★35.《ネタバレ》 「命を賭しても好いと思える様な(自分にとって)重要な」仕事と、「ただ命を賭す覚悟が無ければ出来ない」仕事、というのは似て非なるものであり、一見はレジスタンス活動の危険な任務の齎す高い目的意識で充実している様に見えなくもないマチェクの人生は、その実確かにとても空虚である様に思える。崇高な理想の下に立たせて「貰って」はいたとしても、所詮彼も(替えの効く)歯車でしかないのだ。『世代』と同様にコレも本質的には青春映画、ただ今作は徹底して、その何者でもない若さの「虚無感」を逆説的に描き出している様に思われる。
クリスティーナがマチェクに惹かれたのは、彼に自分と同じモノを感じ取った、からだと思いませんか。彼女も虚ろな人生を生きているのでしょうが(彼女の人生をそう至らしめたのは確実に戦争なのでしょうが)、だから今作で描かれる彼と彼女の交りというのは、おそらく愛だ恋だと言えるモノでもない様に思えて、唯「成り合わざる」トコロの埋め合せ合い、なのではないかと思うのです。でも、不思議にもその一夜だけの情交には、これも逆にどこかピュアで清々しい人間性というのを感じ取れたのですよね。それは、終戦を祝う乱痴気騒ぎと其処で浮かれる濁々とした「大人」達、其れと彼らとの対比が見せる幻、なのかも知れませんが。 【Yuki2Invy】さん [インターネット(字幕)] 8点(2021-07-23 22:20:18) |
34.ドイツが降伏し戦争は終わっても、ポーランドの民衆の闘いは終わらない。 本作製作当時はソ連が東欧諸国で影響力を持つ中、思想や映画などの文化への検閲も厳しい時代だったという。 主人公マチェクの運命はこれしかなかったのか…。ゴミの山の中で死んでいく姿で終わるラストは強烈。 これはアンジェイ・ワイダの、第2次大戦から祖国ポーランドを思い、戦った当時の若者達への鎮魂歌か。 その一方で、マチェクとバーで働く女との一夜限りのロマンスが悲しくも心に残ります。 【とらや】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-12-03 20:19:20) |
33.《ネタバレ》 午前10時の映画祭を利用し劇場で鑑賞。勿論、歴史や政治背景抜きで語れない映画だということが前提となるのだろうが、この映画が名画とされているのは、そもそも「娯楽映画」としてきちんと面白いからだろう。マチェクのニヒルなかっこよさ、そして自身のアイデンティティを巡る葛藤は青春映画としても見れるし、シュチューカ暗殺に関するシークエンスはサスペンスフルでアクションもかっこよい。時代や政治背景を良く熟知した上で見ることでさらに理解が深まることは、確かにあるだろうが、仮に何も知らず表面的に観たとしても娯楽映画として充分面白く作られている。途中宴会のシーンで少し退屈に感じるシーンがあることもあるが、かといって不要なシーンかというとそういうこともない。ホテルの電話ボックスから電話するシーンや花束を持った子供が出てくるオープニングの銃撃シーンなど、作画としては「市民ケーン」や黒澤明の「野良犬」からの影響を確かに感じられた。もう60年以上も前の作品なのだが、何も古臭さを感じさせず、今でもスタイリッシュで普遍的な魅力に溢れている作品だと思う。恐らくその時その時の「若者」が見て、強く影響を受けるべき映画なのだろう。シュチューカを抱きかかえながら背後から花火が上がるシーンの美しさというか儚さ、こういう映画的に優れた、かっこよい演出が多いのも本作のポイントだろう。 |
32.《ネタバレ》 ソリッドな質感の独特の雰囲気がありますね。第二次世界大戦終戦直後のポーランドの状況が伝わってくるかのようです。ゴミ山の上をさまよう姿はとても印象的でゴザイマシタ 【Kaname】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-08-20 10:54:08) |
31.《ネタバレ》 政治犯でも、やはり人を殺めると、もうまっとうな生活には戻れない。カウンターの女性は、生きる意味を教えてあげると同時に、彼に死を約束させたのだ。それはヤクザ映画でよく見る図式ではあるが、戦争になると、誰しもがこのような立場に立たされるのかもしれない。正気じゃやってられないと、夜の間はずっと、宴は続く。平和とは、一枚下はこのような地獄だってことを教えられる。 【トント】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2014-07-04 03:57:27) |
30.《ネタバレ》 第二次世界大戦での連合国戦勝日である1945年5月8日の出来事。NYやロンドンでは大群衆が繰り出してのお祭り騒ぎだったのに、このポーランドでの異様なまでの冷静さと静けさはいったい何なんだろう。まだ正式に共産主義政権が成立したわけではないが、人々が自分たちの国の運命になんの希望も持てなくなっているのが痛々しい。 刹那的に生きてきたマチェクが、恋に落ちて未来を考えようとした途端に悲惨な死を迎えることになるのはなんという皮肉なことか。廃墟の教会でマチェクとクリスチナが教会で話すシーン、カメラの前景にアンチ・クライストの象徴でもある逆さまになった十字架のキリスト像を映すことで、もうポーランドには神はいないんだというA・ワイダの叫びが聞こえる様な気がします。 厳しい検閲制度があった当時ですから、いろいろと意味深なメタファーが散りばめられているけど、そこには詩的なセンスを感じさせられるシーンが多々あります。夜が明けて朝日が室内に差し込んできますが、そのあまりに白っぽい光線は屋外の風景をまったく見えなくしています。ラスト・ダンスを終えてその光の中に入ってゆくカップルたちの虚ろな表情、これぞ戦後のポーランドがたどった歴史のカリカチュアです。 Z・チブルスキー、若死にしちゃったけれど素晴らしい俳優でまさにポーランドのJ・ディーンです。それにしても、J・ディーンをはじめJ・P・ベルモンドや石原裕次郎などこの当時各国にチブルスキーと同じ様なタイプのスターがいたというのは面白いですね。ベルモンド以外はみんな早死にしちゃいましたけど。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2013-05-04 22:23:37) |
29.《ネタバレ》 ああ、「地下水道」を生き延びた者たちの運命がこんなだなんて。終戦したというのに,今やかつての同胞に銃を向けているなんて。かつてはワルシャワ蜂起の使命感で燃えていたのが、これではただの殺人者。誤って殺した工員の、遺族の悲嘆の声に追われてもなお新しい人生に歩みだすのには勇気が必要で、その勇気にたりなくて結果ゴミが舞う中で絶命するマチェク。ダイヤモンドになれずに、無数の同胞たちと同じに灰となって散った彼。シーツが翻る、白い幕の中を縫うように逃げるシーンは、ダイヤの輝きはなくとも閃光のような一撃でもって強烈に脳に焼きついた。大国に引きずり回され、傷だらけになったポーランドと、かの国で人生を散らした苦い無数の青春。「地下水道」のような、重低音で迫り来るような迫力は無いけれど、ノルヴィトの美しい詩の印象もあって静かで哀しい、この映画はワイダ監督によるたくさんの同胞へのレクイエム。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-02-05 00:25:49) |
28.《ネタバレ》 かなり熱のあるレビューが多い中で恐縮ですが、僕はこの映画を見て「なんだ、これって『飲み会』の映画じゃん!」と思ってしまいした。 このオハナシを戦後のポーランドから現代の日本に置き換えてリメイクしてみるとこうなります。 「今日飲み会なんすよね~」とか言いながら、前半は各々の社員が仕事をしながら人物紹介。後半から飲み会がスタート。クリエイティブがどう、グローバル化がどう、イノベーションがどう、などとスケールのでかい話をショボい居酒屋で繰り広げます。中には「ちょっと抜け出さない?」とかなんとか言って若手社員カップルがどこかにシケこみます。無礼講を真に受け、大失態を犯す奴もいます。で、散々大騒ぎして食い散らかした挙句(あとで掃除する人がいるなどとは想像もしていません)、けだるい朝を迎え、裏手の生ゴミ置き場に千鳥足で倒れこみTHE END。 こう書くと、かなりショボくてセコい話になりますが、現代日本の縮図にも見えてくるわけですね。 と、架空の映画の感想はここまでにしておいて(笑)。 つまりこの映画って、戦後ポーランドの縮図になっているわけです。 映画を見る前は、ポーランドの歴史など予備知識がほとんどないままで鑑賞しましたが、そんな状態でも十分理解できる映画になっていたと僕は思います。むしろ、この映画自体が「これが戦後のポーランドだ」とわざわざ説明してくれているんです。(そりゃ、歴史をちゃんと勉強していたほうがより真正面から理解できるとは思いますが。) とくに終盤、『宴の後』の朝は、まんま『終戦』を思わせる映像でしたしね。 どんな時代だろうが、どんな境遇だろうが、社会に対して、そして自分自身に対して持っている矛盾と葛藤するのは誰にでもあることです。 まだこの映画を観ていない人は、あまりハードルを上げすぎずに見るのがいいんじゃないでしょうか。 僕は掛け値なしに大好きな映画です。 【ゆうろう】さん [映画館(字幕)] 10点(2012-12-01 16:41:24) |
27.前半の排他的で無気力な世界から、後半の絶望的でやるせない世界への転換が見事でした。有名なラストシーンの舞台は、こういうところから生まれたんですね。とっても納得できました。 【shoukan】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-14 22:54:50) |
26.戦後のくすんだ空気、しっかりと組み立てられたストーリー、印象的なラストシーンは好きだったが、 肝心の主人公のキャラが定まっていないような印象を受ける。 軸の見えない状態では、揺れる心をどう解釈していいのか難しいところ。 【チートイ】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-01-08 22:14:50) |
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25.《ネタバレ》 せっかく戦争が終わったのに誰も浮かれていません。待ち行く人は皆うつろです。家族に心を開かない共産党指導者、戦争を終わらせたくない旧レジスタンスや軍人、新政府に出世の糸口を見出す打算的な役人、戦争が終わってもその虚無感を背負い続けなければいけない人々の業。朝までダラダラ続くパーティー、廃墟のさかさまのキリスト、これらは戦後ポーランドの混乱の象徴でしょう。自分の行き方に疑問を抱きつつも、結局は戦争をすてられないマチェック。シーツの波を抜けてゴミ捨て場で死んでいくラストは屈指の名シーンです。 【爆裂ダンゴ虫】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-12-15 11:37:51) |
24. 当時のポーランドの社会情勢と共産主義とは何か理解しておかないと納得ができないと思う。 先日、この監督作品の特集番組が放送されたようだが、恐らくそれを観た人の評価は高くなると思う。 私は観ていないので、細かい演出まで理解できなかった。 暗殺に成功した主人公と殺された人間が抱き合う事で「我々は同じポーランド人なんだ」なんて、何も予備知識なく観賞した人間がどうして理解できるというのだ? 点数が高い人は恐らく高齢者で「良」の評価が沢山ついているのも、これまたこの時代を知る高齢者だと思う。 最初のレビューの方で「理解出来ないからと言って点数を下げるな」なんてコメントを書いてあったが、とんでもない話しである。 映画とは、社会を理解出来ない人に送るメタファーを交えたメッセージなのだ! 理解出来ない隠喩に価値は見出せない。 とは言っても、私にとっては10年後には価値が変わりそうな映画にもなりかねない不思議な作品である。 【クロエ】さん [CS・衛星(字幕)] 4点(2009-12-12 20:30:58) (良:1票) |
23.雰囲気だけで進んでいるようにしか見えませんでした。主人公はもっとどろどろした情念とか業とかを背負っているはずなのに、妙に作品が綺麗に技巧的にまとまってしまっているのです。 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 4点(2009-12-10 00:30:13) |
22.《ネタバレ》 学生時代に一度だけ観ましたがよ~く覚えています。年月を経た今も加点要素が無い作品です。ドイツに替わって居座ったソ連に抵抗する組織の末端でコソコソと人殺しに精を出すマチェック。それは自らの意志での事。国家の為という大義はウスッペラ~イ代物である事が窺えるウエイトレスとの係わり、ソ連兵の手にかかる因果応報な最期までベタな展開。人を殺して灰にした者の灰の中にダイヤモンドなどあるはずがありません。思わせぶりに辟易。全編に亘りナルシスト臭プンプン、キモチワルイ。 |
21.《ネタバレ》 この映画を始めて見た時の衝撃は相当なものでした。 それはこの映画をメッセージ色の強い政治的な映画として見なかったかもしれません。 私にとってこの映画はどきどきはらはらのサスペンスであり、 恋愛映画であり、もしかしたら青春映画かもしれません。 主人公のマチェックやクリスティーナも抜群に魅力的で、 この2人が出演してなければこれほど感情移入はしなかったでしょう。 どのシーンも飽きることがなく私にとっては最高の娯楽作品です。 そして映画の終盤、「マチェックはどうなるんだ??」とハラハラしながら見ていた 私が見たのはあの鮮烈なラストシーンでした。呻き、すすり泣きながらゴミにまみれて死んでいくマチェックを見てしばし呆然でした。映画では本当に沢山の人がどんどん死んで行きますが、これほど感情が揺さぶられるシーンは、ゴッドファーザーのソニーの射殺シーンぐらいでしょうか?私の生涯ベスト3に入る映画です。 【仏向】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2008-11-01 17:55:11) |
20.《ネタバレ》 戦時中、レジスタンスの一員として精一杯生き抜き、テロリストとしての使命を全うし、国の為に亡くなった(暗殺された)一人の若者の切なくも悲しい物語です。時代背景から浮かび上がってくる何とも惨酷な世界、人間として生まれた以上は一度や二度は人を好きになり、恋もする。そんな若者の苦悩、悲しみが見ていても辛い。好きな人が出来ても国の命令に従わなければならないという惨酷さと解放を祝い打ち上げられる花火の美しさを対比するかのような主人公のやりきれない思い、あの洗濯場で暗殺される主人公の場面においても美しい。人が殺される場面をこうも美しく描き、それでいて人間の惨酷さ、やりきれない気持ちをここまで美しく描く作品はなかなかないと思うぐらいどの場面も本当に美しい。けして楽しい映画でもないし、何度も観たい映画でもない。しかし、国を愛する者、それは例えどんな国の人間であろうともけして、変わらない。気持ちは同じであるはず!この映画は単なる政治向きのお堅い映画ではない、青春映画としても見応え十分の作品です。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2008-07-21 22:25:06) |
19.灰とダイヤモンドとの分かれ目。 それは、ほんの些細な運命の別れ道。 そして男女の運命的な出会い・・・ まあ、内容はともかく、退屈な作品だ。 全体的に映像が暗すぎるのも観ていて疲れる。 長く感じた。 ただし、主演の女優さんはとても綺麗だった。 【にじばぶ】さん [ビデオ(字幕)] 4点(2008-03-01 21:48:23) |
18.この作品が何故これほど、ツラく哀しいのか、それは、歴史に使い捨てされる、消耗品としての人間、その最後の静かな、しかし精一杯の生のアガキがここにあるから。戦時下で死んでいった者がいれば、死にそびれた者もいる。一方では彼らをヨソに、新しい世界が始まりつつある。「死にそびれた」主人公は、若くしてすでに年老いているようにも見える。虚しい殺人。死体を見下ろす花火。せめてあのように華やかに散ることができればよいのだが・・・。ひとつの時代の終焉を描き、時に見せる、すべてを透視するような冷徹なカメラの視線が、なんともコワイ。そう、これはコワイ映画だ。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2007-11-22 07:34:51) |
17.《ネタバレ》 ポーランドが経験した戦中戦後の悲惨な歴史を知るうえでも価値があるし、芸術的にも価値があることは理解しつつも、正直中盤に退屈感を覚えた。内容が内容だけに終始重苦しい雰囲気で描かれるのだが、さらに重苦しく描かれている『地下水道』のほうが引きつけて離さないパワーを感じた。皆様のレビューを読みながら映画を思い返すと、いろいろと印象的なシーンが蘇ってきて、しかもそんなシーンが多々あることに気づかされるのですが、それでも夜長繰り広げられるパーティの各エピソードのダラダラ感が、いくら主人公の残酷な葛藤を描くために存在するとしてもどうにも退屈に感じてしまいました。有名なラストシーンは壮絶な最期を壮絶な画で見せており、その容赦の無い悲劇性に愕然とするとともに、一人の青年の死の意味するものの大きさを噛みしめること必至の圧倒的な画に感動しました。 【R&A】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2007-11-15 12:11:02) |
16.《ネタバレ》 これは、男なら一度見ておくべき作品のひとつですね。とにかく、ズビグニエフ・チブルスキー 演ずるマチェックが格好よすぎます。マッチのつけ方、タバコの吸い方、酒の扱い方(クリスティーナに酒を自前のマグカップについでもらうシーンは本当にしびれました)等々ついつい真似したくなりました(特に最後の銃で撃たれた後の演技は圧巻です。たぶん日本の俳優でも影響を受けた人いるんだろな・・・・・)。予備知識ゼロでも十分楽しめますが、事前にネット等で第二次世界大戦時のポーランドの状況を予習しておくと更に深くこの映画に入り込めます!) 【TM】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2006-04-16 22:36:52) |