15.《ネタバレ》 これは運命的と言うべきだろう、特別養子縁組という "縁" によって結びついた二人の女たち、、佐都子とひかりの物語。 まず、佐都子 (とその家族たち) が住むところ。都心にあるタワーマンションの高層階であり、たくさんの観葉植物に光が降り注ぐ光景は、まるで天空の一室のようだ。かたや、ひかりが住む (ことになった) のは、広島の似島にあるベビーバトン。その風景こそ美しいが、はるか船でたどり着いた最果て、眼前間近に海が迫るロケーションは、彼女にはもう逃げ場がないことを否応なしに連想させられた。 ・・・ここまで、やはり二人の境遇を比較せざるを得ない。裕福で愛する夫と子がいる、、それだけが幸せの全てとは限らないが、人生の残酷さをまざまざと見せつけられた気がした。 ひかりが彼と抱き合う場面は、奇跡的に美しかった。それは、二人の愛をキレイに撮し取っただけではなく、今、その瞬間が彼女の人生で最も幸福な一瞬であることを刹那的に予感させるからだ。 映画は彼女の元から去った者たちを追うことはなく、その人生から徹底的に排除したかのようだ。 思えば、ひかりがたどった道は「八日目の蝉」に登場した、ある女 (永作博美) の人生とよく似ている。そして、ある女は、本作では全く違った人生を送って幸せになっていた、、。これは、偶然じゃない。 八日目の蝉 → 朝が来る。 きっと、この二作の関係も「ベビーバトン」と同じなんだ。 本作のラストは、大切な人と一緒にいることだけが幸せではない、という (ひかりと朝斗君にとっての) ハッピーエンドである、と信じたい。でも、ひかり (蒔田彩珠) には他の映画でもいいから、次こそ本当に幸せをつかんで欲しい、、と切に願う。 【タケノコ】さん [インターネット(邦画)] 8点(2024-01-17 22:32:54) |
14.河瀬直美監督の作品は初めて見たんですが、綺麗な風景描写に手持ちカメラも交えたドキュメンタリーっぽい映像とまあこういうのが映画祭では評価されるんだろうなというありがちなスタイルですね。序盤の永作博美と井浦新のパートはまるで特別養子縁組制度の教育ビデオのようにも思えてしまいます。冒頭の子供同士のいざこざなんて物語上必要なエピソードなのでしょうか?そんな感じで途中まではだいぶ冷めた目で見てたのですが、蒔田彩珠のパートに移ってからはかなり引き込まれました。特に広島のパートがすごくいいですね。ラブシーンは日本映画ではなかなか見ない美しさでその後の展開との落差も含めて印象的です。広島の一軒家での生活のシーンではありがちと思っていたスタイルも完璧にハマってきますね。台詞にも本物らしさがあり作劇上の作為も感じさせず、ドキュメンタリーのような真実性と絵画のような美しさが同居して人生のかけがえのない一瞬をそのまま切り取っているような感覚を覚えます。永作博美と井浦新のパートの方はいかにもなドラマ仕立てにも感じられあまり好きにはなれないのですが、蒔田彩珠のパートの素晴らしさは確かにこの評価の高さも納得できるものでした。 |
13.《ネタバレ》 オイラ、まひと。オイラには母が二人いる。オイラをもらってくれた神奈川の母ちゃんと、オイラを生んでくれた広島の母ちゃんだ。中学生でオイラを生んでから、不幸すぎて見た目もどんどんケバくなっていく広島の母ちゃん。親戚のおじさんをシバいて、おばあちゃんの耳を引っ張って痛タタタ…のシーンはオッたまげたよ。メチャクチャやんけ。挙句の果てに、疾走して死んだかと思ったけど会えて良かったよ。河瀬直美監督によるサスペンスドラマ。永作博美、蒔田彩珠が母ちゃんをそれぞれ熱演。傑作。 【獅子-平常心】さん [インターネット(邦画)] 8点(2023-08-07 01:07:10) (良:1票) |
12.《ネタバレ》 最初の方の全然話が進まない感じが結構ストレスだったが中盤から引き込まれ始めた。 ひかりがどんどん不幸になっていく感じが女性が一人で生きていく難しさという社会の問題提起とも感じる。 ひかりには是非幸せになって欲しい。 現実では二人の母親という環境って上手くいくんだろうか。 ひかりは新しい男を見つけて新しい家族を作るという選択肢がより良いと思う。 朝斗に固執しすぎるとこの先不幸になりそう。 【Dry-man】さん [インターネット(邦画)] 9点(2022-12-17 18:38:36) |
11.《ネタバレ》 作り方によってはどこかで観たような映画になりそうだが、ずっと少し緊張した感じが続く。 「朝と光」がテーマでもある。 終盤でのやり取りで「なんで私だけがこんな目に合わなければならないの!」に対して「馬鹿だから、だろ」という感じの短い応答は、世の中の非情な現実を突きつける。これを乗り越えて行かなければならない。 だから「まだ終わってない!!」という気持ちが未来に向かう。 【simple】さん [インターネット(邦画)] 7点(2022-08-07 13:43:50) |
10.《ネタバレ》 映画を観始めて、この映画は夫婦を中心に回っていく事を疑いもしませんでしたが、物語途中からひかりの話に進み、ずいぶんとひかりパートが長いなと思いながら見ていて、ようやく終わり近くになってこの映画は夫婦・ひかり双方が中心の映画であった事に気づきました。中学生のひかりと大人になったひかりが同一人物と気づけないぐらいの変わりようからひかりにとっての壮絶な数年間が想像されます。全編通じて明るいとは言えないシーンばかりですが、最後に未来への希望を少し残してくれた形でした。蛇足ですが、ベビーバトン代表の浅田美代子、どこかうさん臭さを醸し出す演技(?)というかなんというか、終わってからこの人で適役だったと思いました。 【珈琲時間】さん [インターネット(字幕)] 7点(2022-05-28 16:09:58) |
9.《ネタバレ》 養子については、実の親と育ての親はお互いを知らず会わずの方が良いとされているが、それを実感できる。 性教育は、北欧式に早い時期にしっかりとした方がよいことも実感できる。 それにしても少女がどん底に向かうスピードが速くて痛々しい。 なにかと大変な養子縁組問題にミステリーと感動も加わって、なかなか見せる映画になっている。 まあそれはともかく、子供がすくすくと育ってよかった。 【ほとはら】さん [インターネット(邦画)] 8点(2022-03-25 19:28:09) |
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8.《ネタバレ》 子供ができない夫婦、子供を手放した女の子、どちらの気持ちもグリグリ心に突き刺さって、もう魂が2つに分裂しそうになりました。演技も演出もかなりのリアリティをもってお話が進むのですが、面白いのは夫婦がたまたまテレビの特集を観るくだり。ここのシーンは子供の養子縁組を行ってる施設を、本当にテレビで特集を組んで放送してるかのようなテイストで、インタビューとかも本当に一般人に行ってるかのような(いや、ほんまにやってるのかも)、主役の夫婦と一緒にその番組を観てるかのような、いや観てるんです、本当に。だから映画全体も全然作り物に見えなくて。子供のいさかい問題とか、ママ友とかの微妙な距離感とか、子供が欲しくても自分の体にメスを入れるのに踏み込めない夫とか、子供を諦め旅行してる雰囲気とかも、メチャメチャ身近に感じて、グイグイ映画内に引っ張られました。僕も夫婦で中々子供ができませんでした。そんな時、やっぱ一瞬は頭をよぎるのです養子縁組。そこまでして子育てをしたいと思うのは、どーしてなんやろ。そんなことを考えながら、クレジットを見終えた後のサプライズでさらにダダ泣きしてしまいました。 【なにわ君】さん [インターネット(邦画)] 10点(2022-03-23 21:13:00) (良:2票) |
7.《ネタバレ》 私は男の監督はファンタジーを撮り、おんなの監督はリアルを撮ると思ってます。 男はロマンチストで、女はリアリストだ。 この映画も例外じゃない。 とにかく騙されたと思って見てほしい。 とんでもない衝撃を受けるはず。心をえぐられる。 正解はなに? なにが悪かったの?どうすればよかったの?様々な思いが錯綜するはず。 水戸黄門じゃない。正解を用意していない。 なんて残酷な物語なのか。 「嘘をついたときに朝が来る。真実が待っている」 映画を見終わったときにこのわけわかんない感想↑がまざまざと実感できると思います。 こんな深い映画はめったに無い。 鑑賞後はすさまじく爽やかな気持ちになるでしょう。 残酷さと爽やかさがせめぎ合う、 こんな映画はめったにない。なんて深いんだ。邦画もやる。 エンドロール後もあります。絶対見逃さないように。 【うさぎ】さん [CS・衛星(邦画)] 10点(2021-11-03 18:40:58) (良:1票) |
6.<原作未読>想像してたよりさらにヘビー…。英題はTrue Mothersっていうのか。これは素直に佐都子とひかりのことと受け取っていいだろう。ひかりの妊娠は思わぬことだが、ちゃんと愛する人の子であり、もし社会が許容するなら大切に育てたはずだ。だから彼女には母性みたいなものが既にある。しかし、経済的苦境はそんな我が子を不幸にするであろう行動にひかりを駆り立てていく。ポスターになっているのがまさにそのシーンなのだが、最後は… 一言で言えばやっぱり母なんだよね。そこに帰結する。女性原作者×女性監督だからこその説得力もあるのかな。演者に対する要求も「七人の侍」を撮ってた頃の黒澤監督ばりで驚くが、それがメインから脇まで実を結んでいるのだから大したもの。じつに丁寧に撮られた良い映画だが、振り返ればあそこはカットしても良かったかな…と感じる部分も無いわけじゃないので7点ということで。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-09-27 18:34:12) (良:2票) |
5.《ネタバレ》 いい映画だった。まず、朝斗を迎え入れるまでの展開が丁寧で感情移入させられる。説明会に行った時の「告知は必ず」「どちらかは仕事を辞めてもらう」などの条件に自分だったらと思いながら観てしまう。ドキュメンタリー風の描写も多いが、この映画ではその部分が表面だけを切り取ったような感覚があり、生んだ後、少女がどのような人生を歩んでいたのかが明らかになる度に印象的になる。観る前は生みの親が現れて育ての親が葛藤を覚えるような映画なのではと思ったが、「子どものための制度」に登場人物が寄り添っているという、私の浅はかな知識をこえている映画でした。 【ラグ】さん [インターネット(邦画)] 9点(2021-09-20 12:01:35) |
4.《ネタバレ》 今年見た映画の中で、今のところナンバー1。 子を持つ自分としては、ラストは号泣してしまった。 今自分が置かれている環境が、いかに恵まれているか、思い知らされた。 原作、監督ともに女性だけあって、男の卑怯さ、弱さ、役に立たないところ等々、これ以上なく容赦なく突いてくる。 逃げたくなるほどに鋭い視点で描かれており、男の私としては、もはや降参。 永作博美の演技も傑出して素晴らしい。 胸に突き刺さる、強烈な作品。 【にじばぶ】さん [インターネット(邦画)] 9点(2021-07-03 02:29:34) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 ラストの「なかったことにしないでください」の文字。 刺さりました。 「八日目の蝉」の永作博美に、養子の母役を演じさせるとはニクイですね。 前半の愛情いっぱいの永作の表情に、普通の女の子、ひかりが転げ落ちていく話のまん中を はさんで、後半の永作とひかりの対峙する場面。 エンディングの後の「会いたかったよ」の声。 絶望の中の光でした。 どうだと言わんばかりの、もう女性しか撮れない女性映画! 河瀨監督には、ただただ圧倒される。 【トント】さん [DVD(邦画)] 9点(2021-06-12 20:56:24) (良:2票) |
2.原作が素晴らしかったので鑑賞したが、これは非の打ち所のない映像化だった。 原作では、後半はずっとひかりの視点で描かれる為、読み終わるとひかりの方にばかり感情移入してしまいがちだったが、本作では構成を若干変えていて、佐都子とひかり両方の存在が常に感じられるようになっていた。それにより、どちらか一方ではなくより俯瞰して物語の全体像を捉える事が出来たので、より物語に深みが増しているようにさえ思えた。 そして、監督がこだわったという原作にもあった朝斗の視点。原作ではわずか7ページという短さではあったが、子供の視点が加わる事によりさらに踏み込んだ物語となっていてとても良いと思った。結局は子供が物語の中心として展開される佐都子とひかりの物語な訳だから、そこに子供の視点を描く事は欠かせないと思う。そこを一番重要だと考えた河瀬監督は本当にこの作品のテーマを理解しているなと感じたし、河瀬監督ならではの美しい風景描写や光のこだわり具合も物凄くこの作品にはまっていて、とにかく映像の持つ力に圧倒された。役者の演技も皆自然でとても良かった。 【ヴレア】さん [映画館(邦画)] 9点(2020-11-03 13:59:54) (良:2票) |
★1.《ネタバレ》 全体の構成としては、前半が永作博美の話で後半が蒔田彩珠の話、というのは明確である。もし、あくまでサスペンスに徹するのであれば、その主となる後半に比して前半をもう少しライトに済ませる、という選択肢も在った様に思う。そのひとつの理由は、この前半のヒューマンドラマとしての出来がそもそも非常に素晴らしく、こっちの話が更に展開していく訳ではないことが少し残念に感じられるというか、やや消化不良と言ってもよい様に感じられた、というか(まあ、単純に前半と後半で二度美味しい映画として味わう、で何の問題も無いとも思うケド)。
ただもう一点、少し気になると言ってしまうならば、前半の永作(+井浦)があくまで自然な台詞回しを実に慎重に言葉を選んで口にしてゆく、その部分に感じられる思慮深さと、後半の蒔田がとにかくどーにも自分が何をどう感じているのか、そしてそれをどう行動に落し込んでゆくべきなのかを全く突き詰められていないというトコロの短慮さが、この構成によって対比された時に、それがそのまま「親になる資格」の有り無しを冷徹に体現している様にも見えてしまうというか、むしろこれが本作の真のテーマなのではないかと思われるホドだ、というか(でもそれってちょっと残酷過ぎない?アンフェアじゃない?とも)。端的に、私は後半の蒔田にはあまり感情移入できなかった(正直に言えば、私が彼女に抱く感情はあのヤクザのものにも少し近いのですよね)。だからヒューマンドラマとしては、私にとって観ることにポジティブな意味があったのは圧倒的に前半だと言ってもよいのである。
とは言え本作、もっと平凡なオチかと思った肝心の後半のサスペンス的な部分のクライマックスにもかなり優れたアイデアが在るのだ(この部分を最も「キレ」好く観終わるためにも、蒔田彩珠に出来るだけ感情移入して観ていった方がよい作品だとは明言しておきたい)。こちらはこちらであまりにも残酷なこの結末からすれば、少しご都合主義にも思われ兼ねないオーラスについても、ここだけでも彼女に寄り添おうとするのは映画として決して許されないことでもないかと個人的には感じている(原作小説がどう終わるのかが少しだけ気になるトコロ)。
以上、話の内容の出来が率直にかなり優れた作品だと思っているが、例えば前述の自然でさり気なくも鋭く心を穿つ力強い台詞(脚本)のクオリティや、光、特に自然光の使い方にこだわった淡くて繊細な画づくりがもたらす美しくて心地好い空気感なども中々素晴らしかった。色々と普通に、さほど文句も無くオススメできる良作。 【Yuki2Invy】さん [映画館(邦画)] 8点(2020-11-03 01:16:20) (良:1票) |