴシックヘッド】さん [DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 23:42:27) |
85.ヒリヒリする面白さ。 昔の映画は皆の評価の割りに大したことないものが多い中、 これは面白い。 |
84.《ネタバレ》 ジャック・ベッケルはフレンチ・ノワールで数々の傑作を手掛けた。 元々フィルム・ノワールはドイツのフリッツ・ラング「M」やジャン・ルノワールの「十字路の夜」が原型として広く知られているが(知らない?じゃあ今すぐググレ)、アメリカの「暗黒街の顔役」や「マルタの鷹」以来すっかりノワールのお株はアメリカに奪われてしまった。 そんなフィルム・ノワールをフレンンチ・ノワールとしてフランス・・・つまりヨーロッパに復活させた監督の一人がジャック・ベッケルだ。 宇宙刑事ジャン・ギャバンが売れたのもルノワールとベッケル様々です(ギャバンの本体はタバコ)。 そんなベッケルの傑作は「アラブの盗賊」「現金に手を出すな」「モンパルナスの灯」「幸福の設計」「肉体の冠」と豊富だが、最高傑作はやはり「穴」になるだろう。 戦後実際に起きた脱獄事件をモデルに、刑務所内における一大脱獄劇をスリル万点に描いていく。 見張りの目を盗んでのやり取りは終始ドキドキの連続で、何時警備員が飛び出して来るものかと緊張の糸が絶たれない。 土まみれになりながらも穴を掘り続ける男たちの力強さ、鉄格子よりも硬い囚人たちの絆。漢の映画だぜ。 女っ気の無い作品だが、“5人”に会いに来た「あの女」は囚人たちの絆にヒビを入れるファム・ファタールだったのかも。 ラストの壮絶な展開には唖然としてしまったが、最後まで見事な作品だった。もっとベッケルの作品が見たかった。惜しまれる。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 10点(2014-03-11 23:57:55) (良:1票) |
83.《ネタバレ》 穴を掘っていく過程を長回しでじっくり撮っているのでとてもリアル。脱獄メンバーのわざとらしいキャラ紹介の類はなく、メンバーの経歴にもほとんど触れずにあくまで脱獄する現在に焦点を当てている。『大脱走』のようなエンターテイメント性は排して、葛藤、疑惑、裏切りといった人間ドラマを丁寧に描く。BGMも使わず、とにかくリアリティにこだわった演出で『大脱走』とは対極にある印象。 ガスパールの妻が訴えを取り下げて脱獄する理由がなくなったことから、究極の選択を迫られる。ガスパールの立場なら仲間を裏切っても仕方ないと思わせるような設定が見事。所長との2時間の面会がどんなものだったかを明確には描いていないことが、いろいろイマジネーションを広げてくれる。 偵察用の小さな鏡を裏返したときに映った大勢の看守の姿は衝撃的。裏切られた仲間に感情移入して、湧き上がる殺意に思いっきり共感してしまう。疑われたことに対して憤ってみせたウソの演技がまた憎々しい。裏切った事情は汲めても、この迫真のウソ演技が主人公に対する嫌悪感を抑えきれなくしてしまう。せめてウソがもう少し下手だったり動揺が見えたら少しは救いがあったのに。 その突き放したようなところがフランス映画っぽいおもしろさではあるが。非常に余韻の残るインパクトのあるラストで、しばらくその余韻に浸ってしまうほど。 しばらくして再鑑賞しても、やっぱり面白い。 リアルで出会った平気で嘘をつく詐欺師のような男を思い出してしまった。 【飛鳥】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-08-03 22:30:32) |
82.《ネタバレ》 タバコが自由に吸えてることにビックリ。金のライターの件を考えると、ライターは使えないと思うのでマッチ? とにかく火が扱える 【だみお】さん [DVD(字幕)] 6点(2013-07-15 21:19:28) |
81.《ネタバレ》 冒頭で「この映画は私の体験を友人J・ベッケルが忠実に再現しました」なんて登場人物のひとりであるロラン(つまり彼が原作者J・ジョヴァンニということか)がシャバで語るからてっきり脱獄に成功したのかと思いこんでしまいました(笑)。それがいい意味でラストのサプライズに繋がるのでまあ良しといたしましょう。でもお勤めを果たして無事に出所出来るのなら、『パピヨン』の悪魔島とは違うんで何も無理して脱獄なんかしなくてもと思ってしまいます。このパラドックスを吹き飛ばしてしまうのが、床に穴をあけ地下水道に下り、さらに壁にトンネルを穿つまでのプロセスを見せる音楽をいっさい排した偏執的ともいえる演出です。同年に同様な演出技法を使ったR・ブレッソンの『スリ』も撮られているのも興味深い。 ラストの顛末にはいろいろな解釈が可能ですが、わたしはなんだかガスパールが裏切ったのではないと感じてしまいます。どうとも取れる様に色んな伏線を並べているのは監督の意図であり、このカオスそのものと言った終幕は仏サスペンス映画の良質な伝統を受け継いでいると思います。 【S&S】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-05-12 22:29:18) |