26.《ネタバレ》 時は16世紀中ごろの大航海時代。アンデスの急峻な山道を進む人の列。ポンチョを羽織い荷物を運ぶインディオ。鎧兜を身に着け、武器を手に進む男達。登山には全く相応しくないドレスを纏い、籠に担がれ運ばれる女性もちらほら。エルドラド(黄金郷)を目指しアンデスの秘境を探索するコンキスタドール(征服者)御一行の物語。客に媚びるようなエンターテインメント性は全くありません。厳しい自然や、原住民たちの神出鬼没な攻撃に苦しみながらも黄金郷を目指す侵略者たちの様子をカメラに収めています。人が数人死んでもおかしくない危険なロケの割に、淡々とした長回しで、手に汗握るような映像的臨場感が薄く、ちょっともったいなく感じてしまうところもありますが、過剰な演出がない分、リアリティを感じとれるのも事実で、この作品の味として受け入れることができます。終盤、筏にサルの群れが襲来するシーンは圧巻です。 【camuson】さん [DVD(字幕)] 6点(2023-07-10 19:15:12) |
★25.《ネタバレ》 極めて重苦しい雰囲気の中に描かれるのは、静かな絶望。そしてそれは確実に全員の生命を奪い去るであろう極限状況と、そんな極限状況下でも人間を支配して狂気へと誘ってゆく醜く際限の無い欲望そのものであるように思う。非常にネガティブな映画であり、ストーリーも希薄なので面白い・楽しいという作品では全くないが、逆にここまでの醜悪で破滅的な映画全体の空気は、ある意味ものすごく貴重。これこそ観て損は無いという映画。 【Yuki2Invy】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-01-11 23:14:23) |
24.《ネタバレ》 見応えある! こんな映画は、あまりない・・ 未開の地への征服過程における、ここでは文明の敗北(消失)を 描いてる。 だがどうだろう、この10年後に同じような設定で、今度は 「フィツカラルド」で文明(文化)の勝利を描く。 本作とこの作品の監督の問題意識の変わり様は興味深い。 かつての王子が、征服され奴隷になっているキャラの設定もすごい。 ヘルツォークの人間の罪深さへの容赦ない表現がニュージャーマンシネマ真骨頂である。 【トント】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2019-12-18 02:20:05) |
23.《ネタバレ》 冒頭の山中行軍ロングショットの強烈さだけで、つかみはOKすぎるというか、すでに一発KO状態です。その後、おもむろに別動隊が結成され、川下りとなり、さあスタート、となるのですが、もうその時点で、迫り来る破滅や破綻の予感が画面から全開です。川辺にただみんなで座っているだけのシーンでも、これは着実に崩壊に向かっているというのがなぜか分かってしまいます。最後の仁王立ちのアギーレは、もはや人間なのか亡霊なのかも判然としません。ストーリーらしいストーリーは何もないのに、何かとんでもないものを見てしまったという気分でした。 【Olias】さん [DVD(字幕)] 7点(2019-07-13 03:02:24) |
22.《ネタバレ》 地獄巡りのような映画。地獄の黙示録の元ネタのような作品。ラストに猿が襲ってくるシーンは、鳥肌もの。 【にけ】さん [映画館(字幕)] 6点(2019-01-03 19:46:51) |
21.《ネタバレ》 冒頭の山下りのシーンから、この映画のヤバさがひしひしと伝わってきます。もう完全に未踏の地みたいなジャングルの山道で実際にロケをするという発想自体が、この監督の狂気を具現しているとしか言いようがないです。アギーレが反乱を起こしエル・ドラドを目指して筏で河を下ってゆき全滅するのがストーリーですが、どこまでが演出なのか迷わされる映像の連続でもあります。前半の怒涛渦巻くアマゾンを筏で下るシーンも、これはマジで事故ったら大惨事という危険な撮影です。またクラウス・キンスキーの演技というか表情がマジでヤバい。ヘルツォークがキンスキーをあわや殺すところだったというエピソードは有名ですが、キンスキーのあの狂気のまなざしは監督に対する怒りというか不信感が表れていたんですね。アギーレがなぜか娘を同行させますが(この娘、劇中で一言もセリフを発しません)、この二人は近親相姦の関係にあるんじゃないかと思わせる撮り方です。この娘役がナターシャ・キンスキーだと間違えてる解説を見かけますが、クラウスも実はナタキンを使って欲しかったんじゃないでしょうか。 あのジャングルの大木に朽ち果てた帆船が引っかかっている摩訶不思議なシーン、これが『フィッツカラルド』につながってゆくんでしょうね。 【S&S】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2018-07-20 23:51:02) (良:1票) |
20.《ネタバレ》 ヴェルナー・ヘルツォーク監督とクラウス・キンスキーの最凶タッグの90分に亘る狂乱模様におなか一杯。心意気だけの歪んだ男のロマンの結末がリス猿の大群というのが侘しいが、このまま朽ちる事無く一花も二花も咲かせるのだろうと思わせるアギーレが印象深い。 |
19.《ネタバレ》 地味な内容ですが、昔の開拓者たちを間近で見ているかのようなカメラが生々しい。静かな川の流れが重苦しい雰囲気を醸し出してオリマシタ 【Kaname】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-03-31 09:48:47) |
18.大自然に囲まれた大河に浮かぶ一艘の筏、これが全てを物語っていた。敵の姿も見えない、目指す場所も分からない。自分がどこにいるのか、これからどうなり、どこに向かうのかも分からない。そんな中で、互いに疑心暗鬼になり傷つけあい、尽きない欲望に駆られ身も心も疲弊していく。極限の状況の中ではあるものの、むしろそんな状況であるからこそ、これが人生、人間そのものなのかもしれないと思った。 そして、そんな人間を包み込むように、また嘲笑うかのようにただあるがままの姿をさらし続ける自然。この構図は人間が存在し続ける限り変わらない。改めて人間というもの、自然というもの、人間に対する自然というものをCGに頼ることのない、生々しい映像で見せ付けられた。 【ちゃじじ】さん [DVD(字幕)] 8点(2015-10-21 18:22:12) |
17.《ネタバレ》 1560年、桶狭間の戦に勝利した織田信長は天下布武の第一歩を踏み出した。同じ年、スペイン探検隊の分遣隊副将アギーレがアンデス黄金郷探索の旅に出た。そのアギーレの物語。熱帯の密林を粗放な筏で縫う川下りは危難を極め、出発早々筏の一つが渦に巻かれ滞留してしまう。隊長は救出を命じるが、筏の隊員達は何者かに銃殺される。隊長が死体の回収を命じると筏は大砲で粉砕される。すべてアギーレの仕業だ。隊長が徒歩での撤退を決めると、アギーレは反逆して隊長を撃ち、隊を掌握して筏で黄金郷を目指す。しかし、この野望に満ちた遠征は浅慮無謀であった。筏を阻む大自然、堪えがたい暑さ、見えない先住民からの散発的な攻撃、首狩り族の恐怖、食糧不足、仲間割れ等で徐々に自壊してゆく。修道士は長いものに巻かれろで面従腹背を決め込む。処刑された隊長の愛人は首狩り族の潜む密林に姿を消す。貴族の身分故に皇帝に指名された男は、川が大きく蛇行する度に領土宣言し、既に領土はスペインの六倍に達したと悦に入る。その姿は滑稽で、食糧を独占していた為、何者かに扼殺される。娘は死に、残りの隊員は熱病に斃れる。それでもアギーレは屈しない。「俺は神の怒り。神話のように娘と結婚し、この地上に比類のない純潔の王朝を築く」と嘯く。冒頭、大俯瞰で山脈を越えるスペイン探検隊を捉えた神の視点は、最後、たった一人になった筏上のアギーレを回転して映し出す。終始、鷹揚に身を反らせ、鋭い眼光で周囲を圧する主役の演技は圧巻だ。ここにはスペインによる中南米大陸文明消滅、帝国植民地主義、奴隷制度等に対する批判は無い。ただ熱病にように己の野望に向って突き進む、鋼の意志を持った男を描く。彼に常識は通じない。全てを失っても絶望せず、猶、前進を続ける。彼にとって樹上の船は決して幻ではない。彼を“欲望で身を滅ぼした狂人”と断じるのは容易いが、本作の主題は逆で、むしろ彼のような人間の賛美なのだ。現代文明では必要とされないが、過去において、人知を超えた、神のような強力な意志を持つことの出来た人間が前人未到の大自然を切り拓いてきたのかもしれない。数万年前、アリューシャン海峡を越えて米大陸に到達したモンゴロイドのように。そこでアギーレと信長の姿が重なる。勝てば覇者、敗れれば狂人、紙一重だ。巨大な野望である「神の怒り」は人間を人間足らしめた原動力だったのかもしれない。 【よしのぶ】さん [DVD(字幕)] 7点(2014-12-07 20:24:31) |
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16.冒頭からの苦難の行軍シーンは、本編というより、まるでメーキング映像を観ているかのような。“リアル”という言葉では表現し切れない、ドヨ~ンとした雰囲気が充満しています。で、命からがら、何とか川べりの平坦な地を見つけたところでようやく、お芝居でも始めましょか、映画の撮影でも始めましょか、まるでそんな感じの作品なんですね。それまで大自然の前に隷属していた人間たちが、矮小な物語を語り始める。だけど大自然はどこ吹く風、まったくの理不尽さを持って、彼らを取り巻く。アギーレの野心は、人間たちのささやかな秩序を無秩序に変えていくけれど、その無秩序もまた大自然の得体の知れなさの前においては、実にささやかなもの。と言う訳で、小さな小さな人間の社会・野心・挫折、それを取り巻く圧倒的な「得体の知れなさ」、これだけでもって成立している作品です。結局のところ、彼らをとりまく“外部”が一体どうなっているのか、何が起こっているのか、さっぱりわからないけれど、その“外部”に対し「敵わなかった」「敗れ去った」と言う事だけは痛いほどに伝わってくる、という、何ともエゲツない作品であります。 【鱗歌】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-03-26 21:19:59) |
15.《ネタバレ》 学生時代、名画座で観ました。併映は「フィツカラルド」だった。正直、その時は面白いと思わなかった。スペインの探検隊がペルー側からエルドラド(黄金郷)を目指してアマゾンを下る話だけど、冒険活劇ではありません。ハリウッド作品を見慣れた目には、フィクションとして中途半端に映ったのでしょう。 でも、30年ぶりの再見は見応えがありました。主人公アギーレの狂気の顛末を描くために色んなことをやってます。冒頭、スペインの軍勢が霞の棚引くアンデスの急勾配を下る。奴隷にした原住民を連れ、馬や豚を引き、大砲まで運んでいる。もの凄く手間のかかるロケで、難儀な行軍が演技に見えない。本隊から40名の先遣隊を選抜し、筏に乗って川を下る。動力の無い筏は不安定で半ば沈みながら進む。正確には川に流されて行くだけだ。その筏には、小さな筏が付属している。衝立で目隠しされた小筏はトイレである。この種の映画でトイレを描写した作品は記憶にない。結局、考えられる限り、当時と同じ環境を作ることに執着していることが分かる。 なぜ、そうする必要があったのか。観客を当時の状況に放り込み「あなたなら引き返すか?」と問いかけているのだと思います。同時に、アギーレのやり方の是非は問題ではなく、中世から近代に至る「世界史」はこのようにして作られて来たのだと訴えている気がしました。独善的な男の妄執が原動力となり、周囲を巻き込んで野心が肥大する。そして、おそらくは殆どが失敗に終わり、幸運な一握りの事例だけが「世界史」に記される。年表に載らない歴史の瑣末を正確に再現した作品ではないかと思います。着眼は秀逸ですが、見せるための方法論が普通じゃない。監督も狂気の人ですね。 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(字幕)] 7点(2013-08-05 02:43:54) |
14.舞台は南米でも、ニーチェの国の映画。圧倒的な意志の肯定者。意志即反逆、自然の征服なの。面白いのはアギーレの意志が次第に膨らんでくるのに反比例して、河が穏やかになっていくとこ。アギーレに対抗して荒れ狂ってもいいのに、静まっていく。そこがこの映画の一番怖いところ。アギーレがいくら意志を膨張させても、河(自然)のほうはびくともせず、より静かに包み込んでくる。それでいて樹の高くに引っかかった船でちらっと実力を見せびらかす。それを見てアギーレはますます対抗意識を燃やすわけ。インディオの襲撃にしても、ほとんど姿を見せずに森そのものが攻めてくるみたいになってる。大自然そのものと戦ってる感じ。自分の意志の力で世界を変形させようとした男、そういう人物が歴史をときに危険に導き、また進歩させていったのが人類史なんだ。全体ドキュメントタッチのカメラで、レンズに水しぶきがかかってもそのままでいっちゃうの。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-07-11 14:50:19) (良:2票) |
13.強大な力にまかせて他者を屈服させようとするときに迎える典型的な結末を、高温多湿のジャングルを舞台にねちっこく描き出していきます。規模や形こそ違えこれは私たちの生活の中でも日々繰り返されている出来事です。ODAの現場でもよく見られますね。 【きのう来た人】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-01-24 06:52:21) |
12.「フィツカラルド」と似たテイストの作品。 こちらもに“狂気”は渦巻いている。 音楽はポポル・ヴーが担当しているが、映画世界と見事にマッチしている。 改めて、ヘルツォークの音楽選びのセンスに脱帽だ。 【にじばぶ】さん [ビデオ(字幕)] 5点(2007-10-04 10:39:56) |
11.史実に基づいたお話とは申しながら、ストーリーらしいストーリーはありません。映画全編にわたって熱帯雨林の如く息苦しいほど蒸し暑い空気が感じられ、重く退廃的な狂気だけが存在しているようです。ヘルツォーク監督の「キンスキー わが最愛の敵」などによる撮影裏話などを知っているとそれなりに楽しめるように思われます。しかし何の予備知識もなかった初見の際には、幻想的にも感じられた地獄巡りのような行軍シーンに心惹かれるところはありましたが、「あ~鬱陶しい」と言うのが正直な感想でした。どど~んとダウナーな気分になりたいときにはお勧めだと思います。 【ぶくぶく】さん 6点(2005-03-18 13:49:44) |
10.例えばドラクエをやってて深いダンジョンに準備万端で突入したものの、凶悪なモンスターによって次々に仲間を失いながら、気がつけばリレミトを使うMPも残っておらず、それでも奥深くへと進んでいくときの孤独な勇者の心境。アギーレは決して狂ったわけではない。蜃気楼を追い続ける砂漠の旅人である。自分の大志の実現に1mmもの疑いを抱いていない。夢の実現と狂気の関係は笑いとホラーの関係と比例する。そして狂気は笑いの延長線上にある。しかし映画としての面白みはあまりない。これは「フィツカラルド」にもいえることで、ヘルツォークが作る人物にイマイチ魅力がない。こういう人はドキュメンタリーの方が面白いものを作れるんじゃないかと思う。 【Qfwfq】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2004-08-31 16:33:56) |
9.最初のショットがもう、あまりに絶望的で。密林版『八甲田山』である事をこの上なく見せてくれている絵作りでした。でもそこには幻想的な音楽があった。まるで麻薬のようにアンデス越えの苦しみを麻痺させて、一行と共に旅してるかのような錯覚に陥りました。「これぞ、映画だ」。そう思いましたねえ。川下りが始まってからは年末年始の民放特番みたいな映像が延々と続いて、ショボーンって感じでしたが。でもそれもこれもラストシーンの壮絶さを見るまでのこと。あの何だかよくわからない勝利宣言を前に、ぶっ飛ばない観客が居ましょうか。そしてそこにも、あの苦痛を和らげる麻薬的サウンドが満ちておりました。冒険に出たはいいけど結局大自然に負けちゃった者は、みんなあんな幻覚をみるのかもなあ…。 【エスねこ】さん 7点(2004-03-15 00:20:23) |
8.なにがなんだかよくわからないタイトルに、難解そうだと敬遠する人もいるかもしれませんが、実はカンタンです。まず、アギーレとは主人公の名前。エルドラドを求めるスペインの征服者たちの狂気の物語です。まぁ、キンスキー親父が出演していますので、狂気の物語でないはずがない。そういう映画です。 【伊達邦彦】さん 8点(2004-02-23 17:23:33) |
7.ラストシーンは今でも鮮明に覚えている。狂気は欲望から生じるのか、欲望(理想)は狂気(妄想)から生じるのか、そのために一体どれだけの人間の命が失われたか?背筋が寒くなるような映画だけど一見の価値は充分過ぎるほどある。いや、現実は多分こうだろうから、必見の映画かもしれない。 【大木眠魚】さん 8点(2003-12-23 17:09:59) |