★33.《ネタバレ》 原作の小説が書かれたのは100年以上前。それを考えれば、この小説が先進的で本質を捉えた優れた著作だったことに疑いは無く、そしてまた、これを映画化する意義が製作当時でも全く失われていなかったのも間違いの無いところだろう。特に、登場するふたりの人物描写に見られる「相違」、モーリスに対してクライヴがより適応力が高いというか、自分の感情・本能と社会的自己との整合をより器用にこなせるという風に描かれる点には、原作者のこの事柄に対する的確で深い理解を伺わせる(クライヴが、LGBTとしていわゆるバイセクシャルに該当するような個人であったのか、それともこれは彼の恋愛当事者としての特性・個性だったのか、という点は定かである訳では無いとも言えるが)。
ただ、話の内容自体は、昨今のより高度なLGBT映画に比べればだいぶ普遍的、かつシンプルなものだと言える(それが良いのかも知れないが)。その意味で言うと(同様のテーマの作品が他にもあるという意味で)これを鑑賞することの社会的意義が製作当時よりはやや薄れたであろう現在では、実際に本作を観た人々の作品自体の評価もある程度変わってくる様にも思われる。
しかし、時代的で文芸的な雰囲気の素晴らしさに加え、この時代のこの事柄を描いたという史料的な意義からも、その部分での本作の価値は決して今後も損なわれることは無いだろう。むしろ、同性愛に対する偏見が少しずつでも薄れつつある現在の方が、本作の恋愛映画としての純粋な良さというものは、よりコレクトリーに感じ取ることが出来ると言えるのかも知れない。 【Yuki2Invy】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-07-25 18:33:21) |
32.《ネタバレ》 男子間の色恋沙汰ですからね、"トーマの心臓”になるか"さぶ”になってしまうか観る前に注意が必要だなあと思ったりもしたのですが、監督がジェームズ・アイヴォリーなのでそこは安心。品があって格調高き香り。難を言えばJ・ウィルビーの落ち着きのない目が私は苦手で、彼の恋心の行方に今ひとつ親身になれない(?)のが我ながら心残り。でもラストは良かったと思うな。とりあえずあの二人はイタリアへ行こう。ご多幸を祈る。 【tottoko】さん [映画館(字幕)] 6点(2013-01-31 01:35:20) |
31.《ネタバレ》 同性愛と階級差を扱ったこの映画だけど…イヤー、切ないわ。 上流階級出身で将来政治家になる予定のクライヴ、保身のためにモーリスを棄てたようにも見える彼だけど…アタシはクライヴの「愛」に偽りはなかったと思うのよね。 だって「モーリスには彼女がいるはず」って奥さんが言ったときのアノ淋しそうな顔…モーリスには「安心したよー」みたいなこと言ってるけど、内心とっても複雑だったんじゃないかしら? モーリスの妹と結婚しようかっていう話も、そうすればせめてモーリスと家族にはなれると彼なりに悩み抜いた結果のような気が…。 結婚って言っても世間体を考えての偽装結婚みたいなもんだし、お互いに別々の家庭を築きながらも、モーリスとは友達以上恋人未満な関係を一生保っていきたいって漠然と望んでたんだと思うのよね。 でも…乙女なモーリスは、身分とか世間体とかどうでもいいからちゃんと愛してほしい!と望んだわけで…難しいわね。 クライヴの「大人」な対応にずっと振り回されてきたモーリスの心にスッと入り込んだのが、下流階級出身ゆえに失うものもほとんどなく直情的な使用人スカダーなわけだけど…アルゼンチン行きの船に乗らずにモーリスとの未来を選んだスカダーは確かに彼を愛してはいるんだろうけど、アタシからすると「モーリス、クライヴに振り向いてもらえないからって…アンタ本当にいいの??」みたいな。 …なんか自暴自棄になってるだけのような気がしないでもないのよね。 ラストで窓の外を眺めるクライヴも、永遠に失われてしまったモーリスとの関係を心底悔いてるみたいにも見えるし…結局2人とも幸せにはなれないような気がするわ。 それもこれも「風紀紊乱罪」なんていうわけのわかんない刑罰のせいよね。 他人に迷惑かけてるわけじゃなし、別にいいじゃないのよ!ってなもんで。 【梅桃】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-12-25 18:03:27) |
30.《ネタバレ》 以前、イギリス製のミステリー・ドラマ(原作もの)を見ていたら、毎回のように同性愛カップルが登場してのけぞったことがありましたが、ことほどさように、かの国では同性愛が有名というか、多いようです(ほとんど伝統文化?)。特に本作にも名前の出てくるオスカー・ワイルドをはじめ、男性文化人にその気が多そうですが……。 それはともかく、すでに指摘されている方もありますが、本作では単に同性愛を扱っているだけではなく、イギリス独特の階級差というものがそれに絡んできているようです。クライヴは上流階級で、おそらくパブリック・スクール出身。そこで男性に目覚めたということはありえます。そこでモーリスに手を伸ばしたものの、上流階級には“noble obligation”(いわゆる「貴族の責務」)という考えがあって、そうそう反社会的(!)な関係を続けるわけにはいかないようです。しかし労働者階級であるモーリスには、そういった考え方はあまり理解できなかったのではないでしょうか。それは感情というよりは、階級によるすれ違いだったと思われます。 モーリスの相手がスカダーになると、これはもう下層階級へと自分から「堕ちて」いったことが明白です。クライヴとの間では越えられなかった階級の壁を克服しましたが、それによってモーリス自身の大切な「何か」も失われてしまったようです。クライヴとはかなりプラトニックな関係だったものが、スカダーでは大きく変化したもの象徴的です。 などともっともらしいことを書いたものの、やはりゲイの映画は苦手です。レズビアンならまだ大丈夫だと思いますが、それは私が男だからでしょう。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-07-30 22:41:25) |
29.画面の絵画的な美しさと、全体に漂う気品と落ち着きだけで、作品としては十分に成立しているが、話の進み方がえらくゆっくりなので、途中でだれる。尺はもっと短くできたと思う。 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-07-09 00:14:03) |
28.《ネタバレ》 「誰か君と同じくらい愛せる女性がいたらすばらしいと思わないかい?」とモーリスから離れたクライヴだが、妻のアンを心から愛せたのだろうか。ラストのクライヴを悲しそうに見つめるアンの表情が気になります。一方、モーリス、みなさんのレビューのように、彼は本当の「愛」を見つけたのだろうか、スカダーとの関係は「愛」や「恋」とは少し違った、自暴自棄にも似た関係のように思えるが、スカダーが乗船しなかったことに対してもらした微笑は安堵からだろうか、しかし、「スカダーと関係を持つことにした」とクライヴに報告に行きます、あてつけもあるのではないかと推測しました。風景が美しいほど切なさが増します。ところで、本作は〇タヤでは廃盤になるそうで、レンタルがままなりませぬ、BSで見られて本当によかったです。 【HRM36】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2012-07-02 11:32:31) (良:1票) |
27.《ネタバレ》 ケンブリッジの青春。 E・M・フォースター×アイヴォリー第2作。 死後出版されたフォースターの小説の同性愛と階級意識に主眼を置き、異性より同性に惹かれるモーリスの二つの関係、それぞれ三つの違う階級に属する青年たちの思いを描く。 ジェームズ・ウィルビーが上流のクライヴとプラトニックな関係を結ぶ中産階級のモーリス、彼を取り込みながら保身のため女性に心変わりするクライヴはヒュー・グラント。 主演ウィルビーの演技がやや不安定なのは気になるが、モーリスの焦燥とも受けとれる。 第三の男スカダーのルパート・グレイヴスが、前作「眺めのいい部屋」とは階級の異なる役で主人公を翻弄するのが妙味であり、同じ俳優を使いまわすアイヴォリー。 身分違いの自分への愛を信じきれず脅してみせるスカダーの心中が哀れで、彼との関係は二重の「壁越え」を意味し、クライヴを失った空虚さをスカダーで埋めようとするモーリスと、妻を娶り今では友人として接するクライヴの思いは二度と結び合うことがないのを予感させ、映画は野心に吹き消される情熱と青春の儚さを憂えているようである。 ヘレナ・ボナム=カーターがエキストラ。 【レイン】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-05-17 07:00:02) (良:1票) |
26.冒頭の海辺のシーンは素敵。イギリスの田園風景やお屋敷・庭も美しく、眺めていて愉しい。ただ、同性愛に偏見はないが、それを美しい物としてみせようと作られている場合、個人の好みが大きく作品評価に影響するのは致し方ないかと。ファンの方には申し訳ないが、個人的に主演2人に異性として魅力を感じない為、最後まで見るのは結構苦痛だった。例えば戦メリの頃のD.ボウイが主演だったら激しく萌え~だった可能性あり(笑) 【lady wolf】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-04-30 16:05:49) (笑:1票) |
25.《ネタバレ》 西欧文化圏において同性愛とは常に「神との関係」で語られるものであり、この作品もちゃんとその枠内で語られています。まっ日本人にはいまいちピンと来ないのはそのせいだしある程度仕方のないことですよね。 なんたって人体は「神の宿る神殿」なんですから、なんと美しい表現なのかと感動しますけれども、そういうことがピンとこなければ「モーリス」を見てもなんだかなあ、というふうになります。 私だってそうなんですけど、まー、そんな自分でも「神」との関係でこの二人が散々悩んでいることは知れます。「彼らにとっての神」とは日本人には理解しがたいものですきっと。 さて、最初に火がついたほうのクライヴは「燃えやすく冷めやす」かったわけで始末が良かったのですが、「後から火をつけられた」ほうのモーリスのほうが、「燃えたら最後」冷めない状態になってしまったわけです。皮肉な感じです。 そしてあまりにもわかりやすい展開でもって「身分も性別も越えて」スカダーと結ばれるのですが、私はいつも男性の同性愛関係について思うんですけど「それは〝愛〟なの?」。 男どうしの同性愛って、「性欲」とどう違うのか?セットというより、イコールじゃないのか?中には例外もあるでしょうが、愛=セックスというよりセックス=愛、というふうに私には見えてしまう。そしてモーリスとスカダーもまさにその例ですよね。 彼らはこれからフランスかイタリアにでも行って、しばらくは仲良く暮らすのでしょうが、二人には「社会に対するカップルとしての居場所も責任」もなく「子供の育雛」を共同で行う目的もなく、「共に神に仕える仲間」でもないわけです。そんな中で関係を保ち続けるほど、普通の人間は賢くも強くもなくて、だから頭のいい誰かが用意して推進したキリスト教の神はかの地で「機能」し続けているわけで、クライヴはそのことに気がついたわけです。私は二人の先行きは見えていると思います。 なので、この時点で物語が終わってしまうことはある意味ズル…と私は言いたい。 あと、難を言えばウィルビーのようにまつ毛まで金髪の色素の薄い俳優って、情感に欠けて見えるところがソンですね。お人形感があるので、こういう情感重視の作品の重要な役柄には向かないかも。 ちなみに、この日のシネフィルイマジカチャンネルの予定は「モーリス」の次が「ブロークバックマウンテン」。…。わかりやすいプログラムだよね。 【パブロン中毒】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-11-14 16:00:31) (良:1票) |
24.《ネタバレ》 耽美的なイギリスのクィア映画。退屈にもなりそうですが、渡る世間は枷ばかりであり、面白くなる要素は満載です。社会的秘密、宗教、身分の差、親への良心、法律、結婚、自分との葛藤など、周りのほとんどが恋の障害となるものばかり。それを乗り超えて、対処していく過程をみせてくれるので、必然的に面白く見れました。ちょっと展開が足早な気も・・・。美しいイングランドの風景も良いですね。生理的嫌悪のある人向けに、どう主人公を魅力的に描くかもポイントなんだろうなあ。自分はすんなり入れましたが。 【Nujabest】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-06-24 17:19:22) (良:1票) |
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23.《ネタバレ》 若かりし学生服のヒュー様を拝見したくて+ゲイネタ。っと言うことで鑑賞しましたが…。うーん。うーん。まだ切ない。ラスト、ヒュー様が窓際に立って思い出のモーリスを回想する絵。切なかった、私は結局ヒューが最後モーリスのことをどう思っているのか解りませんでした。。愛故にモーリスを捨てたのでしょうか、それとも一番安穏な生活を選んだのでしょうか…それが正しいことだから。個人的に、ヒューから告白して開花しちゃったんだから(時間の問題だったけど)ちゃんと責任とりなよっバカっ(笑)っと一言いってやりたいです*ヒューとモーリスがプラトニックだったのに対して後半の狩番人との恋は欲情の方が強いようにしか見えませんっ!欲情という名の愛ですか!?ね、モーリス!!ヒューの代わりである以外の何者でもない感がしてなりません。。にしてもヒューのきれいなヒゲ!!英国紳士に乾杯。 【美穂】さん 6点(2005-02-25 20:50:25) (良:1票) |
22.《ネタバレ》 モーリスがクライブを看病しようとしている姿とか、かわいかった。でもそういうモーリスの気持ちが報われなかった切なさが伝わってきて泣ける。最後はああなってよかった。素直に感動できました。 【Gene】さん 9点(2005-01-06 13:39:19) |
21.話題になりましたね。うろ覚えですが。当時は中学生か。「モーリス」て考えただけで、ポッとなるそんな存在だたような気が。(自分で書いててぶほっ)やっと見れた感想は・・・別に何かに阻まれてたわけじゃありませんが!何も「ポッ」となるよーな代物でなかったかも知れないですね。というか、全編イギリス貴族ばりばりで、正直イギリスってこーゆーもんだと無理矢理解釈しないと分かりづらい。食事やらクリケットの試合やらを大切にしてるとことか、何か誰かれ構わなく勝手に部屋に入って来るし、人が知らない人と話してるだけなのにそばに寄って来るし、プライバシーは無いのかと当時のイギリス。だからこそ禁断の愛が際立つんですが、愛に突入する場面は常に唐突すぎやしませんか。えっいきなりディスカーとびっくりしました。無修正にもびっくりしましたがさほど多くはありません。 |
20.実はこの作品で初めてヒュー・グラントが出演しているのを観ました。特に気持ち悪いということもなく芸術映画って感じで観ましたね。これもまたひとつの美学でしょう・・・とか言ってる自分は「ヘドウィグ~」や「イン&アウト」とか観ても特に”気持ち悪い”と感じないのは常識的価値観から見るとちょっとヤバイんかなとも思いますが、ひとつの価値観(ゲイの世界)を否定したら人生の”面白み”が減るような気がするのでこういう人達を否定はしません。なんて言ってる私はもしかしてこういう潜在的なものが備わっているかもしれませんね。そうただそれを発揮する”きっかけ”が今までに無かっただけかもしれません。まったく何を語っているのだろうか 【tetsu78】さん 7点(2004-06-04 22:45:43) (笑:1票) |
19.愛している事を他人に隠さなければならない苦しみは同性愛だけに限らず切ない。自分にとって何が一番大切か、モーリスとクライブはそれぞれ選んだ道を進んでいった。正しかったのはどちらかという答えはないと感じた。 |
18.ヒュー・グラント、苦手~と思いこんでいたのですが、これに出てたとは! 後で気づいてびっくりしました。役者は、あくまでその映画の世界に合っているかどうかが最も重要、という典型例ではないでしょうか。あまり大きな声では言えないけれど、根本的なところで恋愛至上主義の私にとっては、この世界観は実はきらいじゃないのダ。・・と思ったら、最近のレビュワーの皆さんの採点、辛いんですねえ。こういうダラシない人たちがいたっていいじゃない、って、私は思ってしまうんだけどなあ。どうせ人生なんてあっというま。いわゆる刹那的であろうがなかろうが、刹那ですよ。 【おばちゃん】さん 7点(2004-03-27 00:25:12) |
17.《ネタバレ》 凄く話題になってこっそり見ました(^^)。モーリスがお馬鹿さんでみっともなくて(けっこう徹底してるんで演出ですよね?)傷だらけの負け犬に見えるんですが・・・最後考えちゃいます(ボートハウスで待っててくれなかったら・・・と同時に冷や汗も)。昔は良さがわからなかったです。 【ジマイマ】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2004-01-30 22:15:39) |
16.同性愛物ってきいてたけど、それほどでもないですよね。話はよくわからんかった。モーリスとクライブの二人で最後までいくのかと思ってたら、そうでもなかったし。ヒューは前半はいいけど、後半のヒゲがやだ~。髪型もやだ~。あとこの映画、下半身ボカシもなしにもろだしけどいいのかな…。 【ショウガ焼き】さん 6点(2004-01-28 05:21:25) |
15.麗しい男性達の表情や心理描写は細やかで、特に知人が同性愛の罪で禁固刑に処された以降のヒュ―さまの演技は秀逸でした。 映画の伏線になるような海岸での老教授の性教育のシーン、どこか可笑しくも哀しくって好きです。 ただ美しい男性を際立たせる為なのかと思うほど女性の描き方が雑なのがどうも・・・。女性がひどいから男性に走ったのか、って深読みしたくなるほどです。母親たちは俗っぽいし、クライブの奥さんにしても「素直で鈍感そうだから選んだ」って感じです。同性としてはそこが不満です。 【Rei】さん 6点(2003-12-17 18:40:14) |
14.共感もしないし名画だとも思わないしはっきり言って好きな映画じゃないけど、出ている男の子が綺麗で、アイボリー作品特有の英国節が堪能出来て、こういう映画があるっていうことに意義はあると思う。 【ともとも】さん 6点(2003-10-16 09:17:23) |